またしても、教育の文脈における大人から子どもへの暴行(いわゆる「体罰」)を肯定的に語る人たちがいる。本人にも原因がある。親が了承している。本人だって納得しているじゃないか。自分の子どもの頃はこんなの当たり前だった…。
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「そうであれば許される」のか?
だが、そうだろうか。誰であれ完璧な人間など存在しないので、「本人の原因」など無限に作り出せる。親の了承? そんなの、親が暴行に加担しているだけである。本人の納得? 認知的不協和を低減するために、暴行を受けた側が「あれは必要だった」と肯定的に語ることなどよくある話で、だからといって暴行が正当化されるわけではない。過去は当たり前だった? 過去は公的な場での喫煙も当たり前でしたね。こんなの、いずれも暴行を肯定する理由にならない。
必読、「体罰」に反対する声明
「体罰をすべきでない理由」について、あらためて確認しよう。まず、文科省は次のように語っている。
文部科学省「体罰について」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/dai1/siryou4-2.pdf
教員等は、児童生徒への指導に当たり、いかなる場合においても、身体に対する侵害(殴る、蹴る等)、肉体的苦痛を与える懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間保持させる等)である体罰を行ってはならない。体罰による指導により正常な倫理観を養うことはできず、むしろ児童生徒に力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為などの土壌を生む恐れがあるからである
また、特筆すべきは日本行動分析学会の声明文で、体罰をすべきではない科学的根拠を、素人の僕たちに対して、明確かつ丁寧に説明している。
「体罰」に反対する声明
http://www.j-aba.jp/data/seimei.pdf
この声明文は2014年のものだが、今こそこれを読み直したい。以前にこの声明文を読み、「よくある疑問への回答」まで読み終えた時、僕は、「体罰」という名の暴行が教育の場で用いられるべきものではないことに、深く納得した。
体罰をすべきではない科学的根拠
この声明文は、学術的な研究成果をもとに、
- 「体罰」には肯定論者が主張するような教育的効果がないこと
- 「体罰」にはマイナスの副次的効果があること
- 望ましくない行動を減少させるには、もっと効果的な方法があること
の3点について述べている。また、次のような「よくある質問」に対しても丁寧に答えている。
- 苦痛刺激を用いた手続きには本当に効果がないのか?
- 本人が「体罰」に同意するなら良いのではないか?
- 保護者が「体罰」に同意するなら良いのではないか?
- 効果があればいいのではないか?
- 暴力をふるう生徒をそのままにしていいのか?
- 厳しい練習を乗り越えさせることも必要なのではないか?
ひと言で言うと、体罰には教育的効果がなく、マイナスの副次的効果がある。さらに、望ましくない行動をやめさせるには別の方法がある。体罰をすべきでない、これ以上明快な理由があるだろうか。ぜひ読み直したい声明文だ。