色々な人の影響を受けてます。作家の時間&読書家の時間、2022年11月時点のルーティーン

僕の受け持つ5・6年の国語の授業は、基本的に週4回、それに学年ごとに2〜3週間に一回程度の頻度で漢字テストを実施している。通常の小学5・6年生の授業時数(週5回)に比べると少ないのだが、それはまあ仕方ない。ただ、この週4回の授業数もけっこう潰れることが多く、11月に「週4回あるの久しぶりだな〜」と思って手帳を見なおしたら、前に週4回やっていたのはなんと9月半ばのこと、1ヶ月半以上も週4回もできていなかった….。11月はありがたいことに週4回できた週が3回もあったので、この際だから毎回の授業ルーティーンをもう一度整理することにした。ぼくはルーティーンは大事だと思っている。こどもが見通しを持ち、安定して自分から動けるようになるためには、ある程度予想がついていると良い。「今日の国語は何だろう?」とその日ごとに考えるようでは、困るのだ。このエントリでは、11月時点でのルーティーンを、あらためてふりかえりたい。

僕の家の近所に平尾山(平尾富士)という山がある。これが、1時間ほどで山頂につき、佐久平や浅間山を一望できるいい山なのだ。トップ画像は、この秋10月に平尾山に登った時に、御代田町方面に見えた虹。こんなにくっきりとした虹を、しかも山頂から見下ろすかたちで見るのは初めてだった。

 

目次

作家の時間のルーティーン

月曜日は「国語教室通信」とミニレッスン

月曜と木曜は作家の時間。月曜の授業は、「国語教室通信『ことばらぼ』」を一緒に読むところからはじまる。これはりんちゃん(甲斐利恵子先生)が公立中時代に発行していた「国語教室通信」の真似で、今年はもう25号発行してきた。ただ、りんちゃんのと違って、保護者に見てもらうことも意識している。風越は教科書を使わないし、「作家の時間」「読書家の時間」と言われてもなんのことかよくわからない(そして怪しく思う)保護者もいるだろうから、授業の様子をきちんと伝えておくことは大事だと思っている。

国語教室通信に載せるのは、主にふりかえりを兼ねた先週の授業の様子で、ここがメインだが、左端の欄には、今週の授業予定、「ようこそ先輩」に行く人の予定などが載っている。加えて、先週の漢字テストの成績上位者を掲載し、最近では「読書1万ページ」(後述)の1000ページごとのキリ番達成者も載せることにした。こういう「数値」で測れるものの上位者・達成者を表彰するのは「風越らしくない」のではあるが、僕はどんな学校でもその校風も主流の要素と矛盾する要素を意識的に埋め込むことが大事だとも考えている。事実、ここでの表彰が励みになる子も、たくさんいる。

木曜日はミニレッスン

月曜日の残りと、あと木曜日は作家の時間のミニレッスンだ。いまは「視点を変える」がテーマなので、それに関する絵本や本を使ってミニレッスンをしてきた。一人称の視点と三人称の視点の違いについて学んだり、物語の基本的な構造や書き出しの効果について学んでいる。

ミニレッスンの自分の課題

僕の国語の授業にT2として入っているあっきー(木村彰宏さん)によると、僕のミニレッスンの課題は、ティーチングの時間(僕が話す時間)が長いこと。これは石川晋さんの言う「教えたいことがあるのが課題」とも通じる問題なのだが、ミニレッスンまで対話型にするとどうしても時間が長くなり、肝心の書く時間が確保できなくなるので、この時間は僕が話すのが中心になる。でも、そうするとどうしても「聞けない」子が出てきてしまう。

教えたいことがあるのが課題。久しぶりに石川晋さんに授業を見てもらう。

2022.09.17

その「聞けない」子への対応にも課題がある。あっきーが言うには、聞けない子はどうやっても聞けない。だから、「静かにしよう、聞こう」と注意されても直らない。だとしたらその子でも答えられそうな質問をして、「注意された」体験を、答えて「褒められた」体験に変えるだけでもだいぶ変わってくるのでは、という。「聞いてない子に「ちゃんと聞いてね」と注意するのではなく、参加してもらってポジティブなフィードバックを返すこと。失敗体験ではなく、成功体験を積むこと。そうありたいと頭ではわかっていても、なかなか難しい。でも、僕の話を聞かないでおしゃべりやおふざけをしている子が気になるのは、僕の側の問題でもある。改善できたらな、と思う。

作家の時間の終わりはAuthor’s Talk

作家の時間は、ミニレッスンのあとは各自で書く時間になる。そして最後の5分は、月・木ともAuthor’s Talkの時間。要は、「共有の時間」である。実はこれまではずっと、僕がカンファランスの時間に見つけた子どもの良い作品や良いプロセスを共有していたのだけど、つい最近から、それをやめて、「作家の椅子」形式にした。授業の最後に、その日のトランプで自動的に決めた子に前に出てきてもらい、「いまどんな感じか」「どんなところを頑張っているか」「どんなところに苦労しているか」「これからどうしたいか」などを、2分程度の時間、僕のインタビューに答えて話してもらう。そして、全員がその子に付箋で励ましのコメントを書いて渡す。

このやり方に変えたのは、誰かの優れた点を共有するのではなく、どの子のどのプロセスにも学びや価値があり、正解や不正解はないことを伝えたかったことと、誰かの書くプロセスを他のみんなで聞いて、そこに温かいフィードバックを返す時間を積み重ねたかったからだ。技術を共有する(うまく書く)ことよりも、書き手のコミュニティづくりに重きを置いた結果で、筑駒時代から「作家の椅子」は全くやってこなかった僕にしては、けっこう大きな変化である。

読書家の時間のルーティーン

「ようこそ先輩/読み聞かせ」で始まる火曜日

火曜日と木曜日は読書家の時間。火曜日は、隔週で8・9年生の先輩を教室に招き、「いま読んでいる本」や「5・6年生の頃に読んでいた本」について語り、最後には5・6年生からの質問に選んで答えてもらう「ようこそ先輩」。これは自分で言うのもなんだけど、異年齢を活かしたなかなか良い企画で、基本的にどの先輩も良い本を紹介してくれるし、それに興味を持つ子も多い。読書嫌いの木工好きの子が、同じく木工好きの先輩が紹介した本を手にとる場面もあり、読書を学校の文化として根付かせていくための重要なチャンネルの一つだな、と思っている。ちなみに、いまは6年生も3・4年の教室に火曜日に「ようこそ先輩」に行っている。

「ようこそ先輩」ではない週は、僕の絵本読み聞かせからスタート。本当はもっとやりたいのだけど、二週間に一回になってしまう。今はあの「あらしのよるに」シリーズを読んでいるところ。このテキストの力はすごくて子どもたちの反応はとても良いんだけど、あっきー(木村さん)の提案で、次回からはもう少し対話型にしようかなと思う。僕にその自覚はなかったのだけど、「ようこそ先輩」はどうしても「読める子・読書が好きな子向け」になりやすい。だとしたら、こちらの読み聞かせは対話型にして、あまり読書が好きではない子にも答えてもらって承認される機会にしたほうが良い、とのこと。なるほどな、と思う。

りんちゃんの「読書1万ページ」真似してます

「ようこそ先輩/読み聞かせ」が終わると、各自で本を読む時間になる。そして、火曜日の終わりは、読書1万ページ。これはりんちゃん(甲斐先生)が公立時代からやっていて、今も風越の中学校でやっている読書記録の実践そのままで、用紙まで同じものを使わせてもらっている。ただ、中学生と違って「読書家の時間に各自で書いて週1回提出してね」が通用しない。書かない子が続出したので、10月からやりなおすつもりで、記入の時間枠をきちんと用意することにして、欠かさず回収し、キリ番に到達した子が「国語教室通信」に掲載することにした。そうしたら、ようやく動き出した感じ。小学生は、まだまだこういうサポートが必要なんだな。数値に踊らされている子もいるけど、それは承知の上。読書の質なんて、まずは多読をしてからの話だ。どんどん読んでもらいたい。

読んで体得、音読からはじまる金曜日

金曜日の読書家の時間は、音読・暗唱からはじまる。これもりんちゃんの持っている齋藤孝の音読本を使わせてもらい、スタートしたもの。基本的に僕が論理思考で頭でっかちなので、単純に声に出して読む、身体性に訴えかける部分が、これまでの僕の授業には少なすぎた。その点、りんちゃんは明らかに体育会系で、その要素を取り入れることにした。ミニレッスンの時間を使うことには迷いもあったが、今の所、いい感じだ。りんちゃんが音読のときにやる「ホワイトボードの文字を徐々に消していく」やり方が盛り上がりにつながるし、声に出して文章のリズムを体得するいい機会だと思う。

下記エントリに書いた土居さんの音読本を読んでからは、教科書の説明文を音読するのもやってみた。せっかく配布するのだし、こんなふうに教科書を使うのも悪くないな、と思う。(「教科書を使わない=ちゃんとやっているか心配」と保護者の方が思いがちなのも当然なので、そういう不安対策にもなるかな。まあ、自分も作り手の一員の教科書だしね…)

[読書]音読指導の「あり方」から「やり方」までを具体的に。土居正博『クラス全員のやる気が高まる!音読指導法』

2022.11.19

ただ、音読をするようになった結果として、読書家の時間では「読む技術」のミニレッスンができなくなった。ただ、もともとを考えたら、僕は「読む技術やメタ認知の技術を言語化して教える」ことよりも、アトウェル式に読書への没頭を重視する派である。だから今の所は納得して、音読優先でいいかな、と考えている。

「話す・聞く・メモをとる」の練習の場、ミニブックトーク

金曜は音読のあとに「読む時間」をとり、最後の10分は「ミニブックトーク」。これは、昨年9月にちょんせいこさんに助言をもらって以来、続けているものだ。ホワイトボードミーティングの「ペアトーク」を「ブックトーク」に適用したもので、当時はペアだったけど、いまは3人組でやっている。話す人、書く人、聞いて質問する人の3つの役割に分かれて、「話す練習」「相手に反応しながら聞く練習」「聞きながらメモをとる練習」を繰り返している感じ。一番重視したいのは、相手の話をきちんと聞く経験、自分の話をきちんと聞いてもらえる経験を積み重ねることで、読み手のコミュニティを作っていくこと。でも、総合的に国語の力を伸ばす練習にもなるし、一週間で2冊の本と出会う機会にもなるので、筑駒時代にやっていた「全員の前でのブックトーク」よりも気に入っている。

夏休み明けから体制が変わって一ヶ月、2021年9月末の自分の現在地。

2021.09.25

読書家ノートは書けていない…

ただ、ミニブックトークをやるにはジレンマもあって、本当は「読書家ノート」も書きたいのだが、時間が確保できずに書けていない。夏前はやっていたのだけど、秋からはほとんどノートを書く時間を確保できておらず、中途半端になってしまっているのだ。もちろんノートに書いてアウトプットし、交流する機会も持ちたい。でも、今はその時間がないかなあ。ここは課題である。普通の小学校と同じく、週に5時間あれば書けるのだけど…。

[読書]交流のハブとなる読書記録指導。細恵子『児童の読書力を形成する読書日記』

2022.02.26

月・火・木は授業前の漢字クイズも

以上の「作家の時間」「読書家の時間」のルーティーン以外にも、音読のある金曜日を除いた月・火・木は、朝イチで僕がホワイトボードに漢字クイズを書いておき、時間前に来た人からそれを考えてもらう「ミニ漢字クイズ」も用意している。これは、やはり昨秋の風越訪問時にちょんせいこさんから「時間通りに来た人を待たせないことが一番だいじ「遅れて来た子をわざわざ注意して、早くから来た子にまでそれを聞かせて待たせるのが一番よくない」と助言を受けて、なにか授業前からできることを考えていたところに、山川晃史先生の漢字ゲーム講座に出会って、今年の春からずっと実践していることだ。

時間の都合もあって山川先生の「漢字ゲーム」というより「漢字クイズ」になってしまっているけど、これはけっこう手応えがある。何より、この漢字クイズのおかげで時間よりも早く来た子に損をさせないのがいい。全員が揃ってなくても時間ぴったりになったら、さっさと漢字クイズの答え合わせをはじめている。これを毎回繰り返すことで、遅刻自体もだいぶ減ってきた(当たり前のようだけど、チャイムのない風越では5分遅れくらいになるのが当たり前なのです…)。

この漢字クイズには、熟語の構成、さかさ熟語、部首などさまざまな形態があり、複雑な漢字が単純なパーツの組み合わせでできていることへの理解や、形声文字は音符と意符からできていることへの理解は、少しずつ浸透している。最近では、子どもたちにクイズを作ってもらい、そこから出題もできるようになった。こういうのが中学の漢字学習にもつながってくると思う。

けっこう、色々な人の影響を受けているなあ…

というわけで、現在の「作家の時間」「読書家の時間」のルーティーンを書き出してみた。あらためて書いてわかるのは、去年から今年にかけて、僕はけっこう色々な人の影響を受けている、ということだ。同僚のりんちゃん(甲斐利恵子さん)からは、「国語教室通信」や「読書1万ページ」、音読を真似させてもらっている。あっきーにもミニレッスンや読み聞かせのフィードバックをもらっている。他にも、ミニブックトークはちょんせいこさん、漢字クイズは同じくちょんさんと山川晃史さんの影響だ。いずれも感謝感謝である。

なかでも、直接授業を見られる機会はなかなかないとはいえ、同僚のりんちゃんの存在は僕には大きい。彼女が風越にいる間にできるだけ多くを学びたい思いはもちろんだが、「自分の受け持ちの5・6年生を、甲斐利恵子に手渡しても恥ずかしくない状態にしたい」という見栄?対抗心?プレッシャー?も自分の中には正直ある。でも、あすこま→甲斐利恵子というリレーは、きちんと機能すればかなり強力なリレーになるはず(というくらいの自負は僕にもある)。「作家の時間」「読書家の時間」を通して、読むことや書くことに前向きな気持ちであること。漢字も含めて、言葉を楽しんで学ぶ構えを持っていること。学習者同士の関係が豊かな状態であること。このあたりをゴールに見定めて、残りの4ヶ月(授業ができるのは実質3ヶ月)を過ごしていきたい。

 

 

 

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