別に改善に向けて問題提起をしたいとか、そういうわけじゃないんだけど…都立高校では学校図書館の業務委託が進んでいるそうです。都民のあすこま一家としては、都立高校の学校図書館のこの状況が気になる。実は地元の小学校の学校図書館もとてもお寒い状況なだけに、これ、止められない流れなんですかねえ…という私的つぶやきを書きます。
目次
進む都立高校学校図書館の業務委託
かつて専任の司書を雇用していた都立高校の学校図書館。東京都で雇用された司書が学校に派遣される形だった。しかし、近年は新規採用を停止し、退職する司書の補充をしていない。その代わりに、近年増加傾向にあるのが、学校図書館の業務を外部の業者に依頼する「業務委託」である。
そして、実際に業務を請け負っているのは、次のような会社たちだ。
2016年 東京都立高校・学校図書館(室)業務委託のおぞましい実態
http://bookserial.seesaa.net/article/436781378.html
2017年も都立高校の学校図書館(図書室)は、ビル・マンション管理,警備,清掃業者などが運営する危機的状況
http://bookserial.seesaa.net/article/447518759.html
情報元のブログ、タイトルは煽り気味だけど情報は詳しい。図書館業務とは無縁な会社が、一番安い価格を提示したからという理由で落札している状況がよくわかる。
誤解のないように書くと、実際に働くのはこうした会社が雇用する司書なので、現場に立つのが経験や資格のある司書さんであることには間違いない(別に清掃の人が図書館の仕事をやるわけではない)。しかし、こうした会社では司書の待遇も悪い。いくつか調べたところ、時給が1000円未満のところばかりだ。資格の必要な専門職であることを考えれば、薄給と呼んで差し支えないと思う。そうなると、全体の傾向としてはサービスの質が低下していくことは、容易に想像できる。
他に、受託会社にも図書館の専門知識が必要な理由については、次のブログで整理されているのでご覧いただきたい。
なぜ図書館業務委託・受託会社に専門知識が必要なのか
http://d.hatena.ne.jp/machida77/20160422/p3
直接指示ができない!? 業務委託の大きな問題点
業務委託で司書が入ることの大きな問題の一つは、直接雇用ではないのて、仕事の指示が直接できないということだ。司書教諭でも、たとえ校長であっても、同じ学校の図書館で働く司書に直接の仕事の指示ができない。さもないと偽装請負とみられてしまう。
この話を現役の某都立高校司書さんから伺った時には、正直なところ「馬鹿らしい…」と思わざるを得なかった。あらかじめ書面などで定められたルーティーンの仕事を除けば、学校から司書へのあれやこれやの依頼は、みんな一度会社を通さないといけないのだそうだ。目の前に、司書さん本人がいるのに? 明日の授業に関するお願いだったら、それって間に合うの?
にわかには信じがたいほどの話なので、実際には現場で柔軟に運用している所もあるのかもしれない(僕がこれまで訪問した都立高校は、みんな専任司書がいる高校に限られていて、業務委託の学校図書館を直接見たわけではない)。でも、こんな仕組みにして学校図書館の運営が円滑に進むはずがない。おそらく学校側も、派遣された司書さんも、ストレスが溜まるはずだ。その結果、良質のサービスを受けられなくなるのは生徒たちなのだから、気の毒な話である。
軽視されている学校図書館の仕事
業者委託が進んでいる都立高校図書館。知人の関係者からは、開館時間の制限にともなう利用者や貸出冊数の減少といった声もお聞きする。まあ、司書教諭の負担軽減もないだろうし、それはそうだろうなあと思う。ある司書の方は「将来的には全ての都立高校図書館が業務委託となる方針」とも語っていらっしゃった。今は専任の職を得ていても、こんな状況では安心して働けないだろうなあ…。
こうしたことが起きる背景には、もちろん予算不足もあるにせよ、基本的には学校図書館や司書の仕事が軽視されていることがあるのだろう。「学校図書館は本を置いておけばいいんでしょ」「司書の仕事って、本の貸し出し返却や管理くらいでしょ」と思っている人が、残念ながら少なくないのだと思う。そうした人々は、図書館資料を調べ物のために使うことも、ましてレファレンス・サービスを使うこともおそらくあまりないので、低水準のサービスでも十分だと思ったまま、図書館の持つ可能性に気づかないのだろう。これは「皆さん、理解しましょう」と言って変わる話ではない(それならばとっくに解決している)。
2児の親としてはとても不安…
この問題、僕は東京都の教員ではないので、つい親目線で考えてしまう。あすこま一家の2人の子どもは、東京都某区の公立小学校に通っている。そこでは、週にたった1日、派遣の司書さんが来るだけで、しかも、まともなレファレンス・サービスもできない(googleで検索するだけの)人なので、正直なところ全く頼りにできない。司書教諭も名ばかりの充て職で、やる気もなさそう。
学校図書館の改善を学校にお願いしても、副校長は「お金がない」「公共図書館へどうぞ」「ボランティアも不要です」の一点張り。一保護者としてはどうにもしようがない。家に本がなかったり公共図書館に行く習慣がなかったりする家庭のお子さんはどうなるんですかね…。
ちょっと生々しい話をすると、あすこま家の財政的には、子どもには公立学校に通ってほしい気持ちもある。しかし、このまま区立→都立の小・中・高に通わせると、最悪の場合、高校卒業までこんな学校図書館がずっと続くかもしれないのかと思うと、正直なところうんざりする。仮に今はいい司書さんがいる都立高校も、子どもたちが進学する頃には業務委託になっている可能性が十分にあるのだから、親としては対策のしようがない。
今回のエントリは、自分が見聞きした話を書いただけの完全な愚痴です。それにしても…。やれ主体的な学びだ、探究学習だ、国際バカロレアだと言っておいて、その基盤となる学校図書館のこのお寒い状況。これ、いったい何なのだろうなあ…。我が子の学校は、こんな状況のまま、なぜかICT関係にはお金がついて電子黒板が教室に入ったりするんですよ。不思議…。
私も図書館に関してはずっと関心があります。司書(教諭)を目指していた時期も。学校の図書室は司書(教諭)の実力でずいぶん変わります。大きな学校でも図書室には鍵がかけられていた。。という信じられないような現実もありましたし、逆に、教室では居ずらい子も喜んで話にくるようなカウンセラー室のような役割もやっていた図書室もありました。(グーグルばやりの時代でも)しっかりしたレファレンスサービスのできる司書さんは専門職の中の専門職として尊重されるべきだと思います。本を読まない教師たちへの誘導(指導?)の役割もあると思います。
あすこま家はあすこまさんがいるのでまったく心配してません(笑)が、そのほかの(家庭で)読書指導を受けられないお子さんにとっては大きいと思います。公立学校はそこが生命線。親もその他の人も「子どもたちの未来をかけて」支援していくべきです。がんばれ~。
図書館司書の専門性をどう担保して社会的に認知してもらうかは本当に難しい問題ですね。「理解すべき」と言っているだけでは事態は一向に良くなりませんし…。都立高校も多くの生徒が通うこともあり、影響は大きいと思います。