あなたはどっち派? Discovery WriterとPlanner Writer

Writing Voicesの読書から。作文教育研究の世界で有名で、わりとどの本を読んでも出てくる古典的なモデルに、Hayes and Flowerの提示した作文の認知プロセスのモデルがある。


そしてこのモデルを書いた論文で、二人は文章の書き手を「モーツァルトタイプ」と「ベートーベンタイプ」に分類している。モーツァルトタイプの書き手は、事前に書く内容をしっかりと考えてから書くタイプ。ベートーベンタイプの書き手は、事前準備は手短にすませて、代わりに一度書いた後の推敲にじっくりと時間をかけるタイプである。熟達した書き手は初心者の書き手と比べて事前の準備や推敲の段階(つまり「書く前」と「書いた後」)に重点を置くものの、どちらに力点を置くかは、書き手のタイプによるということらしい。

Writing Voicesによると、この両者の違いを、Sharplesが1998年にPlanner Writer(計画的な書き手)とDiscovery Writer(探索的な書き手)という形であらためて整理しているそうだ。

Planner Writerは事前に何をどのように書くかをきちんと決めて、例えばパラグラフごとにそれを配分しているタイプ。書く前に、自分が何を書くのかを知っているタイプ。

一方のDiscovery Writerは、これから自分が何を書くのかを知らない。その状態でとにかく書き出してしまい、書き終えた時に「自分はこれを書きたかったのか」と気づくタイプ。そこから推敲する書き手もいるし、実際には「書き終えて終わり」というタイプの書き手もいるとか。

僕はDiscovery Writer寄りかもしれない。少なくとも小学校~高校生くらいまでは、事前準備は一切しないで「書きながら考える」タイプだったと思う。学校で書く文章の量はたかがしれているので、文章の質はともかく、書きながら考えても最後には破綻なくうまく制限字数以内にまとめるのがちょっとした得意技だった。

その後、大学の卒論などの長い文章を書く時はそういうわけにもいかず、事前に組み立てを考えるようになった。いま仕事で実践報告や依頼原稿を書く場合には、必ずアウトラインを考えてから書く。とはいえ、それをちゃんと守るというよりは、とりあえずのたたき台としてプランを作っておいて、実際には書く途中でアイデアが浮かぶので、構成をどんどん変えていくことが多い。事前に決めたプラン通りに文章を書くと、自分にとって何の発見もない、退屈な文章になってしまう。

もちろん、事前に計画をたてるか、筆の運びにまかせて探索的に書くかは、ジャンルや締め切りによる違いもありそうだ。これも感覚ベースの話にはなるが、詩歌や小説の創作では探索的な書き方になるし、議論する文章で事前にしっかりと構成を組み立てる。また、自分の場合には締め切りが近いと構成を組み立ててぱぱっと書いてしまうことが多い。そういうときは、たいてい「すでにわかっていること」をまとめるだけに終わってしまい、自分自身で発見のない文章なので、物足りなくもある。

さて、学校での作文の授業は、基本的には事前のプランニングに重点をおく。ワークシートなどを使って、生徒にしっかり考えさせてから書かせようとする。何かを「教える」態度としてはそれは正しいのだけど、実際にはPlanner WriterだけでなくDiscovery Writerの生徒もたくさんいるとしたら、事前準備を過大視する学校の国語の授業は、彼らにはかえってやりにくいのかもしれない。こういう点からも、生徒に裁量権を与えることってやはり大切なんだと思う。

作文教育の成否の鍵は、自律性を高める仕掛けにあり

2015.04.07

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