[読書]俵万智『短歌の作り方、教えてください』

一青窈がつくった短歌に俵万智が添削をして推敲していくやりとりを記録した本。往復メールのかたちをとっているが、往復メールでもこんな添削風に作品の質をあげていけるんだと思える、とても面白い本だった。

短歌の作り方、教えてください (角川ソフィア文庫)
俵 万智
KADOKAWA/角川学芸出版
2014-01-25


 
何よりも、俵万智の一言一言がとても素敵。

一青窈の作った短歌に対して、否定しない。改作を薦めるにしても、まず一青窈の意図を確認してから「その意図にはこんな価値があるけれど、こうしてみるのも別の味わいが」とか「その意図はとても面白いけど、かえってこんなことが」と進めて行く。そして、歌の良いところを見つけるのがとても上手。また、改作を薦める時には代案を提示していて具体的だ。どのコメントも前向きさで満ちている。そして、その代案の説明に沿いながら、作歌の一般的な技術も伝えていく。こんな添削のコメントが書けたらいいなと思う。このコメント、力を抜いてさらっと書かれているようだけど、実はとても配慮して書かれているのじゃないかな。後書きにたどりついたら、こんなことが書かれていた。

推敲のアドバイスをするときに心がけたのは、決して答えを私が出してしまわないことです。心のなかには、もちろん腹案があるのですが、そこへ誘導してしまっては、私の歌になってしまいます。眼の前にある一青さんの作品の、どのへんをどういう方向で手直しするともっとよくなると思うか、それだけを伝えることに徹しました。結果、私の腹案など悠々と越える言葉が返ってきて、おおっと嬉しい驚きを覚えることになるのでした。


一青窈の作品も面白い。自分の生活の中で気づいたことを、ユーモアを交えながら、時に大胆にリズムをくずしたりもしながら歌にしていく。「え、こんなこと歌にするの?」「こんな風に奔放に書いていいの?」と思ってしまう作品がいくつもあって、それが俵万智の助言を得ながらさらに歌として整えられていく感じ。

 ▼

 このやり取りはいいなあ。こんなやり取りで添削でできたらいいなあ。僕はちょうど、中1の作文の授業で生徒の作品をこれから読んでコメントをつけるところ。俵万智とはいかなくても、書き手の背中を押せるようなコメントを書いていこう。ちょうどいいタイミングで読めた一冊、感謝したい。

この記事のシェアはこちらからどうぞ!