[資料]「学校外」の読書はどうなっている?猪原敬介「小・中・高校生の学校外読書時間の全体像を描く」

今回のエントリは自分用の備忘メモとして、資料の紹介をする。『読書と言語能力』の著者・猪原敬介さんが、ベネッセ教育総合研究所のサイト「子どもの生活と学び研究」というコーナーに小・中・高校生の学校外読書時間の全体像を描くという記事を寄稿している。ちなみに『読書と言語能力』は、読書教育に関心のある現場教員の必読本だ。

学校外の読書に関する調査

読書調査といえば全国学校図書館協議会と毎日新聞による「学校読書調査」が有名だ。「最近の子供は本を読まないか」という議論の文脈でよく話題に上がる「不読率」も、この調査のデータをもとに議論される。かくいう僕も、このデータを使って以下のエントリを書いてきた。

読書教育の課題は高校生の「読書クライシス」にあり。

2017.01.08

ただ、この読書調査は「朝の読書」や小学校での「図書の時間」など、学校内での読書時間が含まれている。そこで、今回のような「学校外の読書」に関する調査の意味が出てくるのだ。その調査結果について簡単に紹介したのがこのベネッセの記事になる。

この調査の主な発見は2つ

この調査の主な発見は2つ。

  1. 不読率は、小学1年生の15.8パーセントから始まり、高校3年生の59.5パーセントまで、単調増加している。特に、学校種が切り替わるタイミングで、急激に増加している。
    1. 小→中のタイミング(29.4→37.0, +7.6ポイント)
    2. 中→高のタイミング(43.3→53.5, +10.2ポイント)
  2. 読書時間の分布を見ると、学校外読書では、「不読の山」と「30分以内で読む山」の「二峰性」が存在する。

 

校種が上がる場面での急増、一貫校ならどうなる?

1について、学校内読書を含めた「学校読書調査」に比べて、全体的な不読率が高くなることはある程度予想通りだろう。また、校種が切り替わるタイミングで不読者が急増することも、「学校読書調査」でも示唆されていた。

ここで興味を持つのは、例えば小中一貫校や中高一貫校であれば、校種が切り替わるタイミングでの不読者の急増は防げるのか、ということだ。幼小中一貫校である風越学園の場合は、中学から急に部活が始まることもないので、ある程度防げているのではないかという気もする。こんなふうに、一貫校が持つ校種間の連続性が、不読者の急増を抑える効果はあるのだろうか。

ただ、一貫校であっても、中学に上がるとカリキュラム自体が多かれ少なかれ変わる。例えば風越でも、中学校では「読書家の時間」を実施していないこともあり、中学校になってのライブラリー貸出冊数の数字は低下している。他の一貫校ではどうなのだろう。おそらく、全体として不読者が増える傾向自体は変わらないと思うのだが、少しでも増加を抑えられているのかどうか。一貫校とそうでない学校を比較する調査があればぜひ読んでみたい。

「学校でだけ読む」ことの効果は?

また、今回の調査は、これまでの調査では分からなかった「学校でだけ読む」子の存在を明らかにしたのだと思うが、この「学校でだけ読む」ことの効果はどの程度あるのだろうか、というのも興味深い問題だ。

風越学園(の小学校)では週1〜2の「読書家の時間」があり、そこで学校で読む時間が確保されている。言語能力を伸ばすという観点から言えばこの程度の時間では全然足りないと考える僕は、この「読書家の時間」を足がかりに家でも読むことを期待しているし、言葉にして推奨もしている。しかし、残念ながら、家でも読む子と、奨励されていても読まない子に分かれてしまうのが実態だ。さて、そうなったときに「読書家の時間でだけ読む」子にとって、その時間がどんな意味や効果を持つのだろう。そこもぜひ考えたいところだ。

読み続ける人と不読者、その読書の質の違いは?

さらに2つ目の発見である「二峰性」の問題も興味深い。引用先記事のグラフにあるように、すでに小学校3年生の段階で、「学校外には全く読まない」層が一方の峰を作り、「15〜30分読む」層がもう一方の峰を作るようになる。以後は、前者の峰が大きくなり、後者の峰が小さくなっていく過程と言える。しかし、猪原さんの指摘通り、ポジティブに捉えれば、高校3年生の受験期でさえ、一日30分弱は本を読む生徒が13.7%もいるのである。この2つの面をきちんと見ていきたい。

今後考えたいのは、小学校低学年の段階で「学校外に全く読まない」となってしまう層に、どうしたら読書に関心を持ってもらえるのか、である。そこではおそらく、読まない層と読み続ける層の、それまでの読書生活の質の違いが影響しているに違いない。また、高校3年生になっても読み続ける層がどのような読書生活を送っているのか、そして過去にどのような読書生活を送っていたのかも知りたい。それを知ることが、不読率の上昇を抑えるヒントにもなるだろうから。

もとになった論文&関連論文はこちら

色々と考えるきっかけをくれたこの記事だが、もとになった論文や関連する論文は以下のようだ。いずれも、猪原敬介さんのウェブサイトよりリンクが貼られている。僕はもちろん読まないとね!

読書教育に力を入れている僕や風越学園にとって、読書を科学的に研究されている猪原さんの知見をフォローするのは不可欠のこと。今進んでいる研究の結果が、本のような形にまとまって一般人でも読めるようになるのはいつなのかな。その日を楽しみにしつつ、可能な範囲でフォローしていきたい。

おまけ:関連エントリはこちら

おまけ。これも自分のために読書調査系の関連エントリもこちらにまとめておこう。関心のある方はぜひ役立ててほしい。

読書教育の課題は高校生の「読書クライシス」にあり。

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