授業前の漢字クイズ、はじめました。「楽しく」と「ちゃんと」の両立を目指そう。

今回のエントリは、先週からはじめた授業前のちょっとした工夫について。その工夫は、なんのことはない、授業前にホワイトボードに漢字や言葉のクイズを書いておく。ただそれだけのこと。でも、そこにいたるにはけっこう時間がかかったなあというお話です。

写真は烏帽子岳。小ピークの小烏帽子から山頂への稜線が気持ちよかった。烏帽子・浅間火山群の最西端に属する山で、もともとはこのへんが火山だったのが、だんだん東に移動して、今は浅間山(前掛山)が火山になっているそうだ。

「ちゃんと」「きちんと」を「楽しく」に変える

去年の秋、ちょんせいこさんに風越に来てもらったことがある。ちょうどコロナ禍で56年ラーニンググループの中ですごすことが多く、集団の中で乱暴な物言いなども目立ってどうしたらいいのか迷っていた時期で、ホワイトボードミーティングのレクチャーと、スタッフへのフィードバックに来てもらったのだ。

そして、一日授業を見てくれたちょんさんが、グループ全体へのアドバイスとは別に、僕個人に次のようなアドバイスをくれた。自分の改善点としてメモしておいたものを掲げておく(ここは、風越全体ではなく僕個人へのフィードバックなので、書いてしまって良いと判断して書くことにする)。

  1. インストラクションに改善の余地がある。小学56年生に波長のあったインストラクションがあるはず。
  2. 子どもたちが思わずやりたくなってしまうようなインストラクションをする。
  3. 注意・指導的な言葉をなくす。「ちゃんとやろう」「きちんとやろう」を「楽しくやろう」に変える
  4. うるさい時に、静まるまで待ったり、静かにしなさいと言ったりしない。該当の子にはできるだけ視線だけで話す。
  5. 待ち時間の積み重ねが学級崩壊を起こす。やれる人たちが待たされないことが大事。やる気のある子たちが授業にそっぽを向くと崩壊しはじめる。

ちょんさんの言葉は、どれも「なるほどなあ」と思ったが、「難しいなあ」と感じることでもあった。ちゃんとやってない子にはどうしても「ちゃんとやろうよ」と言いたくなるし。でも、当時を振り返って、注意するコミュニケーションの積み重ねはやっぱりよくなかったなと思う。例えば、全員で集まるべきところをだらだら遅れてくる人たちがいる。また、スタッフが話す場面でうるさくして話を聞けない状態になってしまう子もいる。そういう時に、「みんなを待たせてるよ、もっと早く来なさい」「これだと話せないよ、静かにしよう」と注意したところで、その子たちが次に早く来たり静かにしたりするわけではない。むしろ、その子たちを注意する時間のぶん、他の子達はさらに待たされて「その注意、全員じゃなくて当人にだけ言ってくれないかな」とイライラしてしまう…という悪循環。

これまで僕が教えてきた中学生や高校生は、ちょっとしたことなら(内心はともかく表面上は)我慢してくれるので、自分はそこに甘えていたんだろう。小学56年生相手の話し方ができてなかったんだな。今年は56年生を受け持つのも2年めだし、下記エントリに書いたようにお手本も身近にいるので、小学56年生向けの自分の態度の調整を頑張っていきたい。

この一年、「子どもたちの人間関係づくり」を学んでいきたいな、と思えた一週間でした。

2022.04.24

その一つとして、あっきーのインストラクションを参考に、先週から授業前にホワイトボードに漢字クイズを書いておくことにした。チャイムのない風越、どうしても全員がそろうには時間がかかる。それを待っていると早く来た人が損をするし、かといって遅い人を注意するのも悪循環。そこで、ホワイトボードに漢字クイズを書いて、早く来た人が問題を解けるようにした。「漢字しりとり」「漢字の足し算」「漢字版・私は誰でしょう」「漢字穴埋め」など、部首をもとに考えたり熟語を答えたりするシンプルなものばかり。それでも授業の最初にちょっとした話題になるし、遅く来た子が、自然と「次は早く来よう」と思ってくれたら嬉しい。そして、一年間続ければ漢字の力にもつながるはずだ。これはもちろん、山川晃史先生の漢字ゲームの講座を受けたことにも影響されている。

漢字学習のゴールは何か?山川晃史さんの漢字ゲーム講座@川崎国語同好会に参加して

2022.02.12

漢字クイズの元ネタは、山川先生に教わったもののほか、ブログに何度か出てくるこのシリーズやこの本を使っている。

 

一方で、「ちゃんと」「きちんと」も大切に。

一方で、「ちゃんと」「きちんと」の部分を支えるために、授業規律やルーティーンも大切にしたいな、と思っている。「子供のしたいを大事に」を掲げる風越では、えてして授業規律がゆるみがちだ。そのゆるみの積み重ねが、悪くすると、常に8割や9割の力で学習に向かう感じになってしまう。本当は、全力のちょっと先まで頑張ることで力がつく。そのためには、みんなが集中できる環境づくり=授業規律って、一周回ってやはり大事だと思ってる。

そして、ルーティーン化できることはできるだけルーティーン化。何曜日に何をやるか、持ち物は何か。それを明確にして貼り出し、授業の最初にやることも変えない。空間が流動的で定型パターンが少ない風越においては、パターン化やルーティーン化は子どもの安心の拠り所にもなる。安心できることで、学びにも没頭しやすくなるはずだ。

こういう姿勢は、一見「注意しない」と矛盾するようだけど、「静かにしなさい」ではなく「聞いてくれてありがとう」と言ったり、「頑張ろう」のあとに「こんなに頑張れたね、すごいね」と言い続ければ、矛盾もないはず。「楽しく」と「ちゃんと」。どうしたらこれを両立させられるか。書いてみるとなんだか当たり前すぎることだけど、小学校教師としての基本ができていないのも自分の現実。楽しく、ちゃんと、試行錯誤していきたいな。

 

 

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