[読書]お仕事系の読書と『山と渓谷』が多かった2023年3月の読書。

2023年3月の読書振り返りエントリを書きそびれていたので今更ながら。先月の読書エントリでは「3月は中旬から少し余裕もできるはずだから、もう少し色々と読めるといいなあ」と締めていたけど、意外なほど、あまり本を読めなかった…。

目次

お仕事系読書&今月のベストはこの本!

今月のベストはロン・バーガー『子どもの誇りに灯をともす』。「クラフトマンシップの文化をつくる」と副題にある通り、学校全体で「それをするのが当たり前」な文化を作ることに主眼を置いた本であり、自分の風越での実践と引き比べて考えるところがとても多かった本だ。

下記エントリに詳しく書いたけど、ナンシー・アトウェルを想起することも多くて、久しぶりにナンシー・アトウェル『イン・ザ・ミドル』を開くきっかけにもなった。『イン・ザ・ミドル』、僕にとって大事な本なので、新年度にまた最初から読み直したいなと思う。

[読書]「作り出す喜びと誇り」が中核にある文化共同体を育てる、卓越した実践とその思想。ロン・バーガー『子どもの誇りに灯をともす』

2023.03.28

今月は割とお仕事系の読書が多かった月。以前に『あなたへの社会構成主義』などを読んでいたケネス・ガーゲンの新刊『何のためのテスト?』も読んだ。原題はBeyond the Tyranny of Testing(テストの暴虐を超えて)だから、邦題はずいぶんと穏当な印象。関係性に基づく評価を提唱しており、風越でやろうとしている評価(特に年2回の三者面談など)を応援してくれている本だと思う。この春、同僚と一緒に読書会をやる予定なので、それに向けてもう一度読んで、ブログにも感想をまとめよう。

舘野泰一・安斎勇樹『パラドックス思考』ヤナ・ワインスタイン、他『認知心理学者が教える最適の学習法』については、それぞれブログに書いているのでエントリを読んでいただけるとありがたく。前者は「感情パラドックス」を飼い慣らすための本で、さまざまな矛盾がある風越学園で起きている出来事を考える思考の補助線になる本。後者は認知心理学の学習についての知見をまとめた本で、学校の先生なら知っておくべき、学習についての知識がまとまっている。

[読書]身近に溢れる感情パラドックスの「飼い慣らし方」のヒント。安斎勇樹・舘野泰一『パラドックス思考』

2023.03.19

[読書]とても丁寧な説明の一冊。学習法の本の定番になるか?ヤナ・ワインスタイン、他『認知心理学者が教える最適の学習法』

2023.03.27

国語の授業絡みでは、加藤映子『ハーバードで学んだ最高の読み聞かせ』。この「ハーバードで学んだ〜」はきっと編集者さんがつけたタイトルかもなあ。内容はまっとうな、読む力を伸ばすための読み聞かせの方法に関する本。吉田新一郎『読み聞かせは魔法!』にも通じるところがある。日本の保育の文脈における読み聞かせとの違いは面白い。僕個人も、ここまで意図を持った対話型読み聞かせだと授業っぽさがにじみでてくるのがあまり好みではないけど、ティーチングの場面が少ない風越なので、やってみてもいいのかも、とも思う。

もう一つ、大事な本が『みらいをつくる』

市場に出回っている本じゃないけど、風越初の卒業生へのプレゼントとして作られた『みらいをつくる』も3月の大切な読書だ。「かぜのーと」を再編集した書籍だけど、特に1年目や2年目の子どものインタビューを読んで「あの頃に描いていた未来に、僕たちは向かっているのかなあ」と考えさせられた本。以下のエントリに、感じたことは詳しく書いてある。

2022年度のふりかえり。あの頃の「みらい」に僕らは立っているか?

2023.04.02

文学系は囚人の脱獄のドラマ『赤い人』

3月は妻と結婚20周年記念で網走に小旅行に行きまして、その影響で読んだのが吉村昭『赤い人』。明治期、西南戦争や自由民権運動で膨れ上がった逮捕者・監獄収容者の問題を一気に解決すべく、北海道に監獄を作って囚人を送り込み、北海道の開拓に従事させる案を実行する明治政府。死と隣合わせの苛酷な労働に従事する囚人と、彼らを厳しく取り締まる看守の対立を描いたドラマ。

「五寸釘寅吉」など、有名な(と言っても僕も網走旅行で初めて知った)脱獄者・犯罪者がたくさん出てきて、死地に置かれた囚人たちの恨みと脱獄にかける執念がとても印象的な一冊。ただし、マンガ『ゴールデンカムイ』の白石由竹のモデルになった「昭和の脱獄王」白鳥由栄は、時代がずれているので出てきません。そちらは、白鳥について取材したこの本が良さそう。こちらも読んでみたい。

文学系でもう一冊あげるとしたら、ロビン・スティーヴンス『グッゲンハイムの謎』。『ロンドン・アイの謎』のテッドとその姉・カットの姉弟、そしてアメリカに引っ越した従兄弟のサリムの3人が、グッゲンハイムの美術館から消えてしまったカンディンスキーの「黒い正方形の中に」をめぐるミステリで、叔母のグロリアおばさんの無実を証明すべく、三人が活躍するヤングアダルト向けのミステリー。『ロンドン・アイの謎』に比べて主人公のテッドに変化が見られるのがいいな。これ、『怪物はささやく』と同様に、シヴォーン・ダウドはほぼ原案のみで、本文はほぼロビン・スティーヴンスの作品だけど、『ロンドン・アイの謎』と比べても違和感がないのもすごい。

単独行に山ご飯…今月の山読書は実用書

今月の山読書は、エッセイとかじゃなくて実用書。一時的にkindle unlimitedに入ったので、この3月は雑誌『山と渓谷』を読みまくっていた。考えてみたら読書冊数が意外に伸びなかったの、『山と渓谷』ばかり読んでいたせいだな…。複数年にわたって読むと似たような特集が繰り返されているのだけど、僕も一人での山登りが多いので、単独行や一人での山ご飯についての特集をよく読んでいた。

山ご飯については、次の2冊も。『山と食欲と私』、大好きです。

登山を始めた頃に買ったバーナーがもう調子悪くなってるので、SOTOのウインドマスターに買い換えたいなと思ってるところ。僕は高い山というよりも、近所の山や北八ヶ岳の森でのんびりすることが多いので、山ご飯ライフを充実させたい。こうやって、やりたいことが明確になってくると面白いよね。

春休み期間の今はわりと読書時間が取れているけど、来週からまた読むのが大変になってくるのかな。でも毎日30分を目安に、地道に読書生活を続けていきたい。2023年度もどんな本に出会えるのか、楽しみ。

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