「日本三大急流の中で最も流れが急なのはどこか?」「ウルトラマンは本当に3分以内に敵を倒しているのか?」などなど、身近な謎についてまじめに調べた楽しい本。かつて週刊文春で連載されていたコラム「ホリイのずんずん調査」から100の謎をセレクトした集大成だそうだ。
目次
深いものからどうでもいい時事ネタまで…身近な謎を追求
もともとが1995年から2011年まで連載されていた週刊誌の名物コラムだけあって、この本で扱う謎(=問い)は軽いノリのものが多い。最初に紹介した2つの問いの他にも、
- いきなり銀座の高級寿司店に行って寿司を食べるといくらかかるか
- 日本人に最もよく覚えられている年号は何か
- 郵便ポストの回収は、表示してある時間通りに来るのか
- 日本人はいつ頃からVサインをするようになったのか
- 蕎麦屋の出前は注文してからどれくらいで到着するか
などなど、くだらなかったり、言われてみると「ああそうそう」と思うような問いもたくさんあって面白い。時事ネタのようなものもあって、懐かしく読む方も多いと思う。
調べ方はかなり徹底的!
このコラム集、長期の毎週連載ということもあって、もちろん中身には濃淡もある。ただ、面白いものは徹底的に調べ尽くしている感じがあって素晴らしい。例えば、「クリスマスはいつから恋人同士のイベントになったのか」という問いについては、1970年代から90年代までの雑誌を大宅壮一文庫で読み漁り、男性誌と女性誌でクリスマスの意味づけがどのように違っていたかを明らかにしてくれる。「桂米朝の落語で最も笑いが多いのはどれか」の回では、87の落語のネタの全てに対して、笑いの回数やその程度、何秒あたりに1回の笑いがあるのかなどを調査してリスト化している。
圧巻の「吉野家のつゆの量の調査」
圧巻なのは、「最近の吉野家はつゆだくに影響されて並盛でもつゆの量が多い!」という不満に端を発した「並盛のつゆの量はどれくらいなのか」という調査。なんと東京23区にある154店の吉野家を一日一軒のペースで全て回ったのである。入店後、並盛を注文して縦にスパッと割るように半分食べる。そして、その断面図の写真をとって、つゆの多さレベルを7段階に分けて、その結果を吉野家本社に持ち込み…と大変な作業だ。並々ならぬ情熱とこだわりで、この回は文章そのものも抜群に面白く、はっきり言うとこの吉野家の回を読むためだけにお金を払って読む価値がある。
いやあ、面白いです
いやあ、面白かったです。著者の堀井憲一郎さんって、僕にとっては落語のエッセイを書く方という印象だったんだけど(下記リンク)、これだけ幅広く調査をして面白い文章にまとめられるのはすごいと思う。読んでて楽しい。
読みながら思い出したのは、「探偵!ナイトスクープ」から生まれた下記の本。関東人はバカと言い、関西人はアホというその境界はどこにあるのか?という質問からスタートして、言語の分布図を作るところまで至った有名な企画だ。
この『ホリイのずんずん調査』も、アホ・バカ分布考ほど大掛かりではないけど、ちょっと気になったことを真面目に追究する面白さを教えてくれる。社会的な意味とか全く考えずに、好奇心のままに突き進むこういう調査、楽しいなあ。個人的には、学校での調べ学習も、こういうテイストのがもっとあれば良いと思うんだけど。おすすめです!