下記エントリで書いたのは質的研究におけるインタビューについての課題だった。今日はその話の続きで、インタビューのコツについて書いてみる。
インタビューはInter Views
書く過程で読んだ本や論文の中で、特に気に入ったのがこの本。タイトルは「Inter Views」。インタビューとは二人の人間のインタラクションが生むものなのだ、という本質を表現した良いタイトルだと思う。著者のKvaleは、他にもインタビューに関する優れた論文や本を書いている人だ。
インタビューは、話し手が持つ「答え」を聞き手が「探しあてる」ものではない。インタビュアーが持っている世界観、発話、インタビュアーとインタビュイーの人間関係。そうしたものが互いに影響しあって作られるのが、インタビュー結果である。インタビューは二人の創作物。
インタビューにおける「権力争い」
二人が関わる以上、インタビューの現場には「権力」のせめぎ合いがある。問いや全体の枠組みを設定する権力を持っているのがインタビュアー。インタビュアーが聞きたい内容(知識)を持っているのがインタビュイー。両者は協力しつつも、同時にそれらを資源に「権力争い」 をする関係でもある。
この視点は面白かった。お互いがどんな風に自分の持っている権力を行使して、どんなパワー・ゲームが展開されているかという論文はいくつもあって、ちょっとしたセリフや仕草がその後の展開に影響する、ということがスクリプト(文字起こし)とともに検証されている。
インタビューのコツは「自分を知ること」
インタビュアーにとって、研究の最大の手段はインタビュアーである「自分自身」だ。だから、インタビューを用いた研究で一番大事なのは「自分を知ること」。 自分の世界観、自分の予備知識、相手と自分の関係、自分の話し方、自分の癖、自分の解釈。その全てがインタビュー結果のデータにつながる。
僕も、自分のインタビューを文字起こしして、自分がインタビュー中にどんな風に振舞っているのか、少しだけわかってきた。でもほんの少しだけ。しかも、わかることとできることは全くの別もの。
インタビューのコツは、自分を知ること。これは質的研究全体のコツでもある。インタビュー中に自分を観察して、その観察結果をその都度生かしていくこと。インタビューって、難しいじゃないの。 でも楽しそうじゃないの。先生からの評価はどうあれ、そう思えただけでも収穫かな。