PISA2015の結果が出てから10日ほど経ったけれど、信州大学・比較教育学研究室の助教・林寛平先生が「PISA2015の結果と考察」というビデオとスライドを公開している。12月15日のシンポジウムで発表したもののようで、これがとても勉強になったので強力にプッシュしたい。
目次
信州大学 比較教育学研究室
http://shinshuedu.blogspot.jp/2016/12/pisa2015.html
PISAに関連するあれこれの丁寧な解説
約30分のビデオだが、特に教育関係の方にとっては見る価値がある。PISA2015の結果というと、「科学や数学の順位上昇(世界トップ級)」と「読解力低下」ばかり取り上げられるけど、この解説ビデオ、「そもそもPISAってなに?」というところから、最後の「PISAへの批判や問題点」、「2030年に向けて必要とされる能力の再定義」まで、とても面白い。この程度の背景は教師として知っておきたいと思う。
話題の「読解力低下」をめぐっては
また、一部メディアで話題になった「読解力の成績低下」についても
- そもそも読解力の成績は変動幅が大きい。
- 前回2013年からの低下は事実
- 2000年、2009年と同程度の成績
- 前回2013年からの下落と見るか、以前と同程度に戻ったと見るかは評価が分かれる
- PISAの結果だけでは何も説明できない
- 今後、読解力の国際調査への参加、国内の調査の結果の総合的分析なども含めた戦略が大切
という趣旨のコメントをされている。
PISA2015の関連資料まとめ
以下では、PISA2015の基礎資料をご紹介。意外と実際の問題を見てない人も多いと思うけど、けっこう面白いですよ。公開されてるのは科学のテストだけど、日本の一般的な理科のテストとはイメージ違うかも(まあ、最近の理科のテストを知りませんが…)。
OECD PISA
http://www.oecd.org/pisa/
意外と見られていない?本家本元のウェブサイト。
OECD PISA Japanese (PDF)
http://www.oecd.org/pisa/PISA-2015-Japan-JPN.pdf
上記ウェブサイトより、今回の日本の結果をまとめたもの。日本語です。
OECD PISA Test
http://www.oecd.org/pisa/PISA2015Questions/platform/index.html?user=&domain=SCI&unit=S656-BirdMigration&lang=jap-JPN
上記ウェブサイトより、科学のテストの日本語訳。体験できます!
OECD生徒の学習到達度調査(PISA) (国立教育政策研究所)
http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/
2000年以降の結果の要約や分析などの総まとめ。テストの例や解説はこちらでも。
新聞メディアでの取り扱いは「?」だけど…
なお、PISA2015の結果については、複数の新聞メディアで、国語教育の専門家でもない人が、データの裏付けもなくおそらく現今の教科書もまともに読まずに好き勝手なことを言っている印象がある。そういう記事はすでにロカルノさんのブログ「ならず者になろう」が批判的コメントとともにまとめている。
PISAに関する簡単な覚書
http://s-locarno.hatenablog.com/entry/2016/12/07/224753
この件に関しては、大学で国語教育を研究されている方が「専門家」としてほとんど出てこないのが気になっている。僕が読んだ限りでは毎日新聞で中央大学の笠井正信さんがコメントなさっていたくらいではないだろうか。そもそも読解力とは何か、PISAで測っている読解力とは何か、という話も含め、こういう機会に、きちんと国語教育の専門家がコメントを発信していってほしい。
まあ、そんな新聞メディアでのコメントよりも、今回紹介した林寛平さんの解説ビデオの方がずっと面白いし役に立ちますよ、ということで、最後に改めてぜひ。
信州大学 比較教育学研究室
http://shinshuedu.blogspot.jp/2016/12/pisa2015.html