引用するとどんないいことがあるの?

中1作文授業もいよいよ大詰め。今日は第9回、ミニレッスンは引用の基本的態度についてだった。

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司書教諭的な関心もあって図書館活用と作文を兼ねたこういう授業をやっていると、「引用」は避けて通れない問題だ。こんなエントリを書いたこともある。

調べ学習における「引用」と「意見」の違い

2014.12.14
基本的には僕は引用について、(1)嘘を教えて大学の先生の邪魔をしないように、(2)細かいルールは分野によっても違うので作法よりも基本的な態度を伝えること優先、というスタンスでやっている。今回は特に中1なので、基本的な態度を教える最初の回という位置づけだ。

前回他の学年で引用の話をした時は、「なぜ引用するのか?」という問いに対して「学問の世界のルール」「出典を明記しないのは盗用や剽窃と言ってやってはいけないこと」と小保方さんの博論を例に説明したのだけど、今思うとあれはよくなかった。「ルールだからダメ」では自分で考えない人を育てるだけだし「やらないとこんな目にあうからダメ」も、単に抑圧しているだけだ。だいたい、やっちゃダメと言われたらやりたくなるもんですよね。

特に今回は初めてこういう話を聞くだろう中1。できるだけ「引用」にポジティブなイメージを持って欲しい。そこで、引用の具体的なやり方はプリントを渡すだけにして、「どうして出典を明記して引用しようというルールができたんだと思う? みんなが引用するとどんな良いことがあるんだろう?」と問いかけて、話し合ってもらった。

すると、「すでに認められた意見を根拠にできるから自分の文章の説得力があがる」「色々な人が調べたことを経ているから説得力があがる」「反対の人の意見を引用しながら反駁できる」といった書き手側のメリットだけでなく、「読者が情報元を知って、さらに深く調べられる」という読者側の視点、「みんなが引用元を確認するようになることで、世の中に正確な情報が増えていく」という公益的な観点まで、幅広い意見が出てくる。どのクラスでも、書き手個人のメリットを超えた意見が出てきた。

こういう展開は嬉しいなあと思いながら、みんなの意見を引き受けて、引用するとは「知の世界の航海図を描き、その中に自分を位置づけること」ではないかと語ってみた。見学者の方にあとで言われて気がついたのだけど、0類から9類まで人類の知の世界が分類されている図書館は、こういう話をするにはとても相応しい場だ。

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今日の授業ではもう一つ、自分では全然意識していないのに見学者の方が褒めて下さったことがあった。それは、カンファランスで生徒に話しかける時に「どんな感じ?」「何か僕に手伝えることある?」と聞いていること。これはアメリカのライティング・ワークショップの教師が”How’s it going?” “What can I help you with?”と聞くのをわりとそのまんま言っているだけで何の創意工夫もないのだけど、「作品よりも書き手を育てる」「書き手のオーナーシップを尊重する」というライティング・ワークショップの基本的な考え方は、その文脈を知らない方にとっては、とても新鮮に映ることがあるようだ。僕にとっては「そんな当たり前のことに感心してもらっていいのかな」という感じだったのだけど、そう思えるのも、ライティング・ワークショップの考え方が染み付いてきている証拠なのかもしれない。そんな気がして後からじんわり嬉しかった。

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