下記の本にひきつづき「中学生が読んでいる本を読んでみよう」と思って司書さんに紹介されて手に取った本。
2013年の本屋大賞にノミネートされ、映画化もされたベストセラー。脳腫瘍で余命が残り少ないことを知らされたオタク気質の「僕」のところに、自分にそっくりな姿をした悪魔が登場して、「世界から何かを消すたびに1日寿命を延ばすことができる…」と、文字通り悪魔の契約を結ぶストーリー。「僕」は初日に電話、次に映画、時計…と消していくことになる。
非現実的な設定は個人的には好き。でも、それが消えた時の世界の様子をあまり描きこめていなくて、なんだかもったいないなあと思った小説だった。
電話も時計(時間)も僕たちが頼り切っているものだから、それらが消えた世界って、とても書き込めるような素材だと思う。でも、たぶん作者はそうしたことにはあまり興味がなくて、「ペットの猫「キャベツ」を消すかどうか」という最後の決断に向けての、ただの一つの素材として扱っているように思える。
これは書き手と僕の興味の差だから、単に相性があまり良くなかったのかもしれない。とはいえ、ちょっとはぐらかされたような気持ちだった。
軽いノリの口調も、余韻のない描写や会話も、ところどころでいきなり始まる抽象論も、好きか嫌いかで言うと、正直なところあまり…。子供が生まれてからめっきり家族愛モノには弱くなったし、そしてこの本は直球の家族愛モノなのだけど、それでも総評としてこの本が好きな小説だとは思わないかなあ…。でもまあ、電車の行き帰りだけで読み終わる点は良いかも。
中学生の生徒に聞いたら「読みました」「面白かったです」という生徒もいて、これが好きな生徒にとっては、学校の国語の授業で扱っている小説って、自分が普段読む小説と全然違う「学校用小説」ジャンル扱いなのかなあ…とも思った。どうなんだろう。ちょっと気になる。