最近、俳句の本を少しずつ読んだり、作句したりしている。まだ全然わからないことも多いけど、「俳句ってこういうものか」をちょっとずつ体の中にためているところ。俳句以外にも学ぶところの多かった藤田湘子『新版20週俳句入門』の感想をメモしておく。
薦めていただいた俳句入門の3冊!
僕は詩は好き(ただし『現代詩手帖』に載ってるようなのは苦手)だし、短歌とはすぐれた入門書と短歌投稿アプリ「うたよみん」のおかげでだいぶ仲良くなれたと思うのだけど、俳句は苦手意識が強い。詩や短歌と違って、そもそも有名作にも「好きな作品」を見つけにくくて、「こう書きたい」が生まれにくいというか….。「面白がるにも知識が必要そう」なハードルの高さを感じていた。
転機は昨秋。全国大学国語教育学会の公開講座「詩の書き方は教えられるか」の参加者に俳句指導をされている先生が参加していらして、入門書として次の3冊を勧めてくださったのだ。
それ以降、ちょっとずつ俳句の本を気にして読んでいる。どの本も、それぞれの良さをこちらの力不足で十分には受け止められてはいないにせよ、目を開かれるところがあって面白い。
指導者が「制限」を課す『新版20週俳句入門』
なかでも、藤田湘子『新版20週俳句入門』は、先達が初心者を導くデザインに信念が伺えて、素晴らしいなと思った。とにかく色々と「制限」を課すのである。
- 俳句を始める前に揃えるべきものを指定する。
- 一物仕立ての句は作らない。全て配合(二物衝撃)の句にする。
- 字余り字足らずの句を作るのはダメ。必ず5・7・5音にする。
- 上五は「季語+や」、中七と下五はそれとは関係のない内容にし、下五は名詞にする(これを「型・その1」と呼ぶ)。
- 一日一つ、月に30の俳句を「型・その1」を使って作る。
- 毎週4つの暗唱句を指定して、それを暗唱しない限り次に進ませない。
もちろん現実には「季語+や」では始まらない俳句はたくさんあるし、一物仕立て(一つのテーマで書かれた俳句)もあれば、字余りの句も当然ある。でも、それはダメと禁ずる。最初は厳しく制限しながら、先に進んで少しずつその制限を解いていく。
こうした制限は、観察眼が乏しかったりつい説明調になったりする僕たち俳句初心者が、季語や切れ字という俳句の形式の力を最大限に借りながら、少しでも前に進んでいくための補助輪なのだろう。何が適切な補助輪かは、多くの初心者を導いた経験のある熟達者でないとわからないことだ。先達の助言は聞くに限る。
翻って、自分は生徒の作文指導や読書指導において、どのような「制限」を、どれほどの見通しを持ってかけているだろう。基本的には「書き手・読み手の自由」を尊重するライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップの中で、きちんと充実感を持って前に進んでいけるための適切な「制限」とは…。そんなことも考える一冊だった。
他の俳句の本も、ちょっとずつ読んでます…。
なお、それ以外の俳句の本についても。千野帽子『俳句いきなり入門』は、「俳句は自己表現ではない」という姿勢が明快な面白い本だ。短歌や詩はつい「ストーリー」を作ってしまうが、俳句はそうではない。自分の外にある言葉を組み合わせて、そこから読み手に委ねていくものなのだろう。表現したいことが先にある俳句はつまらないという著者の姿勢は刺激的だ。ただ、そこに自分が共感できるかとなると「うーん」となることもあるのだけど…。
夏井いつきさんの入門書もやはり面白い。夏井いつき『超カンタン!俳句塾』は、藤田湘子『新版20週俳句入門』とは逆にできるだけ入口のハードルを下げようとしているし、でも『超辛口先生の赤ペン作句教室』を読むと、助詞一つの使い方で俳句の良し悪しが変わってしまうことを鮮やかに見せてくれる。この方は典型的な「入り口は低く、そこから引き上げる」タイプの指導者なのだろう。
俳句の授業を構想するときには、やっぱり生徒は若い世代の作品が好きなんじゃないかと思って、俳句甲子園の作品は気にしている。超強豪校・開成高校の顧問の佐藤郁良『俳句を楽しむ』にも、生徒さんの俳句がいっぱいあった。
俳句甲子園出身の俳人・神野紗希『俳句部、始めました』は、岩波ジュニスタのスタートラインアップに入ったもの。間違いなくこれから読みます。
他では、神奈川大学『17音の青春』シリーズを2018年から20年まで読んだ。神奈川大学全国高校生俳句大賞の入選作や選考会をまとめたものなのだけど、若い高校生の俳句がいっぱい! ここからいくつか生徒が好きそうな俳句をリストアップしようかな…。あと、選評の意見がかなり割れているのが面白い。俳句の良し悪しの評価って本当に人それぞれなんだなあ。
これから読んでみたい本の筆頭は、水原秋桜子『近代の秀句』。『新版20週俳句入門』にこの人の鑑賞がいくつか引用されてて、たった十七音から紡ぎ出されるその鑑賞の豊かさにファンになってしまった。季語に熟知していると、これだけの言葉からこれだけの風景が描けるのね…早く読みたい一冊。
あと、いまの自分に必要なのは、「この人の俳句が好き!」という俳句なんだろうと思う。現役の俳人でいうと十亀わらさんの句集を読んでみたい。夏井いつきさんのお弟子さんで、元々は詩から出発した方。実は僕は『詩学』投稿時代の十亀わらさんの詩がとても好きだったので、きっとこの人の俳句は好きになれるんじゃないかと思う。調べても、でも句集は出てないのかな、どうなのだろう…?
あとは実作あるのみ。国語の勉強会仲間に教えてもらった「俳句てふてふ」というアプリで、ちょっとずつ投句したり(でも、一日一つは難しいな….)。そんな感じで、ちょっとずつ俳句と仲良くなっていこうと思います。