短期連載中の学習指導要領「書くこと」を読もう企画。
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第4期となる今回扱うのは、現役の中高生が教わっている現行の学習指導要領だ。これは第一次安倍政権下で改正され、道徳教育や愛国心の涵養がうたわれた新教育基本法を受けての指導要領である。従って、国語の指導要領でも「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」が盛り込まれるようになった。
ただ、このブログで現行学習指導要領を独立して取り上げたのは、そのような理由からではない。第3期の後半に出てきた「伝え合う力」路線を継承しつつも、書くことの領域においてはわりと思い切った改変が見られるからだ。
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(1)2008(H20)年告示、2012(H24)年実施【校種:中学】
(習った世代:現高1以下)
中学校の指導事項を見るとその変化は明らかだ。まず、指導すべき事柄が、どの学年でも取材から完成後の交流に至るまで、③書くことのプロセスに沿って学ぶよう指示されている。また、言語活動例としては相変わらず⑤実用文中心だが、どの学年でも②創作が復活している。中1の事例に鑑賞文、中2に詩歌や物語、中3に批評と編集が含まれている。この②創作と③プロセスの復活は、終戦直後の学習指導要領以来と言ってもいい。ちなみに、中3では「資料を適切に引用する」ともあって、「引用の仕方」を中3で扱うことになっている。
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(2)2009(H21)年告示、2013(H25)年実施【校種:高校】
(習った世代:現高3以下)
また、高校の学習指導要領でも、思い切ったチャレンジがある。「国語総合」では指導目標に「想像力」が入って、詩歌や随筆を書くことが含まれるようになった。「国語表現」でも詩歌・小説・鑑賞文が入り、「現代文B」になると
伝えたい情報を表現するためのメディアとしての文字、音声、画像などの特色をとらえて、目的に応じた表現の仕方を考えたり創作的な活動を行ったりすること」
と、デジタル化の進展をふまえて様々なメディアの特性を活かした創作活動を行うことも示されている。中高いずれにしても、②創作性をめぐる言説がかなり目立っている学習指導要領だ。
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この「創作性復権」の流れがどのような経緯で入ってきたのかは、僕にはよくわからない。教育の国家統制の強まりの中「日本の言語芸術の特性を書くことで学ぶ」という文脈なのか、それとも創作を中等教育でするべきだという別の判断があったのか(諸外国では創作をする事例は珍しくない)。 ③プロセスを重視していることとあわせて、現行の指導要領を考えた方にお話を聞いてみたいところ。いずれにせよ、個人的には、第1期についで好きな学習指導要領である。
(8/20 追記)