この一年、「子どもたちの人間関係づくり」を学んでいきたいな、と思えた一週間でした。

軽井沢風越学園の2022年度は、「風越づくりキャンプ」で始まり、翌週から学習単位であるラーニンググループで過ごす時間になった。僕は今年も小学校5・6年生を担当。去年も5・6年生を受け持っていたので、半分は知っている子たちになる。受け持ち学年の同僚はがらっと変わって僕が最年長になったのだが、こちらもとても頼もしい人たちばかり。もともと人をまとめたり人付き合いをしたりが苦手である僕は、年齢だけで学年主任的立場になるのめっちゃ嫌だな―と正直思っていたのだけど、みんなガシガシ自分で動いてくれる人たちで、そんな心配は杞憂に終わりそうだ。忙しくも楽しいスタート。今日はそんな一週間の雑感エントリ。

写真は4月中旬に行った群馬県の浅間隠山(あさまかくしやま)から見た浅間山。4月1日には雪が降ったし、一週間前までは浅間山にもだいぶ雪があったのに、一気に溶けていました。春だねえ…

人間関係づくりに力をそそいだ一週間

この一週間でいちばん「すごいな」と思ったのは、同じ学年受け持ちの木村彰宏さん、風越では「あっきー」と呼ばれる同僚のPA(プロジェクト・アドベンチャー。体験から気づきを得るプログラム)のファシリテーションだ。彼は風越で働きつつも個人としてもコーチングのコーチやファシリテーターとして幅広く仕事をしている忙しい人なのだが、大事な最初の一週間で、学年の目標である「安心・安全な場づくり」に向けてぐいっとみんなをひっぱっていってくれた。また、この週は、サポートスタッフとして56年に関わってくれるKAIさん(甲斐崎博史さん)にも支えられた。すでに下記の著書があるKAIさんがPAの達人であることはすでに知っていたのだけど、KAIさんが様々なアクティビティの引き出しから適切なものを選んで場を温めてくれたり、木村さんの関わり方を僕らに向けて言語化してくれたりしたのがありがたかった。

自分と「人間関係づくり」との距離

多くの子は、こういう活動に喜んで参加する。実は僕にとって、それは驚くべきことだ。知っている人はよく知っているのだが、ぼくは「クラスがひとつになる」という目標や、そのもとで行われるこの種のアクティビティが、本当に苦手な人である。別にそのデメリットを冷静にとらえて批判的に見ているわけではなく、一人の人間としてどうにも生理的な嫌悪感が先走ってしまう。特にPAに対しては、人間関係を操作される気持ち悪さを強く感じていて、風越が開設前の2019年4月後半、2日間の予定で設定されていたプロジェクト・アドベンチャープログラムの、一番最初のアクティビティでリタイアして年休をとり、妻に介抱されつつ「大変な職場に来てしまった….」と思ったこともあった(←これ、ツイッターでは愚痴ったけど、たぶんブログに書いたのは初めてじゃないかな)。風越にもこういう活動に入れない子がいるのだけど、僕のシンパシーははっきり言って完全に「そっち側」にある。

だから、「人間関係づくり」的な視点は、もともとの僕にはない。これは筑駒時代の授業を見に来た石川晋さんとの話を通じて自覚を深めたけど、子どもの人間関係を授業に利用することに忌避感すらある(その時の話は下記エントリ参照)。

ライティング・ワークショップ実施中。生徒にどう働きかけるか?という問いをめぐって。

2018.09.16

でも、子どもが安心してのびのびと学ぶ上で、人間関係づくり(それは、どう言い繕っても、「大人の意思で子どもの人間関係を操作すること」である)の視点と技術は、やはり大切なのだと思う。それを実感したのが去年だった。安心してその場にいられないと、他者からの批判の目が気になって学ぶことに集中できない。失敗が怖くて挑戦もできない。すでに6月の時点で下記エントリのような問題意識を抱いていたのだが、その後の10ヶ月を通して、どうだったのだろう。手応えよりも難しさ、自分の力量のなさが手元に残った気がする。気持ちはあったのだけど、技術が足りなかった。我慢できずについ叱ってしまう場面も多くなってしまった。

子ども同士の関係性を見る/育てることについて

2021.06.19

風越でできる力量形成って….?

この一週間の木村さんやKAIさんは、さまざまなアクティビティを知っていて、それを使うタイミングを「見る」目があったのももちろんだけど、何気ない日常の場面でも、子どものちょっとした良い点を見逃さず言語化する声掛けを欠かさなかった(これは、他の56年同僚も同じだったと思う)。つまりは、PAをやるやらないに関係なく、「小学校の先生」としては力量の足りない自分が学ぶべき点がたくさんあった

でも、一方でそう思いつつも、木村さんやKAIさんが言っていること/やっていることが、自分からとても遠いというわけではない。「これは国語の授業だとこういうことだよな」という「置き換え」ができる場面もいくつかあった。図工のこぐまさんとのやりとりでも感じていることだが(下記エントリ参照)、僕にとって風越で働く面白さは、異なる専門領域の人からも国語のことを学べる点にある。

作文教育における「自由を生み出す制約」とはなにか?

2021.12.11
それに加えて、国語の専門的技能についてはりんちゃんこと甲斐利恵子さんがいるという豪華さ….。りんちゃんからも、もっと積極的に学んでいきたい。同僚ではあっても同じ授業を持ってるわけじゃないから、待ってないでガンガンこっちから聞いていかないと、損!

今の僕には、筑駒教員時代のような文献への容易なアクセス環境もなく、こと教科の専門知識で僕を圧倒し、「学問と教育を両立しろ。もっと勉強しろ、論文を書け」と言ってくれる先輩もいない(ああいう、叱ってくれる系の先輩は本当にありがたかったんだな….いつも緊張したけど…)。だから、ここでは違うやり方で自分の力量を高めていくしかない。「国語だとこれはこういうことを目指しているのかな?」とか「これはいいな。でも自分だとできていないな。国語だとどうするんだろう?」とか「これは実は国語だったら自分でもやっているな」というふうに、他の領域のプロフェッショナルがやっていることを、国語に置き換えて考え、実践する。風越で自分ができる力量形成って、異なる分野と思えるものをいかに自分の分野に取り込むか、が鍵なのだ。この2年間でわかったのは、この軸をぶらさなければ、風越でも(筑駒とは違うやり方で)自分の力量を高めていけるはず、ということ。

子ども同士の人間関係づくりや、子どもへの関わり方について学びたい

というわけで、今年は、子どもたちの人間関係のつくりかたや、こちらの子どもへの関わり方について、同僚たちから一年を通じて学んでみたいなと思える一週間だった。KAIさんは定年が近いし、木村さんも活躍のフィールドが広い人なので、この2人と近い位置で仕事ができる機会は、もうそんなに多くないかもしれない。遠慮していたら自分が学べないので、彼らの仕事ぶりを観察しつつ、自分もやってフィードバックをもらっていかないとな、と思う。実際ね、年をとればとるだけ、子どもとの距離は離れていくし、意識的に力量を高めていかないと、成長どころかキープすらできないんでね….。

もちろん、子どもたちの人間関係ってそんな簡単に良くなるわけではないから、大変なこと、うまくいかないこともたくさんあるだろう。でも、苦労しつつ、頑張りつつ、自分が国語科教師として成長していけたらいいなと思う。

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