僕は妻と二人の子供(息子8歳、娘10歳)という家族と一緒にイギリスに一年間留学した。この「家族で留学」は僕にとって非常に大きな経験だったので、締めくくりのこの時期に振り返っておきたい。もし同じような状況の方がいたら、参考にしてください。
目次
もともと単身留学の選択肢はなかった
もともと僕一人で留学する選択肢はなかった。というのも、僕も妻も「家族はいつも一緒にいよう(離れ離れはイヤ!)」派だったからだ。ただ、やはり心配は子供。いきなり言葉のわからない外国の学校に入るわけだし、エクセターには日本人補習校もない。「まあ最悪、一年間家で引きこもっていればいいのよ。一年たてば日本に帰れるから」という妻の言葉で、ずいぶん気が楽になったのを覚えている。
家族留学の良いところ
夫婦の絆が深まる
以前にも下記エントリで書いたことだが、家族で留学して一番よかったのは、夫婦の時間ができたこと。これは単に僕が学生で時間があるからというだけでなく、お店が閉まるのも早いイギリスは、もともと家族との時間を大切にしている国なのである。まあ留学生仲間の各国の事情を伺うに、むしろこの点は長時間労働がデフォルトの日本がひどすぎ…という気もするのだが。
一緒に台所でお弁当作りや洗い物をする時間や寝る前の時間など、夫婦のコミュニケーションはとても増えた。また、初めての海外生活での様々な困難に夫婦で対処しないといけない。そうなれば仲も良くなるというもの。結婚14年目で、僕たち夫婦は今いちばん仲が良い。というわけで、倦怠期のご夫婦がいたら家族で留学をお勧めします(笑)
子どもと過ごす時間が増える
夫婦同様、子どもと過ごす時間も確実に増える。毎日、夕食を子どもと一緒に食べるなんて、日本ではなかなか難しい。また、下記エントリで書いたように、イギリスの小学校は毎日親が学校まで送って行かないといけないので、その時間が貴重な家族の時間だった。10歳の娘はもうそろそろ男親の僕からは離れていくだろう。そうなる直前の時期に、手をつないで一緒に歌を歌ったりクイズを出したりしながら学校に行けたのだ。この日々は本当に貴重だったと、きっと何十年も後まで、僕たち夫婦は振り返るはず。
個人的には、この2つだけでも本当に家族で留学してよかったと思う。僕たちの家族は、この一年間とても幸せでした。僕も30代で最良の一年でした。
子どもの成長が楽しい
家族で留学される方は、子どもの成長は見ていて楽しいと思う。特に英語。よく子どもは語学の吸収が早いと聞いていたけど、実際に目の当たりにして驚いた。一年前は周囲の言葉がまるでわからず「Yes/No」しか言えなかった子どもたちが、地元の公立小学校に行って、放課後も家族寮のお友達と遊んでばかりいたおかげで、英語を驚くほど身につけたのである。今では2人とも、巻によっては700ページくらいある「ハリー・ポッター」シリーズを楽しんで読んでいる。まあ2人とも、特に息子(8歳)は年齢的にも帰国したらすぐに元に戻るかなという気もするけど、できれば少しでも残るように働きかけたいなあ。
また、英語以外にも、子供達が様々な国の文化や言語に少しずつ触れることができたのが良かった。これは後で「家族寮に申し込もう」の欄で書きます。
精神的に安らぐ
異国生活は何かと困ることもあるし、英語を使っての勉強には苦労や不安がつきまとう。僕も自信のない状態が続いていたので(下記エントリ参照)、家族がいることは大きな精神的な安らぎになった。僕も家族のおかげで乗り切れた面が大きい。
家族留学の大変なところ
キャリアや年収に影響が大きい
一番大きなデメリットは、一方が留学するためにもう一方が仕事を退職(あるいは長期休職)しないといけないということだろう。我が家はもともと妻がフルタイム勤務ではなかったのだけど、結婚相手のキャリアや家計を重視される方は、当然「単身留学」という選択肢も現実的なはず。あ、あともちろん家族みんなでとなると、留学先でのお金もかかる。あすこま一家は特に稼ぎが良いわけでもないので、もうマイホームとか、色々なものを諦めている。これは人生の何に優先順位を置くかという問題だと思う。
勉強時間が十分に取れない
当たり前だけど、単身留学と違って自分の時間は思うようには確保できない。特に、イギリスの小学校は必ず親が送り迎えをしないといけないので、朝の9時前や午後3時半頃は子どものために親のどちらかが時間を割く必要がある。僕は家族寮仲間の中では「いつも勉強している」と言われる方だったけど、それでも平均したら勉強時間は毎日10時間には届かなかったはずだ。子どものことがなければもっとできるのに、と思うことはたくさんあった。
英会話力が伸びにくい
僕の英会話力は残念ながらあまり伸びなかったのだけど、その要因に「家族がいるので家で日本語を使ってしまう」ことがあった。結局英会話は経験値がモノを言うので、イギリスにいたって英語を使わないと当然ながら伸びないのである。僕の毎日は、基本的に図書館で論文を読むか課題を書くかして、帰宅したら日本語で話すという日々だったので、イギリスにいながら英語をほぼ話さない日々が多かった。これが単身留学なら違ったかもとは思う。
家族連れ留学の方へのアドバイス
家族連れで留学する場合は、やっぱり小さなお子さんがいると色々と心配だろうと思う。たまたまうちの子たち(8歳、10歳)と同世代のお子さんがいるご家庭には、参考になるかも。
家族寮に申し込もう
今回、あすこま一家はエクセター大学の家族寮に入ったのだけど、これがとても良かった。家族寮には色々な国から同じような年代のお子さん連れの家族が留学にやってくる。中国、韓国、オマーン、インド、コロンビア…そういう、多国籍のご家庭と子どもを介して交流の場を持てるのは大きなメリットだ。我が家では妻が大活躍してくれて、ハロウィン、七夕、ひな祭り、節分など、色々な行事を他のご家族を巻き込んで催したり、お互いの国の料理を作りあったり。
もちろん子どもが色々な国に友達を作れるのも家族寮の大きなメリット。イギリスでは、放課後に子どもが自分達だけで自然発生的に遊ぶことがない(下記エントリ参照)。言葉がわからない状態だと「一緒に遊ぶ友達作り」も大変なはず。家族寮に入れば、同じ異国体験の苦労を共有する友達が簡単に作れる点がとても素晴らしい。
また、そういう交流の中で子どもを色々な文化に触れさせることができる。例えば、うちの娘の一番のお友達はインドから来た同い齢のイスラム教徒の女の子。彼女とのお泊まり会を通じて、ムスリムの子が夜10時や朝4時にも起きてお祈りしていることや、ラマダーン(断食)がどんなものなのか経験できたことは、うちの娘にとってもとてもよい経験だったと思う。
そういうわけで家族寮、おすすめです!
最初の3ヶ月は厳しい
うちの子たちは、どちらも最初の2ヶ月くらいは学校に行くのを嫌がった。特に、日本の小学校では「優等生」タイプだった娘(10歳)はいきなり劣等生になって精神的に厳しかったみたい。どうしても行きたがらずに学校を休んだことが娘・息子それぞれ一回ずつ、校長先生と面談したこともあった。でも、これは言葉がわからない世界に放り込まれるので、当然だろう。とにかく3ヶ月は辛抱の時期かも。それを過ぎたら、子どもは本当にたくましい。
「言葉を介さない趣味」があると良いかも?
うちの娘はダンスが、息子はチェスが好きだった。先述のように当初は苦しい時期だったので、街でダンス教室とチェスクラブを探して通っていた。言葉をあまり必要としない趣味があると、それが苦しい時期の支えにもなるし、それを介したコミュニケーションも始まる。僕も、後半エクセターウクレレクラブに通ったことが、ずいぶんリフレッシュになった。たまたまだけど、こういう趣味があって良かったなと思う。
家族留学、優先順位を考えて検討を
単純に学業や費用のことだけ考えると、おそらく一人で留学したほうが良い。英語力もその方が上がりやすい。でも、家族での留学は、家族にとって大きな経験だし、家族一緒に過ごす時間も増える。それが、家族の絆を強めてくれる。また、異文化の中で成長する子どもの姿を見るのは大きな喜び。あなたやあなたの家族にとってどの要素を優先するかを考えて、良かったら家族での海外留学も検討してみてください。
奥さまから、このブログのことを教えていただき、読んでいます。
いよいよ帰国ですね。
約二週間前に帰国しましたが、エクセターの涼しさが恋しいです。
ご家族での留学は本当にいい決断をされたなとは思います。Hちゃんと弟君、そして、奥さまがうらやましいです。
私の海外初体験は14歳の夏休み。アメリカでの1人ホームステイでした。
そこで刺激を受け、この仕事を選んだんだと思います。
せっかくの機会を無駄にしないように、ぜひ、帰国後もお子さまには英語に触れる機会を与えていただけたらなと思います。
残念ながら、日本では英語が苦手だとか嫌いだという子供たちもたくさんいるのが現状ですからね。
長々とコメントしてしまい、すみません。
残りのイギリス生活満喫してください!
コメントありがとうございます!もうお仕事始まってますか? 僕も帰国した翌々日からもう会議&打ち合わせが3つも入って、あっという間に現実に引き戻されそうです。僕も英語が苦手で数年前に一念発起して勉強を始めた方ですが、子どもは本当に成長が早いですね。日本でもSkype英会話くらいは家族皆で続けようかなと思っています。それでは!