[読書] ブレンディッド・ラーニングの「つくりかた」。ホーン&ブレイカー「ブレンディッド・ラーニングの衝撃」

オンラインでの個別学習と対面の学習を「ブレンド」させたブレンディッド・ラーニング(Blended Learning)。それについて知りたかったらこの一冊だ。ブレンディッド・ラーニングとは何か、どのような種類があるのか、実際にはどんな学校が取り入れているか、そしてブレンディッド・ラーニングの学校を作っていくにはどうしたらよいか。とにかく、ブレンディッド・ラーニングについての重要知識が網羅されている本だ。

目次

岩瀬直樹さんのブログから

この本を見つけたのは岩瀬直樹さんのブログである。その記事内で僕の下記エントリについて言及してくださっていたにもかかわらず、僕がこの本を読んでいない(笑) それで手にとってみた、というわけ。

一気読みした!『ブレンディッド・ラーニングの衝撃』。

http://iwasen.hatenablog.com/entry/2017/05/21/172539

Blended Learningって何だ!?

2014.12.05

このエントリで紹介したカーン・アカデミーのブレンディッド・ラーニングの講座はたいへん参考になる。subtitle(字幕)の設定で日本語字幕も選べるので、ぜひ見て欲しい。字幕をつけてくださったのは、この『ブレンディッド・ラーニングの衝撃』の翻訳者の小松健司さんのようで、たいへんありがたい!

Teaching in a blended learning environment – rethinking the role of the teacher

https://www.khanacademy.org/partner-content/ssf-cci/sscc-teaching-blended-learning

ブレンディッド・ラーニングの学校の「作り方」

この本の面白いところは、ブレンディッド・ラーニングの学校を増やそう、という明確な意図のもとで書かれていることだ。だから、「学校にどの程度ブレンディッド・ラーニングを取り入れるか」とか「どういうステップで取り入れるか」「校風とはどのように関連するか」などの、ブレンディッド・ラーニングの学校の「作り方」についての言及が多い。教科教員よりもむしろ管理職が読むと良さそうな感すらある。

というわけで、本気でブレンディッド・ラーニングを取り入れてみたいという方には必読の書となるはず。とくに、個別指導というと多数の教員が必要になってくる印象があるが、ICTを活用したブレンディッド・ラーニングでは、さほどではなさそうという点が興味深かった。

これ、面白いの?

僕が以前カーン・アカデミーの動画を見た時には、「生徒はICTで個別にドリルをこなして、教師は評価と次の目標設定に注力する」印象があったので、「これただの「オンラインドリル」じゃないの? 教師も生徒もこんなので楽しいの?」という疑問があった。正直に言うと、この本を読んでも、この疑問はまだ完全には氷塊していない。ぜひ一度、ブレンディッド・ラーニングを導入している学校を見学して、生徒や先生に聞いてみたいところだ。

でも、こうした個別のドリル学習は「ドリル的に学ばないといけないことを個人に最適化する」ための手段であって、ブレンディッド・ラーニングでは、最適化した結果生まれた時間を使ってプロジェクト型学習を行うのがキモのようだ。また、同じ課題を抱えた生徒などを集めた少人数のレクチャーを行う形式もある。形式にもよるけど、最初の印象よりも、生徒や先生が対面で学ぶ場面は意外に多いのかも。

教師の専門性が鍵になる?

個人的な印象では、ブレンディッド・ラーニングの学校が「うまくいく、いかない」を分ける要因の一つが、教師の教科や生徒理解の専門性だと思う。学習の個別化は、おそらくその仕組みがあれば成功するというものではない。たとえば、ライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップについても、「形の上ではたしかにライティング・ワークショップ、リーディング・ワークショップ」なのだけどうまくいっていない事例が、以下の本で紹介されている。

学びの個別化とは、教師の視点からいえば、個別の生徒に対して「適切なタイミングで、適切なサポートをする」ことを意味する。サポートの内容は別にコンテンツの直接提供でなくてもかまわないのかもしれないが、「適切なタイミングでの適切なサポート」は、「生徒の状態にかかわらずある時期一斉に同一の内容をやる」よりも、効果的であるぶんずっとハードであるはずだ。ICTの助けはあるとは言え、その大変さを支える要素として、教科知識の専門性、生徒理解の専門性は、どちらも鍵になるのではないかな。

動画とあわせてどうぞ!

今の日本だとどうなのかなあ、まだオンライン教材が十分にはないんじゃないかな、と思いつつも、教育の方向性としてはこれは十分にアリだよなあとも思う。国内で見学に行ける学校があったら見学したいな…。興味のある方はまずは動画とこの本をあわせてどうぞ!

Teaching in a blended learning environment – rethinking the role of the teacher

https://www.khanacademy.org/partner-content/ssf-cci/sscc-teaching-blended-learning

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