読書家の時間「ノンフィクション月間」の振り返り

久しぶりにゆったり読書できた冬休みを終え、軽井沢風越学園の新学期が始まった。今学期も色々とやりたいことはあるけど、最初の授業でやったのは、昨年11-12月にやった「ノンフィクション月間」(ノンフィクションを重点的に読もうと呼びかけた月間)で集めた本を本棚に戻すこと(笑) というわけで、今回のエントリはその「ノンフィクション月間」の振り返り。

写真は外に出るのが寒いので家の中から撮った庭(汗)…写真のストックを増やさないとな….

目次

ノンフィクション月間を設けた理由

小学高学年から中学生くらいの子たちに、ノンフィクションに親しんでもらうこと」は、僕の以前からの関心事。一つには、国語力の観点から。読む力を伸ばすには「好きなものをたくさん読めばいい」ではなくて、「自分にあった語彙レベルのものを、幅広く、たくさん」読む必要がある。これは、読書教育研究でも指摘されていること。物語とノンフィクションでは語彙も全体の構造も違うので、物語だけ読んでいても読む力が高まりにくいのである。そして、高校の教科書になると一気に「現代思想」めいてくる教科書の評論の難しさに、そのままでは太刀打ちできないのだ。だからこそ、中学生までで社会的な話題や抽象的な議論に少しでも慣れておきたい。

速く正確に読むにはどうしたらいいの? 研究が示唆するまっとうすぎる方法とは。

2017.06.01

もう一つの理由は、読むことを通じてそれまでの景色が違ってみえる経験を、思考も柔軟で社会性も身につけつつある10代の子にたくさんして欲しいから。僕自身、中高時代は物語よりもノンフィクション読書が多い子供だったけど、本を読むことで世界が広がる経験は確実にある。

ただ、「読書=物語を読む」と思っている子はとても多い。物語以外を読む場合は写真が中心の図鑑がほとんどだ。ノンフィクション読み物に出会う機会はとても少ない。

という動機でやってみたノンフィクション月間、生徒たちの振り返りも読んでみて、出会いの一つの場になった一方で、まだまだ改良の余地がありそう。簡単に振り返っておく。

成果は、とにかく出会いの場になったこと。

今回、なかなか手を出しにくいノンフィクションとの出会いの場になったことは間違いない。振り返りを読んでも、「初めてノンフィクションを読んだ」という子が圧倒的で(少なくとも自覚的にはそうなのだろう)、自分では手に取らないのである程度スタッフからお勧めされたことがプラスになったという感想が多かった。広い風越の図書館から彼らが読めそうなものを200冊くらい集めてコーナーを作ったのが良かったかな。

一方で、課題も多い…

「出会いの場になった」ことは良かったけど、一方で課題も多い。思いついたままあげてみる。

ノンフィクション読書を日常に定着させるには…?

今回のノンフィクション月間で生徒が読んだノンフィクションの冊数は1〜4冊程度。この読書スピードを考えると、1回ノンフィクション月間を設けたくらいでは分量的には少なすぎる。もっと日常の中にノンフィクションの読書を定着させたいし、そのためには、「毎日30分は読書する」を定着させる必要がある。これ、呼びかけてはいるけど、実際にはやっていない子がけっこういるんですよね…。

あと、日常会話や他の授業の中で世界に関心を持ってもらうのも大事そう。時事問題やニュースについて積極的に子どもたちに話すとか、子どもの関心を学校の中だけに閉じさせないようにすることが、ノンフィクション読書にもつながる気がするのだ。

理解度チェックの必要あり

振り返りを読む限り、生徒にとってノンフィクションが読みにくいのは、残念ながら本当なのだろう。今回も「言葉が難しい」「知らない言葉が多い」「物語の方が好き」「勉強になるのはわかるけど、物語のように先が楽しみということはない」という反応が少なからずあった。今回のカンファランスは要約をしてもらうことが多かったのだけど、ピンとこない回答もあった。そういう時に、音読を含めてもっと理解度チェックに力を入れれば良かったのかも。あまり口頭試問っぽくなるのも嫌だったのだけど、子供達の理解度の確認がおろそかになっていた可能性がある。

自分の読書の引き出しを増やすこと

そもそも、リーディング・ワークショップをやるスタッフは、物語よりもノンフィクションを優先して読んだ方がいい。なぜなら、物語は子ども同士のおすすめが機能するけど、「そもそも読んでない」「守備範囲が子どもによって違う」ノンフィクションは、子ども同士のおすすめが機能しにくいから。

でも、これまでの僕の読書レベルは「岩波ジュニア新書以上」で、正直、小学6年&中1の子には難しすぎて….。今回、「知識の森」シリーズとかポプラ社ノンフィクションとか、新しいシリーズに出会えたことはとても良かった。でも、それらの本を読むところまでいけなかった。これは自分の読書不足だなー。今後は岩波書店から「岩波ジュニアスタートブックス」が刊行されるようなので、それも期待大。こういう本を読んで、お勧めできるようにしたい!

「ノンフィクション月間」がなくなるように。

本当は「ノンフィクション月間」自体がなくなるほど、ノンフィクションの本を読むことが子どもたちにとって当たり前になるといい。でもそれは理想論で、当面はまた集中的にノンフィクションを読む月間を設ける必要があるんだろうな。まずは、今回の生徒の振り返りが、彼らが興味あるジャンルや話題を集めたから、それをもとに本をおすすめしよう。

 

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