全人教育…公立…気持ちの揺れた9月

今日のエントリは完全な雑記です。僕は今まで自他ともに認める狭い世界で生きてきたので、他の人にとっては当たり前のことでも今更ハッとしたり、気持ちが揺れたりすることがあります。9月もそんなことがあって、結論めいたものは何もないのだけど、今の気持ちを忘れたくないなあと思ってメモしておきます。

写真はハンモックから森の木々を見上げて考えているところ(笑)

「全人的に関わる」ことへの抵抗感

一つ目は、「小学校で働く」ことについて。僕が週1回入っている小学校で、いま、風越のスタッフが臨任で働かせてもらっています。彼は中学校出身なので、この前に会った時に「中学校と小学校を比べてどう?」と聞いたところ、「こちらの方が全人教育的に関われるから、自分には向いてる」との返事でした。これが心が揺れたきっかけの一つめ。

改めて振り返ると、僕にはこの「子どもと全人的に関わりたい」欲望が全くありません。むしろ、積極的にそれを避けたい気持ちの方が強いのです(これは上記の同僚への批判ではありません)。自分の役割を「教科のスキルや見方を手渡すこと」に限定したい。「能力的にそれしかできない」のもあるけど、それ以上に「できるだけ人間の内面に立ち入りたくない」気持ちがあるのだと思います。もちろん、学校教育の目標が「人格の完成」(教育基本法第1条)であることや、どんな授業であれ結果として内面には立ち入ってしまうことをわかった上で、それでもそう思ってしまう自分がいます。

これは、自分が「自分の内面に立ち入って欲しくない」気持ちの裏返しなのだろうと思います。だから担任の影響を強く受ける小学生たちの様子を見ると、「怖いな」という思いが先に立ってしまうし、プロジェクト・アドベンチャーが苦手なのも、きっとこの気持ちと関係しているのでしょう。

とはいえ、精神面や知識面でも教員と対等になれる高校生相手であればともかく、小学生が相手になると、「教科だけ」「教科を通じて」というのは難しくて、全人教育的な要素が強くならざるを得ません。そのことは理屈では納得していますし、全人的に関わった方が良いんだろうなあとも思います。でも同時にそれが嫌だな、苦手だなと感じる自分がいるのも事実。来年以降、学校が始まってから、自分はどう感じるのでしょうか。

 

「選べる」側のメンタリティ

もう一つは、これもまた最近、お昼休み中の雑談の中で、複数の公立校出身スタッフの「公立で働く」ことへの思い入れを聞いたことです。彼らは公立で働いていて、今は私立の風越学園に来ているけど、公立で働くことへの思い入れがある人ばかり。いずれまた…という人もいます。

「どうして公立小で働くことにこだわってるの?」と聞くと、そこにいる子どもたちを見ているから、だそうです。あるスタッフはこうも言っていました。「子どもは環境を選べないからね」。

実は、僕自身は公立小学校の授業が退屈で中学受験をして、それ以降公立とは全く縁のない生活なので、「公立」にも全く思い入れがありません。率直に言うと、教員として働くことに決めた(でもしか教員なので、そうせざるを得なかったのだけど)時にも、「赴任する学校を自分で選べない」時点で、公立という選択肢は最初から除外されていました。

つまり、僕は小学生の頃から常に「選べる」側のマインドを持っていて、最初の赴任校や前任校を選んだ時も、風越学園を選んだ時もそのマインドのまま今も動いているわけです。

さっきの話以上に「だから何?」という話なのですが、ああ、自分って「選べる」ことが当然なメンタリティの人間なんだなあということを改めて感じた一瞬でした。恵まれた環境の、お勉強のよくできる子どものまま大人になってしまった残念感、とでも言えばいいのでしょうか。勤務先を「選べない」時点で公立で働く気は起きなかったので、そこに意義を見出す発言に、かなり隙を突かれた思いでした。副理事長の岩瀬直樹さんはじめ、風越学園には公立出身の先生がたくさんいるけれど、そういった方々の公立への思い、風越学園への思いも含めて、僕にはまだわからないことがたくさんあるんだろうなあと思います。聞いてみたい。

 

繰り返しますが、今回のエントリには何の結論もありません。「自分って教員に向いてないな…」みたいな思いにも囚われますが、それも含めて宙ぶらりんです。でも、この宙ぶらりんを宙ぶらりんのままにしておくために、ここに備忘録として書いておきました。いつかまたこのエントリを僕が見直した時にどう思うのか、その時の自分への手紙のようなもの。いつかの自分に届きますように。

 

 

 

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2 件のコメント

  • 来年、風越学園に入学させたいと考えている小学生の親ですが・・
    >僕は今まで自他ともに認める狭い世界で生きてきた
    狭い世界で生きてこられたのが仮に事実としても澤田さんのお持ちの専門分野をベースにした世界観の深さは素晴らしいものと説明会やワークショップでお話を伺ったときに強く感じています。

    >とはいえ、精神面や知識面でも教員と対等になれる高校生相手であればともかく、小学生が相手になると、「教科だけ」「教科を通じて」というのは難しくて、全人教育的な要素が強くならざるを得ません。
    低学年は、そうかもしれませんが、小学生でも高学年ではそんなこともないのではと自分の子供の経験と今の息子を見ていても感じます。
    個人的には、小学生相手でも、その分野に強みのある子に対しては、中学・高校、それ以上のレベルの澤田さんの知見を子供たちに与えて欲しいなと思います。
    「全人教育的」なことが得意な先生もいて、澤田先生のような専門性を大切にしたい先生もいる、色々なタイプの先生がいるのが風越学園の魅力の一つではないかなと思います。

    • 温かいお言葉ありがとうございます!(入学希望の方との個人的なやりとりは控えたいので、こんな簡単なお返事ですみません…)