ただいま選定中….ブッククラブにあうのはどんな本?

このところ、一日1冊を超えるペースで読書を続けています。理由は、風越学園の国語の授業で実施予定のブッククラブ用の本を選書するため。単に「良い本、読んでほしい本」と「ブッククラブ向きの本」の違いとか、考えることが色々とあって面白い…。

ブッククラブについて学ぶために

ブッククラブとは一冊の本を複数人で読んで語り合う会のこと。これ以降の記事ではあくまで国語の授業で行うブッククラブを念頭に置きますが、「そもそもブッククラブって?」という方には、下記の本をオススメします。

吉田新一郎「読書がさらに楽しくなるブッククラブ」

この本は、良くも悪くも吉田新一郎さんテイスト満載の本。輪読会や読書会との違いなど個人的には首肯しかねるところもあるのですが、ぶれない主張が吉田本シリーズの個性もであるし、何より、大人同士のブッククラブ、メールでのブッククラブ、学校でのブッククラブなど、色々なバリエーションのブッククラブのやり方を書いてくれているので、読者の間口が広いのが特徴です。

この本の個人的ツボは、小学校高学年のブッククラブ(p134-)。ここで使われていた板書の写真が、風越の同僚・KAIさんの字にそっくりなので聞いてみると、やはりご本人でした。で、ブッククラブが停滞しているグループへのKAIさんの介入の仕方が、すごくKAIさんらしい。コンテンツには極力踏み込まず(踏み込んでも切り口を与える程度にとどめて)、「話し合いが深まるためには何が必要なんだろうね」と形を変えて問い続ける。ファシリテーターとしての立ち位置がはっきりしてます。僕には、教員が具体的な読みの視点を与えても話が深まる確信もあるけど、こういうカンファランスもできるようになりたい。

ラファエル「言語力を育てるブッククラブ」

こちらのラファエルのブッククラブ本は、吉田本と比べて「言語技術を鍛えるためのブッククラブ」の側面が強い活動。好みは分かれるけど、個人的にはスキルを活動を通して教える姿勢が徹底しているぶん、アメリカっぽいなと思います。上のKAIさんのカンファランスと違って、内容にも方略にもガンガン介入するのだけど、『時をさまようタック』など具体的な作品を扱ったレッスン例も多く、ブッククラブ運営の参考になることは間違いなし。

渡辺光輝さんの「読書会特設ページ」

本ではないけど、僕の国語勉強仲間のお茶の水女子大学附属中の渡辺光輝さんは、司書の奥山先生と一緒に読書会実践に力を入れていらっしゃいます(下は僕の見学記)。

どうやるの? 課題は? 読書会の授業を見学してきた。

2017.02.22

「個別読書」と「読書会」。二つの読書指導、それぞれの強み。

2017.10.23

渡辺さんのサイトの「読書会特設ページ」は、中学校のブッククラブ運営に有益なリソースがたくさん。これもぜひ。

どんな本がブッククラブに向くのか?

ブッククラブをする上で、「どんな本がブッククラブに向くのか?」はわりと難しいテーマです。前提として、風越は「全員で教科書のように一つの教材を読む」経験が普通の学校よりも少なそうだから、ブッククラブを良い本との出会いの場にしたい。でも、全ての良い本が、その本を巡る対話を誘発するわけではない。また、単に話が盛り上がれば良いわけでもなく、意味のある、価値のある対話をして欲しい。

というわけで、現在はブッククラブで使う本を選定中。同僚のKAIさんや岩瀬さんはもちろん、『読書家の時間』執筆メンバーなど小学校でブッククラブ実践をしてきた皆さん、そして渡辺さんや学校図書館の司書の皆さんなど、東京時代のコネに頼って、色々な本を漁っている真っ最中です。ああ、先達に感謝…!

中でも、KAIさんや岩瀬さんがこれまで小学校のブッククラブで使ってきた本や、お二人のおすすめ本を読むと、「こういう本が外れないのかあ」という線は見えてきます。

  • 読み手が共感できる人物がいる(同じ年頃など)
  • 「共感した」だけで終わらない内容
  • ストーリーに起伏がある
  • 謎があるなど、先を予測したくなる
  • 価値の対立が生じる場面がある

例えば、魚住直子「オレンジソース」やナタリー・バビット「時をさまようタック」なんかは、上記の条件を満たす点でいかにもブッククラブ向き。

とはいえ、上記条件ばかりを重視すると、どうしても主人公の子どもの学校での人間関係を描くものが多くなり、道徳の授業の素材めいちゃうのが難点。描写の綺麗なもの、純粋に楽しめる冒険もの、女の子向けや男の子向けなど、幅広い選択肢が持てるよう考えながら、候補本を読みまくっています。最近読んだ中だと、渡辺さんに勧めてもらった「怪物はささやく」は良かったなー。これはダーク・ファンタジーの傑作。

迷うのは短編の取り扱い。候補にリストアップしてる短編集はあるんだけど、短編だとすぐに読み切ってしまって途中で話し合えないから、やっぱりブッククラブには向かないのかな…。どうなんでしょう…。同じ理由で、教科書作品でのブッククラブもちょっと微妙な感じはしている(1時間くらい使ってブッククラブの練習をするのは良いかもしれないけど)。

スタッフでもブッククラブを実施中…

風越では、スタッフ同士でもブッククラブを展開中。僕のいるグループは、エンリケ・バリオス『アミ 小さな宇宙人』、マイケル・モーパーゴ『ゾウと旅した戦争の冬』、『竹取物語』(角川ビギナーズクラシックス版)と3冊読みました。選書に失敗すると厳しいことを最初の本で学んで(汗)、次はハズレのないマイケル・モーパーゴを。これはリテラチャー・サークル形式で読み、次には古典でもブッククラブできるか試すために『竹取物語』にも手を伸ばした、という流れでした。

中でも竹取物語はやっぱりすごく良くできたお話で、同僚からも「こんなに古典楽しく読んだの初めて」と言ってもらえて嬉しかった。生徒も教科書の一部だけじゃなくて、ブッククラブ形式で全部読んだ方が断然面白いと思います。このブッククラブと並行して、幼稚園担当のスタッフとは『エルマーのぼうけん』を久しぶりに読んだけど、これも動物のキャラクターが立ってて、面白かったなあ。一人で読んでいたら気づかないことに色々と気づけて、それもブッククラブの良さですね。

ブッククラブの楽しさを大人が知ってるかどうかって、とても大事。いよいよ開校が迫って忙しくなる時期だけど、スタッフ同士のブッククラブ、続けていけたらなと思っています。

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