娘(9歳)からのおすすめで読んだ、天才少女マチルダを主人公にした児童文学。5歳でもうどんな小説も読んでしまい、どんな計算もすばやくできてしまう天才少女マチルダ。彼女が知恵を駆使し、途中から念力まで使えるようになって、嫌な大人たちをやっつける痛快な作品だ。
読んでいて心地よいのは、マチルダが最初から最後まで徹底的に両親に冷淡なこと。詐欺商法で儲ける父と「女は勉強などいらない」という母。典型的なダメ両親として描かれる父母なのだが、そうはいってもマチルダは心の底では両親が大好き….なんていうそぶりはまったく見せず、清々しいまでに両親を必要としていない、その徹底ぶりが本当に心地よい。そう、ダメな両親はダメな両親。それでも子どもが親を愛さないといけない理由なんて、これっぽっちもない。そんなふうに、マチルダは物語の最初から自立していて、自分がつきあうべき相手を選べる女の子なのだ。だから先生であるミス・ハニーとも、大人の対等な友人同士としてつきあっている。そのドライな感覚が、物語全体をからっと明るいものにしている。
▼
そんなマチルダが自立のために唯一必要としたのは本の世界だった、というのも興味深い。彼女の類まれな才能を知った図書館司書のミセス・フェルプスが、驚きと喜びを胸のうちに隠しながらマチルダの世界を少しずつ広げていくシーンは、序盤の名場面だろう。小説全般を通じてのマチルダの痛快な活躍ぶりもさることながら、個人的にはこの序盤が一番印象的だった。
▼
というわけでなかなか面白かった作品。ミュージカル「マチルダ」も子どもも楽しめる有名な作品だそうで、せっかくなのでこちらもぜひ見てみたい。