出版までを駆け抜けた!2023年度最初の「作家の時間」は、五行詩作りから。

怒涛の4月が終わった。いつも4月は走り抜けることで精一杯。昨日、思わず職場でも言ったけど「みんな本当によく頑張った!」と思う。大人も、子どももだ。4月後半から始まる僕の授業は、「作家の時間」の授業開きとして、短い作品の出版から入る。アイディアを考え、書き、推敲し、完成させて、読み合い、ファンレターを書き/もらう、という「作家の時間」の一連のサイクルを、まずは小さく体験してほしいからだ。ファンレターを書くのは週明けだけど、出版までは行ったところ。今日はその1週間の授業開きの振り返りエントリ。

写真は、4月20日前後の早朝の風越学園校舎。気候が良くなって、出勤が楽しみな時期になってきた。

目次

今年の授業開きは「本のタイトルで五行詩」

実は、今年の授業開きも昨年に続いて「運だめ詩(ラッキーディップ、下記エントリ参照)」でいこうとしていた。

ラッキーディップが作文教育に問いかけるものとは?2022年度の授業開き「運だめ詩」ふりかえり

2022.05.15

ところが、筑駒の森大徳さんがfacebookで「本のタイトルで五行詩を作る」実践(もとは学芸大附属世田谷中の渡邉裕さんの実践と聞いた)を紹介されてて、これも縁だと思って五行詩作りをやった。

これは、図書館で5冊の本を手に取ってそれを並び替えて本のタイトルにする、とてもシンプルで面白い詩創作の授業である。元にあるものを並び替えて詩をつくるという意味で、ラッキーディップと同じ原理だ。僕も以前に勉強会かどこかで聞いてイベントでやったことはあるが、授業でやってみるのは初めて。本式だと5冊とも自分で選ぶのかもしれないが、ゲーム性を高めるために次のようにした。

  1. 全員で、図書館を歩き回って自由に3冊選んでくる(これは自分の本にはならないので、適当に選んで良い)
  2. 全員で輪になって、掛け声とともに1冊目の本を隣の人に手渡していく。声がけ役の子が「ストップ」と言ったときに自分の手元に来た本が、自分の「運命の1冊」。
  3. これを3回繰り返して、「運命の3冊」が手元に来る。
  4. この「運命の3冊」に、自分で図書館を歩いて選んだ2冊を加えて、合計5冊で5行の詩を作る。
  5. 5冊の本のタイトルの言葉を、5行の詩の中に必ず入れないといけない。
  6. ただし、そのまま使ってもいいし、一部を変えてもいい。

いつも考えるのは「どんな制約が子どもを自由にするのか」ということ。5冊全部自分で選ぶのも、逆に5冊全部決められるのもきついかなと、「3冊は決められてて、2冊は自分で選ぶ」にした。このくらいだと、制約が子どもの想像力をいい感じに刺激してくれないかな、と思って。この辺のあんばいは、いつもやってみないとわからない面もあるが、今回はこのくらいで結果オーライだったようだ。

4月20日が初めての国語の授業で、27日にはもう作品を出版した。この間、たった3回。この間に、一度出してもらった下書きを見て返却して、また出してもらった完成作品をタイプして作品集の冊子を印刷して、さらに全員の作品へのコメントを夜遅くまでかけて書いたわけだ。ただでさえ忙しい4月の業務の中なので、この1週間の僕の働きぶりは我ながらギリギリ。でも、27日にはちょうど保護者会もあり、そこで作品集を配って「週末にファンレター書いてください、お願いします」まで言う目標があったので、なんとか走り切れた。

子どもたちの作品も多様で面白かった。「こういう作品を作ろう」とはっきりと意図を持って詩を組み立てていた子もいれば、なんだかよくわからないうちに意外に面白いものができてしまった子もいて。そういう優劣差があまり目立たないのが「ラッキーディップ系」の、偶然が強く作用する創作実践の良いところだと思う。

また、作家ノートを最初からしっかり使う子や、下書きから書き直したプロセスがはっきり見える子もいた。そういうそれぞれの輝きや作品の見どころを、27日には言葉にして一人一人に伝えてあげられた。自分では気づくのが難しい自分の作品の良いところや頑張りに、気づける手助けになればいいな。

「ちゃんと」を伝える1週間でもあった

大変な一週間だったけど、でも、特に僕の授業を初めて受ける新5年生に「あすこまの授業はこんな感じか」を経験してもらえたという意味でも、良い1週間だった。こういう言い方は風越らしくないかもしれないが、「しつけ」なくてはいけないことも、正直たくさんある。時には言語ではない形で(授業開始時刻には漢字ゲームを始めているという形で)、時には言語にして(フラッと出ていってしまう子を声に出して制止して)、そういうメッセージを伝え続けた1週間だった。空欄ばかりで提出した子たちには、書き直しも求めた。新しく出会った子どもたちには「あれ、あすこまはけっこう厳しいぞ」と思われたかもしれない。うん。良くも悪くも、僕はそういう教師なんだと思う。

「ちゃんと」が苦手な子への対応は僕の課題…

風越には、「ちゃんとやる」「こちらの設定した場に乗る」こと自体が苦手な子もけっこういる。そういう子たちは、こういう僕のふるまいを息苦しく感じるだろう。それは、下記エントリであっきーが指摘した「物腰はやわらかだけど、きっちり詰めて子どもを逃さない」僕の欠点でもある。

得意なこと、苦手なこと、これからのこと...自分の授業スタイルについて振り返ってみた。

2023.02.14

逃がそうとしないから、逃げたくなる。もちろん「楽しく」も大事だし、「ちゃんと」も大事。どっちも大事なのは間違ってないはず。でも本当は、注意せずに楽しい雰囲気で自然にそれを達成できたらいいんだけど、どうすればいいのだろう。そこまではまだ考えが及んでないし、実践もできてないな。将来的にはそれができるようになるといいんだけど。「ちゃんと」が苦手な子たちのことをしっかり心に留めながら、僕の課題が浮き彫りになっている上のエントリを、今読み直しているところだ。

それでも、とも思う。当面は、お互いを支え合って学びに向かっていく学習者集団を作ることに力を注ぎたい。この子たちはもっとグッと力をつけていけるはず。みんな頑張ろうとしているし、こちらも高い期待を持って伸ばして、頑張っている姿をたくさん褒めてあげたいな。いつもいうけど、教育は「ありのままを認めること」と「もっと変われるよ」を同時に行おうとする矛盾した営み。前者も後者も手放さずに、前に進んでいきたい。きっと、良いコミュニティができたときに、「ちゃんとやる」が苦手な子たちを迎え入れることもできるはずだ。

とにかく、やっと一息だ…

こんなふうに、達成できたこと、できていないこと、我が身を振り返って思うことは色々とある。でも、必死で走り抜けて、とにかくやっと一息だ。2週連続で休日出勤もしてて家庭に迷惑もかけたので、ひとまず今週は「週末に学校の仕事をしない」を心がけよう。4月を駆け抜けた同業者の皆さん、本当にお疲れさまでした。もうすぐGWですね。そこで一息つきましょう。

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