詩人の向坂くじらさんをお迎えしてことばのワークショップを開きました

いよいよ夏休み〜。嬉しいなったら嬉しいな。さて、先週の一学期最後の国語の授業では、詩人の向坂くじらさんをお迎えして「ことばのワークショップ」を開いた。今日のエントリはその個人的備忘録。どんなワークショップだったかよりも、自分にとって印象的だったことを中心にメモしていく。

向坂くじらさんとは、この春の全国大学国語教育学会の公開講座・詩創作ワークショップで知り合いました(下記エントリ参照)。昨年秋から続いての連続公開講座「詩の書き方は教えられるか」、もともと自分が詩の創作指導について勉強したくて企画した面もあるので、こういう形でご縁ができて嬉しい限り。

面白かった!詩創作のワークショップ 全国大学国語教育学会より②

2021.06.07

今回は、僕が受け持つ5・6年生全員に向けて詩創作のエクササイズの授業(45分×2)をしていただき、そのあとに希望者2名に向けて詩の創作ワークショップをしてもらった。

目次

最初は「詩人になるための練習」

最初の詩創作のエクササイズ。生徒が集まってくるのを待ちながら、ホワイトボードに「かざこし」と書き、そばにいた子どもたちとアクロスティックを作り出すくじらさん。「くーちゃん」などと呼び出す子もいてなじむのが速い! 全員が輪になって集合したあとも、「今日は詩を書くことはしません。詩人になるための練習をします」と言って、すぐに身体をつかうエクササイズへ。手を叩くだけのハンドクラップからはじまって、ペットを飼っている人に聞いてペットをなでる仕草へ、そして、立って移動しながら、「いまここに、飼ってみたい動物がいると仮定してなでる」活動に移っていく。こうやって徐々に本題(後述)に移っていくやり方はさすがだなあと思っていたのだけど、あとで聞いた話では、集まってくる生徒の様子を見て「これはただ自己紹介を話しても聞いてもらえる感じではなさそう」と感じて、急遽切り替えたのだそうだ。こういう臨機応変さ、雰囲気をつかんでやり方を変えるのは僕は不得手なのでうらやましい。

準備運動のあとの本題は、「空間に想像でものを敷き詰めるワーク」。校舎のあるエリアに隙間なくものを敷き詰めるとしたら、何を入れる?というお題だった。これ、自分でもやってみたのだけどけっこう面白い。はじめは大きいもの(木とかトラックとか)を何か入れて、隙間に…という発想になるのだけど、平面ではなく奥行きを考えると一気に広がりが出る。同じ授業を2回やっていただいた関係で僕は2回やったので、最初は森の箱庭をつくるイメージで作り、2回めはトラックのように即物的なものを入れた。そしたら2回めの授業の子どもたちに「あすこま発想が貧困!」「面白くない」と散々に言われてしまった…笑 みんなは、想像上の生き物からシャボン玉まで、色々なものを詰め込んでいる。ある程度制約のある広さの空間に、何かをイメージして物を敷き詰めるというわかりやすいタスクが、想像力を刺激するのかもしれない。こうやって「見えないものを見る」「日常の景色をちょっと違ったふうに眺める」ことが、詩人になるためのエクササイズだという位置づけも面白かった。

また、この時に興味深かったのが、くじらさんが「3分間じっと見つめること」「思いついたことができたら、口にしないで紙に向かうこと」と伝えていたこと。「見えないものを見る」想像力を途切れさせないために、一人で静かに集中することを大事にしているのかもしれない。このあとの創作ワークショップ(後述)でも、書く時は静かに一人で書く姿勢を貫いていた。くじらさんが大切にしていることの一つなのかも?

この日は、敷き詰めるもののリストを書くだけで時間終了。プリントに書いたメモを回収して終わりになった。あとでびっくりしたのは、くじらさんがたった45分の授業で関わった子たちのメモをとてもよく覚えていたことだ。この記憶力、うらやましい…!!  特に、特定のタイプの子たちのメモが印象的だったようで、僕では見つけられない良さをたくさん見つけてくださっていたのだと思う。くじらさんが後日全員にコメントを返してくれるとのこと、夏休み明けの授業になると思うけど、どんなコメントか楽しみだ。そこから詩を書く授業を始めてもいいかもしれないな。

いろかるたを使ったウォーミングアップ

授業2コマのあとは、希望者のみの詩の創作のワークショップだった。こちらは、希望者が小6の子と小3の子の計2名と少なかったのだけど、そのぶんくじらさんの関わりが濃密なワークだった。まずは、いろかるた」を使ったウォーミングアップ。こちらについては、以前にくじらさんがとあるフリースクールで同じワークをしたときの様子が、そのときの先生の素敵なレポートになっているので、ぜひこちらをご覧いただきたい。

今日は、そのワークが済んだら、わりとはやめにライブラリーの詩集のコーナーへ。パラパラめくって好きな詩をさがす。参考になる詩を探しているのはわかるけど、意外にこの時間が長い。2人目の子が途中から参加した事情もあって、30分近くここで過ごしたんじゃないかな。結局、自分で詩を書く時間は15分ほど。こんな短くて大丈夫かなと思ったんだけど、いざ書くとなると、2人ともその時間で詩を書き上げた。公開講座のワークショップもそうだったけど、詩の創作って時間がたくさんあれば良いものでもなく、短い時間ならそれはそれでなんとかなってしまうものなのかも

面白かった!詩創作のワークショップ 全国大学国語教育学会より②

2021.06.07

印象に残った問いかけ2つ

この時のやりとりで個人的に面白かった問いかけが2つあった。一つは、いったん書き終えた子の作品を見て、くじらさんが「もっと何か書きたいことある気がするけど、どう?」ともうひと踏ん張りを求めたこと。こういうワークショップって基本的にできたものを褒めてシェアして…というイメージがあったので、このツッコミが面白かった。僕自身は、ある子の詩作品に「書ききってない」とコメントするのはなかなかできない。どうやって判断したんだろうとあとで聞いたら、絶対の確信があったというよりは、まだ少し時間があったので、言ってみて相手の出方をうかがう面もあったようだ。なるほどなるほど。

もう一つは、完成した作品を読み合うときに、くじらさんが「書いた人はどこが気に入っていると思う?」と聞いていたこと。この聞かれ方だと、単純に自分がどこが好きか聞かれるのと違って、いったん作品と距離をとってあらためて考える感じになる。この問いのバリエーションは自分の中になかったので、新鮮な体験だった。

ありがとうございました!

この日の詩の創作ワークショップを終えて、やはり誰かと一緒に授業をするっていいなあと思った。このエントリで書いたような、自分では得られない視点も手に入るし、何より、僕では評価できない作品や視点もくじらさんなら評価してくれる安心感も大きい。もちろん、今回のようにいつも詩人さんに来てもらえるわけではないから、自分でも色々な詩や言葉の良さを見つけられるようにならないといけないんだけど、どうしても自分の好みとか性格の問題で見つけられない良さってある。そういうとき、自分と違う視点の人、しかも詩を日々書いている人がそこにいてくれることは、本当に心強い。条件が整えばまたおいでいただけそうな雰囲気なので、ぜひまたくじらさんをお迎えしてワークショップを開催できたらと思う。今回はありがとうございました!

 

 

 

 

 

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