ウェブサイトの「カリキュラム」で書いてある通り、軽井沢風越学園は、幼稚園から小学2年生までの「前期」と小学3年生から中学3年生までの「後期」に分かれます。後期の国語はライティング&リーディング・ワークショップを中心に展開するとして、遊びと生活の中でいろいろなことを学ぶ予定の前期の子どもたちの言葉の力をどう伸ばすかは、僕にとっても未知の、興味のあるテーマ。
目次
言葉の力を伸ばすために、幼児期に必要な経験って何?
最初に、異論があることを承知で書くと、僕はやはり「伸びる」より「伸ばす」意識を持ちたい、そう思っています。各種の研究が示す通り、児童期の言葉の力(語彙)はその後の学力の基盤になる。そして、その言葉の力は家庭での会話や蔵書量に大きく依存する。この2点を踏まえると、学校側が「放っておいても言葉の力は自然に伸びる」姿勢でいると、それは結果的に家庭による言語環境の格差を肯定するだけになってしまう。もちろん、言語習得において家庭の影響は絶大なので、学校にできることは限られているのですが、やはり学校(や幼稚園)で言葉の力を「伸ばす」意識を持ちたいと思っています。で、言葉の力を伸ばすために、幼児期に必要な経験って何だろう…。
やはり読み聞かせは大事!
幼児の言語発達については詳しくないので、良い本があったらぜひ教えて欲しいのですが、「読書教育の未来」を読むと、やはり読み聞かせやそこでの親(保育者)とのやり取りの大切さは思い知るところ。幸い、風越学園には良質の絵本に非常に詳しいスタッフもいて、心強い限りです。たっぷり読もう!
言葉の関わりを生む環境デザイン
同時に、子どもたちは日常の遊びや生活の中での言葉のやり取りで言葉の力をつけるのだろうなあ、とも思います。最近、風越学園の認可外保育のスタッフに子どもたちの言葉の力がどんな風に育っているか聞いたところ、「野外を中心とした保育では、色々なものを見立てて遊ばざるを得ないから、子ども同士が言葉で関わらざるを得ない。それが、子どもの言葉の力を伸ばしているのでは」という見方をもらって、面白い話だと思いました。言葉の関わりを促す環境デザイン、という視点、すごく大事。確かに、ずっと一人で遊び込めちゃったり、見立てを必要とせずに説明がいらない「自己完結したおもちゃ」でばかりで遊んでいると、言葉を使う機会は減りそう。
そういえば、以前に見学したあんず幼稚園も、関わりが育つ環境整備に力を入れていました。「言葉の関わりが育つ環境整備」という視点も、特に幼児教育では大事だなあ。生活や遊びの場面で必要性や感情をともなった言葉のやりとりを重ねることで、言葉の力が育っていくのだろうなあ…。
言葉で遊ぶ、言葉を遊ぶ。言葉遊びの本。
そして、僕が強く願っているのは、言葉で遊ぶ、言葉を遊ぶ経験を、子どもたちにたっぷりして欲しい、ということ。言葉って、ただの「伝える道具」じゃない。積み木遊びをするように、言葉を組み合わせたり、ひっくり返したり、いじり廻したりすることで、言葉自体を楽しむ。そんな経験を幼児期からたくさんして欲しい。ナンセンスな言葉の世界も含めて思い切り楽しめちゃう子どもの時期だからこそ、作品の出来不出来をあまり気にせずに、言葉でたくさん遊べるはず。その積み重ねで形成される「言葉を操作する感覚」「現実からジャンプして、言葉の世界を作っちゃう感覚」は、後々、より良いものを目指して自分の表現を磨く姿勢や、見慣れない表現に出会った時にそれを楽しめる感度とも関わってくる気がするのです。幼児〜児童期の、大切な言葉の経験なんじゃないかなあ。
そう思って言葉遊びや言葉ゲームの本を何冊か集めています。今のところのベストは次の本。前回のエントリに続き、太郎次郎社エディタスの本ですが、しりとりだけでも何種類もあって面白かったです。1冊だけ買うならかなりおすすめ。
小学校出身の同僚は詩人の工藤直子さん編集の次の本を使っていたとのこと。個人的には上の本の方が充実してて、上だけでいいかな?と、買うまでには至りませんでしたが…。
大人も楽しめる言葉遊びゲーム
知育ゲームにも、言葉遊び系のものがあるんですね。自分が同僚と一緒に遊んだことがあるのは、次の3つ。カタカナ語を別の言葉で説明しないといけない「カタカナーシ」。「いつ・どこで・誰が・何を・どうした」という組み合わせ遊びなのに、助詞を指定されることで一気に色々なバリエーションが生まれる「コトバミクス」。接続詞のカードでお話作りが楽しめる「カタルタ」。
今のところこの3つですが、どれもなかなか面白くて、小学生の言葉の力を広げるのにも役立ちそう。これも集めて試してみたいところです。
こういう言葉遊びをしたり、言葉遊びそのもののような詩を読んだり書いたりすることで、言葉を操作する感度を高めていけないか…そんなことを考えています。参考になる本やゲームをご紹介いただける方、ぜひコメントをください。お願いします!