年度末最後の出勤日、自分の書類受けに学内紀要の原稿が届いていた。今年の紀要の表紙には、僕の名前が三箇所出てくる。合計三本の原稿を書いたのだ。一つは、司書の二人と一緒に書いた司書着任以来の学校図書館の記録。もう一つは、司書や同僚と一緒に書いたもの。本校図書館用に開発した検索システムについて。最後の一つは、地理の同僚と一緒に書いた実践報告。学校図書館を舞台にした出版学習だ。
僕は学内紀要はわりと気軽に書いてしまうのだけど、それでも三本はちょいと大変だったな。下のエントリの時期は原稿に追い詰められてたし、これもあって今年は国語教育系の雑誌に、実践報告を一本も書けなかったし。
それでも書き終えて完成品を見ると、やってよかったと思う。どれも自分から言い出したのではない、誘ってもらった原稿。時間がない中で打ち合わせをやりくりしながら、なんとかかんとか、書き上げたもの。どれも共著で、しかも図書館絡みというのは、この3年間の自分の仕事を象徴しているようでもある。
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僕の勤務校にはもともと司書がいなかった。以前担任していた時にも図書館にはまるで期待できなかったから、仕方なく自腹で教室にブックトラックを持ち込み、ブックオフで本を買いあさって学級文庫を作った。その後、担任を外れて図書館の担当になって動いていた頃に、期間限定のプロジェクトという形で司書を雇用する道筋ができた。ここが勝負所とばかりに良い司書を探し、一方で司書にとって働きやすい校内環境をできるだけ整えたのが、ちょうど3年前の春。そしてその時の僕の目標は、この期間中に司書と一緒に図書館の実績をあげて、3年間が終わった後も司書を引き続き雇用できるようにすることだった。
それからの3年間、司書とともに図書館の環境を整えて活性化をはかる一方で、他校を訪問して司書雇用状況を調べ、連携できる学校を訪問して連携し、人事権を持つ部局には図書館への人的措置の必要性をプレゼンし…と、自分にできるだけのことはやってきた。
結果として、本のある自習室は図書館になり、新年度から司書が正式に校務分掌の中に位置づけられるようになった。いまいる司書さんにも、引き続いて勤務してもらえるようになった。まだ課題はあるけれど、うちの図書館にはなくてはならない人が、居続けられる環境が整いつつある。
ここまでの3年間、僕たちのチームはよくやったと思う。もちろん運もあったし、他の同僚の協力や応援も大きかった。中でも、管理職が学校司書の必要性を理解して全面的にバックアップしてくれたこと、そして学校図書館法が改正されたこと。この2つは本当に大きかった。それらすべてが交じった重みを感じながら、紀要を手にしてページをめくる。
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午後、司書さんに3年間のお礼を言った。「ありがとうございます」と気づかぬうちに何度か言ったようで笑われてしまった。何度も言ったのはきっと、図書館を良くしてくれたことへの感謝以外にも、彼女への僕の個人的な感謝の気持ちがあるからだろう。もともとチームワークが苦手な僕が、司書をサポートする立場になって、チームで働く楽しい経験ができた。司書の継続雇用のためにどんな手を打てばいいのか先を読んで考える経験も積めた。「図書館の3年間」は、確実に僕の幅を広げてくれて、楽しい日々をくれた。
そしてもちろん明日からだって、司書と司書教諭の関係は変わらない。ただ、僕にとって、この「図書館の3年間」の終わりは、やはり一つの区切りになる。実際、3年前に比べると「図書館をなんとかしないと」「司書がいない状況への逆戻りは防がないと」という肩の荷は、だいぶ軽くなった。いったん肩の荷をおろして、中身を少し詰め替えて、司書さんに色々と預けて、肩が重さでこわばらないよう程度に、ゆるく頑張っていこうと思う。