知り合いの大学の先生がサバティカルでコペンハーゲンに来ていらっしゃるということで、その伝手を頼ってコペンハーゲンに行ってみた。この本をiPadminiに入れて読み直しながら、あすこま史上初の北欧旅行。
今回の目標はアンデルセンも世界遺産も無視して図書館を見ること! ただ、訪問した図書館をすべて書いていくと大変なので、幾つか印象に残った図書館について、ぼちぼちと書いていこうと思う。第一弾はコペンハーゲン市内にあるBIBLIOTEKET på Rentemestervej。
素敵なカフェのある図書館
BIBLIOTEKET på Rentemestervej は、コペンハーゲン北西部にある新しい図書館。外観は本を重ねた様子がモチーフ。ただ、これはしばらく前からのデンマークの図書館の動きらしいけど、図書館だけでなく市民センターを兼ねた場になっているのが特徴だ。
そのすぐ奥左手には素敵なカフェが!
壁にある雑誌(写真左手)もこの図書館の蔵書。ちょうどこの向かいに児童室があるので、保護者がカフェで雑誌を読みながら児童室の子供達を見守れるというナイスな仕組みだった。スタッフの方は軽度の障害の持ち主で、障害者への雇用創出も兼ねた場とか。ちなみにカフェラテもラザニアも安くて美味しかった。
多目的スペースがいっぱい
二階に上がると、役所の出張所的なフロアや、ワークショップや発表会ができるフロアがある。さらに三階にも子供向けのアクティビティ・フロア(ちょうど小学生?が来ていた)やシアターがあって、実はこの図書館、「閲覧室」以外の部屋がとても多いのだ。館内を吹き抜け上から見るとこんな感じ。多目的スペースがたくさんある。
ワークショップを通じて人が集まる場所に
ただ(蔵書冊数を聞けばよかったと後悔しているのだけど、)建物の大きさの割には蔵書数は決して多くない印象だ。従来の図書館よりも、ずっと「人の集まる場所」に力点が置かれている。
ちょうどこの日お会いできた現地の日本人司書さんのお話によると、本がどんどん電子化していることを受け、図書館も電子書籍の購入に力を入れ、代わりに紙の本は廃棄を進めて、その分で空いたスペースを使って各種イベントを行うようになっている、ということらしい。図書館の市民センター化、とでも言えばいいのか。なるほど、図書館そのものの性格が変わりつつあるのか。
実はこの図書館、吉田さんの本ではミニ図書館として記述され、かなり吉田さんお気に入りだったBispebjerg bibliotekの後に建てられた図書館でもある。小さいながら単独で図書館としての機能を果たしていた図書館がなくなり、代わりに複合施設として大型化した図書館ができるというのは、近年のデンマーク図書館の流れを象徴しているようにも思える。
なお、コペンハーゲン市立図書館のウェブサイト(英語版)を見ても、この図書館ではワークショップやイベント開催のことが強調されていた。
▷ BIBLIOTEKET på Rentemestervej (English)
地域の子供を見守る場所にも
帰り際に印象的だったのは入り口に掲げられていたこのペナント。
この「Ferie Camp」、地域の子供、特に放課後の時間帯に子供が放置されがちな文化資本の低い家庭や移民の家庭の子供を対象にして、各種催し物をやるイベントのペナントなのだそうだ。一つ一つは軽いアクティビティらしいのだけど、そうやって放課後の子供の居場所を確保している。図書館はこういう活動の舞台でもある。
コーディネーターとしての司書さん?
ここまで図書館が市民センター化し、「外との関わり」が広がると、図書館司書に必要とされるスキルも変わってくるのだろう。図書館情報学の専門家から、色々な人をつなげるコーディネーターへ。あれ、なんだか学校の教師が教科の専門家からコーディネーター的な役割に変わっていくのと似たような変化が、ここにもあるのかもしれない。