どんな制約が子どもを自由にする? 「作家の時間」の「テーマ」についてふりかえる

2023年度ももう大詰め。いま、「作家の時間」の最後の出版を終えて、ファンレターへの返事も書き、ふりかえりに入っているところ(僕の授業は出版してからが長い)。今回のテーマは「特別な一品(ひとしな)」で、去年にふりかえった「視点を変える」と同じくらい、主観的には良い手応えがあった。そこで、僕が「作家の時間」を「テーマ制」にしてから2年たったこともあり、もう一度「テーマ」についてふりかえりたい。

写真は二月上旬に行った池の平湿原。湯の丸高原スキー場からリフトに乗って、そこからさらに徒歩で1時間以上。ほぼ誰もいない湿原を、同行者とひとりじめの贅沢スノーシュー散歩でした。

そもそも「テーマ」ってなに?

僕の「作家の時間」は完全自由ではなく、「テーマ」と言う形で制約を設けている。なぜ自由ではないのかというと、完全に自由だとかえって不自由になる子も少なくないからだ。僕の理想の制約のイメージは「何もない野原」でも「遊具が整備された公園」でもない「プレーパーク」だという話は、過去にも別のエントリで書いた。

作文教育における「自由を生み出す制約」とはなにか?

2021.12.11

プレーパークのような作文課題ってどんなもの?引き続き、子どもを自由にする制約について考える。

2022.01.06

「テーマ」とは、この「プレーパーク」を目指した、ジャンルとは異なる制約である。もう少し詳しい説明は、「視点を変える」というテーマを設定したときのエントリを読んでほしい。

今回は面白かった!作家の時間のテーマ「視点を変える」のふりかえり

2023.01.15

どんなテーマを出してきた?

これまでに自分が出した「テーマ」をまとめておこう。作家の時間の出版は年間6回くらいやっているのだけど、この「テーマ」以外にも、詩や俳句・短歌などがある(そこはジャンル限定になっている)。

年度 テーマ 説明・備考
2021年度 行く途中 2021年度の秋。「描写」を学んでほしくて、「どこかに行く途中を描こう」という制約をかけたもの。とはいえ、この年はまだ前半に「エッセイ」などの制約を設けており、「テーマ」意識は薄かった。
チェンジ 2021年度最後の「作家の時間」課題。なんでもいいから「チェンジ」の要素を入れることを求めた。これがすごい書きやすかったという子がいたのが印象的で、テーマについて深く考えるきっかけに。
2022年度 色が変わる この年度から「テーマ」制で年間を通すことに。「色が変わる」は、描写について学んでもらうテーマで、顔色でも情景でも色が変わる不思議なアイテムでも理科の実験でも、とにかく「色が変わる」要素を入れてもらうことを求めた。
ショートショート この年の秋は田丸雅智さんのオンライン講座を入れたこともあり、このときはテーマ制ではなくて「ジャンル」制だった。
視点を変える 2021年度の「チェンジ」を育てたもの。詳しくは先にあげたエントリで書いたが、当時一番手応えがあったもの。
真似る 書くことへの苦手意識が強い子向けに、とにかく「真似をする」ことの価値を伝えたいなと思っておいたもの。本を読みながら書く姿が見えて、「これは年度の最初においた方がいいな」と感じた。

また、テーマにうまく対応できない子向け&物語以外のジャンルにもきっかけを作りたいことから、作品集の中の「ミニ特集」として「どこまで本当かわからない日記」(生活文)、「この際だから言わせてほしい」(意見文)というコーナーを設けた。この「ミニ特集」制度は2023年度にも引き継がれる。

2023年度 なにかが起きた 基本的には「事件→解決」という物語の基本構造を学んでもらうためのユニット。三藤恭弘さんの『「物語の創作」学習指導の研究』を参考にした。エッセイでも説明文でも書けるように事例は示したけど、物語を書く子が多かったな。

ミニ特集:「どこまで本当かわからない日記」(生活文)、「推し文」(好きな本の文章を筆写して、好きな理由を添えたもの)

揺れる心 出来事と心情の関係や、心情の変化について学んでもらうためのユニット。「なにかが起きた」からの流れとしては自然なテーマだった。エッセイも書けたけど、これは意見文は出にくかったな…。

ミニ特集:「食べ物ライティング」。二学期の初めにチョコレート・ライティングをした流れで、料理をしてそれを五感で描写する文章をミニ特集として募集した。作文嫌い男子勢がこぞって選んでいたのが印象的。まあ、国語の授業中に目玉焼きとか作れるんだから嬉しいよね。

特別な一品(ひとしな) 物語であればキーアイテムを用いた展開、エッセイであれば思い出の品物をめぐるエッセイ、ルービックキューブのような好きなおもちゃの説明文も書けて、料理のレシピもOK…という、間口の広いテーマ。わりと子供たちも考えやすかったようだ。

ミニ特集:フリーライティング。とにかく制限時間のあいだ手を動かし続けて、何が生まれてくるのか楽しもう、というもの。

こうやって並べてみると、物語を好んで書く子が多いこともあって、どうしてもテーマも物語寄りのものになり、そこで回収できない機会をミニ特集で補う、という構図が定着してきた。とはいえみんなが物語ばかり書いているわけではなく、エッセイが好きでずっとエッセイを書き続けている子もいるし、「物語は苦手」という子は毎回ミニ特集を選ぶ。だから、ミニ特集は、定番を複数置き続けてもいいかもしれない。

2年単位で「作家の時間」を構想できるか?

なにしろ風越の中学にはりんちゃんこと、甲斐利恵子が控えているので、僕はいま基本的に5・6年を受け持っている。例えば、今年の6年生は、2022年度から23年度にかけて、2年間で僕のテーマを経験してきた。この傾向がもうしばらく続くなら、2年単位で授業を構想してもよさそうだ。この場合、年度によって受ける順序は異なってしまうのだけど、例えば偶数年度の最初のテーマは「真似る」で、奇数年度の最初のテーマは「なにかがおきた」にしたら、どちらもスムーズに入れるのかも。

「ジャンル」ではなくわざわざ「テーマ」を置くからには、ジャンルで制約を設ける以上の価値を、そこにきちんとこめていたい。これまでやった中で手応えがあるものや新しく考えたものを中心に、何を、どんな配列で並べるといいのだろう。そんなことを頭の片隅に置きながら、来年度イメージを持ち始めている。

この記事のシェアはこちらからどうぞ!