[読書]書くことについての金言の宝庫!スティーヴン・キング「書くことについて」

つかの間のお盆休み、いかがお過ごしでしょうか。僕は、8/18(日)に参加する日本国語教育学会の全国大会の発表資料を作ったり、小学校免許のレポートを書いたりして過ごしています(そういえば去年のこの大会、甲斐利恵子先生をはじめ、嬉しい出会いが色々とあったのでした…下記リンク参照。今年も何かいいことあるかな。)。

日本国語教育学会の全国大会に参加してきました

2018.08.06
今日のエントリは、その合間を縫って読み返していたスティーヴン・キングの「書くことについて」。この本、やっぱりいい。作文の授業にも役立つ。

キングの自伝的創作指南

一言で言うと、この本は「キングの自伝的創作指南」。アメリカのホラー作家として名声を確立したキングが、自分の駆け出しの頃を振り返りつつ、そこで創作について学んだことについて書いている。特に自伝要素の色濃い前半部分は楽しく読める。僕はキングの小説をそんなに読んでいないけど、キング好きなら尚更楽しく読めるだろう。

とりわけ、キングがまだ駆け出しの頃に、どのような思いで書き、先達からどのような指南をされてきたか、どのようにして「売れない新人」時代を乗り越えたかを述べた前半部分は面白い。ジョン・グールドがキングに書き方を指南した言葉、

ドアを閉めて書け。ドアを開けて書きなおせ。

は「書く時には孤独になって書かねばならない。他人に見せて助言を求めるのはそのあと」という趣旨の言葉で、僕も授業でこの言葉を引用させてもらったことがある。

書くことについての金言の数々

今回改めて読んでみて、この本にいかに「書くことについての金言」が多いか、改めて感じ入った。作家ではない僕も、ライティング・ワークショップをやっていると思い当たることが多い。今回は自分のメモがわりにいくつか書いておく。まずは文章を書くことの基本原則から。

作家になりたいのなら、絶対にしなければならないことがふたつある。たくさん読み、たくさん書くことだ。私の知る限り、そのかわりになるものはないし、近道もない。

ライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップはまさにこの方針ですね。

文章を書くにはそれを支える「道具箱」(語彙や文法など)が必要だという話では、次のようにユーモアを交えて、語彙と、その使い方の大切さを強調する。

よく使うものはいちばん上の段に収納する。この場合は文章の糧、すなわち語彙である。それに関しては、手持ちのものだけでいい。量が少なくても、罪悪感や劣等感をいだく必要はない。娼婦が恥ずかしがり屋の船乗りに向かってこう言うのと同じだ。「問題は、大きさじゃなくて、どう使うかよ」

文章を書く時に「不安」が及ぼす影響について。学校の授業でもこの「不安」が与える影響が大きいことを、僕も日々実感してきた。

下手な文章の根っこには、たいてい不安がある。

いいものを書くためには、不安と気どりを捨てなければならない。気どりというのは、他人の目に自分の文章がどう映っているかを気にすることから始まる、それ自体が臆病者のふるまいである。

文章を書くときの一番の難関・アイデアについて。「見つけだす」ものではなく、目の前に現れた時に「気づく」もの。その用意をしておくことの大切さ。

いいアイデアは、文字どおりどこからともなく湧いてくる。あるいは、虚空から落ちてくる。太陽の下で、ふたつの無関係なアイデアが合体して、まったく新しいものが生まれることもある。われわれがしなければならないのは、そういったものを見つけだすことではない。そういったものがふと目の前に現れたときに、それに気づくことである。

これ、そうなんだよなー。僕はウェビングみたいなアイデアを「見つけ出す」やり方もやるけど、それは単発的で一過性のものに過ぎず、あまり本質的ではない。結局は作家ノートを用意して、日々読んだものや気づいたことについて日頃から書き溜めておくしかない。それって、「アイデアに気づく準備」なのだと思う。

描写についても、キングは次のように語る。

描写や、会話や、人物造形のスキルとは、つまるところ、目を見開き、耳を澄まし、しかるのちに見たもの聞いたものを正確に(手垢のついた余計な副詞は使わずに)書き移すことにすぎない。

過剰な表現を避けること。ただ、よく見ること。風越学園のスタッフには文章が上手な人が多くて驚いていたのだけど、この「よく見る」ができる人が多いからだと思う。

テーマに基づいて小説を書くことについては、キングは否定的だ。

なんらかの問題意識やテーマにもとづいて書くというのは、駄作のレシピである。優れた小説はかならずストーリーに始まってテーマに終わる。テーマに始まってストーリーに行き着くことはまずない。

実際にはテーマ小説も結構あるから、これはキング流なのだと思う。でも、テーマが前面に出てくる小説は、僕も鼻について読めないかな。

そして最後に、書き手の背中を押すことば。

いつだって始めるまえがいちばん怖い。始めたら、それ以上は悪くならない。

こうやって書き抜くだけでも、思い当たることが多々ある。キングの言葉を僕がそっくりそのまま理解することはないだろうけど、自分で語り直すことで、身体にしみていくものもあるはずだ。今後もこういう言葉を折に触れて読み直してみようと思う。

ちなみに、皆さんはキングの小説どれかお読みになっていますか?僕はあまり読んだことないんですが、「恐怖の四季」シリーズはどれも好き。「刑務所のリタ・ヘイワース」(映画では「ショー・シャンクの空に」)、「スタンド・バイ・ミー」など、映画とは少しテイストの違う中編小説シリーズ。

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