ある論文を読んでいたら、書き手についての印象的な言葉が引用されていたのでメモしておこう。英語の論文は、時おり作家や詩人の言葉の引用があって、僕はそういうのも結構好き (元の本はまだ確認していない孫引きです)。
書き手とは、何か言いたいことがある人というよりも、もしそれを言いださなければ思いもつかなかった新しい何かを引き起こすプロセスを見つけた人のことである。(ウィリアム・スタフォード)
(A writer is not so much someone who has something to say as he is someone who has found a process that will bring about new things he would not have thought of if he had not started to say them.)
詩人ウィリアム・スタフォードの言葉。この説明は好きだなあ。この本からの引用だそうで、早速注文した。
書くことの本質は「発見」にある
この「書き手」観は、書くことの本質をDiscovery Writingにおく見方と一致する。書くことは、あらかじめ出来上がった自分の考えを文字にして伝えることではない。いや、そういう機能もあるのだけど、より重要な書くことの本質は「書くことによって未知のものに出会うこと」にある。この考えは、多くの作文教育の実践者や研究者で共有されている。下記エントリで書いたように、僕はそのような文章観の持ち主なので、スタフォードの「書き手」観には共感するところが大きい。
「書くこと」をめぐる名言を集めてみよう
「書くこと」について、短いフレーズで豊かな内容をまとめた言葉としては、僕は次のアトウェルの言葉も好きだ。スタフォードと言っていることはほぼ同じだと思うけど。
書くことは、紙の上で考えること、そして考え直すこと。(ナンシー・アトウェル)
(Writing is thinking and rethinking on paper.)
In the Middle (3rd), p114)
「rethinking」という一言がととても大事だと思う。考えるだけでなく、考え直す、考え続けること。そこに、書くという営みの大切な要素がある。
こういう短い言葉は、授業でも書くことのプロセスのエッセンスを伝える方法として使えるかもしれない。今後、自分が読む文章から、日本語と英語の「書くことについての名言」をせっせと集めてみようかな。