添削が効果的に機能する条件(2)

下のエントリの続き。いよいよ本題。添削が効果的に機能する条件について考えてみる。

添削が効果的に機能する条件(1)

2014.10.28

条件1:人海戦術をとれること

これがおそらく最も必要で、かつ困難な条件なのではないか。添削数に比して、充分な添削者の数を確保できること。つまり、人海戦術をとれることだ。

一時期、僕も一人で熱心に添削指導をしていた(二週間に一回課題を出して、80人ぶんくらい添削して返却していた)のだが、今はそのアプローチはとらなくなった。というのも、「一人で添削を頑張る」ことの負担の重さと、それに比しての教育効果の薄さが気になるようになったから。

「一人で添削を頑張る」ことの最大のデメリットは、「フィードバックに時間がかかること」だ。フィードバックに関する研究によると「数週間後の教師の丁寧なフィードバックよりも、生徒同士の即時フィードバックのほうが効果的」であることが報告されている(Gibbs& Simpson(2005) Conditions Under Which Assesment Suppports Students’ Learning)。これは、感覚的にもとてもよくわかる話。例えば一人で160人(40人学級で4クラス)分のレポートを添削するとしよう。一人15分としても合計40時間かかる。毎日2時間ずつ添削しても終わるのは提出の20日後。それではもう遅すぎるのだ。毎日色々なイベントがある生徒にとって、20日前に書いたレポートはもう過去の出来事であって、書いた頃のことを覚えてもいないという生徒も少なくない。これでは、どんなに頑張って添削したところで、効果はたかが知れている。

また、一人で添削を続けていると、当然添削者は疲労していく。疲れるとどうなるだろう。これはあくまで僕の場合で、僕が添削者として未熟なだけかもしれないけど、だんだんと「良い所」を見つけるのが難しくなってくる。欠陥を見つけるのは簡単なので、いきおいコメントは欠陥の指摘が増え、それを読んだ生徒のやる気を削いでしまう。同時に、疲れてくると、一つ一つの文章に丁寧に向き合うというよりは、「あらかじめ用意していたいくつかのコメントのパターンに文章をあてはめる」ようなコメントのつけ方になっていく。これでは、一人一人の文章を読んでいる意味自体薄れてしまう。このような添削の質の低下もまた、個人が頑張りすぎることの弊害だ。

もちろんこのような個人添削の欠陥を防ぐための添削法も提案されている。僕の下記ツイートも、基本的には(1)添削を迅速にし、かつ(2)添削者が疲弊しないための方法だと言える。


これはけっこういい方法だと思う。添削指導をするならこれがお薦め。でも、これでも個人の頑張りに限界はあるので、添削を効果的に行いたいなら、やはり「人海戦術」が一番だ。そのほうが、素早くフィードバックを返せるし、添削者もフレッシュな状態で作文に向き合える。一人で頑張ることの弊害に比べたら、複数人で添削することの弊害(採点基準がずれるetc)は、ものの数ではない。

というわけで、添削をするなら、ぜひ人海戦術で。その態勢が整わないなら、無理して添削指導をせず、添削以外の手段を模索する方がいい。

添削が効果的に機能する条件(3)

2014.10.30

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