可能なの? 中学校以上のプロジェクト中心カリキュラム

最近、中等教育(中学・高校)で教科横断型・生徒主導のプロジェクト学習中心のカリキュラムを本格導入するのって可能なのかという興味を抱いている。

もちろん、総合的学習を使って素晴らしいプロジェクト学習のプログラムを組んでいる学校がいくつもあることは知っている。関西学院高等部や玉川学園中等部などは、そこでの成果をすでに出版物にもなさっている。

ただ、これらの学校ではそれぞれの教科の授業が時間割にしっかりあって、それとは別に探究型・教科横断型の授業をするコマが時間割に用意されている、というかたちだ。このコマ以外は別に探究型でなくてもいい(実態は知らないので、理屈の上ではという話を書いてます)。そうではなくて、「授業まるごと教科横断型のプロジェクト学習」っていうのは、ありえないのかな?

小学校には事例あり?

小学校だと「教科別の時間割」がない学校もあるようだ。この前見学したインター校(下記エントリ参照)では、小学校からバカロレアのPYPを取り入れていて、教科別の時間割というものがなかった。授業は探究のテーマが核になっており、それに付随して色々なことを学んでいく形式のようだ(とはいえ、計算や書き取りのようなドリル的学習の時間ももちろんあるらしいけれども)。

見学してきた! インター校のリテラシー・ワークショップ

2017.04.26

また、いつか見学に行きたいと思っている「きのくに子どもの村学園」も、小学校では「プロジェクト」のコマ数がとても多い。基礎学習が週7時間に対して、プロジェクトは週14時間もある。

「きのくに子どもの村学園」小学校時間割

http://www.kinokuni.ac.jp/nc/html/htdocs/?page_id=71

中学校以上では難しい?

ただ、これが中学校以上になると、日本ではやはり学習指導要領の縛りもあるし、教科ごとの専門性も高まっていくので、プロジェクト中心のカリキュラムを組むのは難しいのだろうか? バカロレアも中学校のMYP、高校のDPと学齢があがるにつれて、どんどん「教科」色が強まっていくようだ。僕が本で読んだ限り、DPは探究型の学習ではあるけれども、教科の専門をかなり深めていく感じ。教科横断という雰囲気はなかった。

[読書] 国語教師は読んで損なし。田口雅子『国際バカロレア 世界トップ教育への切符』

2017.02.07

[読書] 「初めての国際バカロレア」に最適の本。坪谷ニュウエル郁子「世界で生きるチカラ」

2017.03.19

「きのくに子どもの村学園」では、中学校でも、プロジェクトを週のうち合計1日半取り入れているようだ。国数英社理あたりは「教科」として扱われているけど、これはかなり頑張っているんじゃないかなあ。ただ、こうすることで教科学習の深まりや定着度はどの程度保ててるんだろう。そこが気になる。うーん、見学に行ってみたい。

「きのくに子どもの村学園」中学校時間割

http://www.kinokuni.ac.jp/nc/html/htdocs/?page_id=48

フィンランドでは科目がなくなる!?

海外ではどうなんだろう? 以前、ネットでこのような記事を読み、「フィンランドでは科目がなくなるのか!」と驚いたことがある。

【先端教育】フィンランドで科目ごとの個別教育が撤廃される?【全訳】

http://dutoit6.com/1031

ただ、これは誤解、もしくは検討段階ではそうだったこともあるという程度のことで、実際に科目がなくなるわけではないようだ。フィンランド大使館の下記の説明にも、新カリキュラムについてのQ&Aがあって、真っ先に「科目が消えるわけではありません」と書いてある。このQ&A、これだけでも読んでて面白い。大使館がこんな情報を提供するなんて、よほど衝撃が大きかったんですかね。しかしフィンランドの教育は攻めてるなあ…。

フィンランドの学校がこう変わる!Q&A10選

http://www.finland.or.jp/public/default.aspx?contentid=350772

他では、先日知った次の学校の情報が気になっている。

サンフランシスコで最も新しい21世紀型中学校とは?

http://www.futureedu.tokyo/education-news-blog/2017/2/3/21/millenium-school-san-francisco

こちらの学校でも、きっと科目を廃止はしていないんだろうけど、、「6週間のプロジェクト5つを年間通して実施」とあるから、相当プロジェクト学習に力を入れている感じだ。こんなふうに書いてある。

教科横断型のプロジェクトで少人数のグループワークを通し学びます。教科横断型にすることで必要な知識を選んで使って問題解決することで、より教科知識が習得しやすいと考えるためです

ここでは教科横断のメリットが強調されてるけど、逆に学習内容の系統性や網羅性は保てるのとか、そもそも教科横断型にして教師はどんなふうに対応してるの?とか、知りたいことがいっぱいあるなあ。中学になると教科ごとの専門性も深まるから、小学校みたいに「一人の先生が色々な教科を教える」ってできない(日本ではそもそも免許も教科別)問題もある。

不可能なのかな?プロジェクト中心の時間割

ぼくの勤務校もよくあるパターンだ。本格的な総合的な学習のプログラムはあるけれど、ふだんの授業時間割は教科ごと。教師の側も専門性重視で、国語の授業も、現代文・古文・漢文で担当をきっちり分けているほどだ。

やっぱり、「教科」をきっちりわけた時間割編成にすることで、教師の専門性も確保し、教科内容の網羅性や系統性を確保するのが、妥当なやり方なのだろうか。でも、そうやってできた時間割は、生徒の興味関心や学び方よりも、教える側の都合を優先したものなんだよなあ。

生徒の興味を核にして、実際にプロジェクトを遂行する過程で教科の学習に降りていく方法のほうが、きっと面白くて身につくはずだ。でも、それは非現実的なのかなあ。教えるほうだって、一人で全部の教科をカバーできないしなあ。

特に結論は出ず、可能性を模索しながらも、同じところをぐるぐるとまわってしまう。そして、良くも悪くも「教科」という枠が自分を強く縛っているんだなと感じざるを得ないのだ。

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6 件のコメント

  • 毎月、公立小学校の先生と総合の勉強会をやっているのですが、同じ先生が授業含めてすべてみているため、総合と各教科のコンテンツのつながりを意識したデザインはもう10年以上やっているそうです。現在、コンピテンシーベースでそのつながりをデザインする勉強会をやっているのですが、学校種がかわるとまったく連携していない、とのことでもったいないなぁとおもっています。中学の先生もお一人参加されていますが、中学ではコンテンツの連携も難しいといわれていました。

    • そうそう、小学校の先生だとそうなんですよね。これを中学校でもやるのは、もう全く非現実的なんでしょうかねえ…。

      • 教科の壁はまだまだ高いのでしょうね。ただ、各教科の中でコンピテンシーを育成しそれを統合するのが探求という考え方になってますので、この壁も低くならざるをえないのではと思っています。数理探求など教科融合の探求も提唱されていますが、こっちは教科書のつくり次第でしょうか。

        • こちらのほうも勉強していきたいと思っていますので、今後とも色々と教えて下さいませ!

  • はじめてコメントさせていただきます。初めまして。高校で教えておりますKeiと申します。
    勉強不足なもので、「プロジェクト学習」についてわからないので教えていただければ幸いです。
    「教科横断型」であることは、「プロジェクト学習」の条件と決まっていますか?
    貴エントリからロカルノさんのツイートを拝見し、「ミネソタニューカントリースクール型のプロジェクト学習」が「教科横断型」であることはわかりました。
    しかし、例えば私が国語の授業時間内に「源氏物語壁新聞プロジェクト」と称して学習を進めるとします。
    これは「教科横断型」ではないから「プロジェクト学習」とは言えないということになりますか?
    用語の使い分けもよくわかっておらず、失礼な質問でしたら申し訳ありません。
    ご教唆いただければ幸いです。

    • 「プロジェクト学習」の定義は、いろんな人がいろんなことを言っている気がするので、教育系の用語事典などをご参照ください。僕の側に答えるだけの識見がなくてすみません…。

      ここでは、生徒が自分で探究の問いをたてて調べたり作ったりする活動を通じた学習を指しているので教科の枠を越えることがありうるという前提で、プロジェクト学習という用語を用いています。わりと一般的な使い方かなとは思っていたのですが、どうでしょう?