手段最適化と目標の設定。2種類の「学びの個別化」について。

ちょっとした個人的メモ。先日、久しぶりにCさんとランチをご一緒したら「学びの個別化って言うけど、なんとなく2種類あると思うんですよ」ということを言ってて、「スタディサプリ的なものと、岩瀬直樹さんがやっているようなものと」と続けていた。この2つ、どんなふうに違うんだろう?

目次

目的への手段最適化としての「学びの個別化」

スタディサプリやICTを活用したアダプティブ・ラーニング全般は、基本的に、学ぶべきコンテンツが決まっていて、そこにいたる過程を個人に最適化するものだ。あることを学習するのに、本を読んで学ぶか、議論を通じて学ぶか。AからBという順番で学ぶか、BからAという順番で学ぶか。個人の学習スピード、興味、現在の学力水準。いろいろな違いに対応するには、「一斉授業」でも「一斉アクティブ・ラーニング」でもいけない。

そして、こうした意味での「学びの個別化」は、程度に限界はあるとはいえ、ふだんのフレーム内でも多少なら取り入れることができる。生徒が大福帳に書いてくるような個別のニーズに反応するというものも、個別化の第一歩だ。いま読書中のこの本にも、そのいろいろな方法が載っている。

いずれにしても、「目的への手段最適化」がこの意味での「学びの個別化」である。以前にカーン・アカデミーの動画で見たBlended Learningもこれかな。

Blended Learningって何だ!?

2014.12.05

この意味での個別化は、ICTが活躍できる場面だと思う。次の記事で紹介されてるAlt Schoolも興味あるなあ。見てみたい。

AltSchool:シリコンヴァレーが考える「21世紀の学校」

http://wired.jp/special/2016/altschool/

シリコンヴァレーの“新時代の学校”AltSchool、その「秘密」を公開

http://wired.jp/2017/01/04/altschool-shares-secrets/

学習の文脈を作り出す「学びの個別化」

それに対して、「岩瀬さんがやっているような」と形容される「学びの個別化」は、目的に対する手段の最適化にとどまらない。「目標設定を学習者自身が行う」点がポイントだと思う。この意味での「学びの個別化」が意図しているのは、学習の文脈や意味自体を学習者が作り出す、少なくともそのような学習者を育てようとしている。学期ごとに自分で目標を決めて作品作りに取り組んだり、それを自己評価したりするライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップは、こちらだろう。

[ITM]読み手を/書き手を評価する(1) 柱は自己評価

2015.03.06

2つの軸を意識して

もちろんこの2つは、完全に異なるものでも対立するものでもない。スタディサプリだって、多種多様な科目・コースの中かから自分にあった講座を選んでいく点では(大学受験という決まった範囲内とはいえ)「学習の文脈」を作る必要があるし、カーン・アカデミーのようなものならなおさらである。逆に、「学習者が自分の文脈を作ること」を重視する中でも、特定のコンテンツを効率よく学習しないといけない場面は当然あるのであり、そこでは「手段最適化」としての「学びの個別化」が有効だ(たとえば、ライティング・ワークショップの中で特定の言語事項の必要な生徒への指導がそれにあたる)。

だから、ただの重心の置き方の違いということになるのだろうが、自分自身の整理のために、ちょっとこの2つの違いは意識しておこうかなと思った。

この2つの関係は?(2017.5.7追記)

「学習の文脈を主体的に作り出す「学びの個別化」」と「手段最適化としての学びの個別化」って、OSとプログラムみたいな関係かなあと思った。前者がOSで、その設計思想のもとに動くプログラムが後者。ただの思いつきだけど、どうだろう?

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