甲斐利恵子先生の教室とナンシー・アトウェル

この9月から毎週火曜日、今年度末までの予定で、港区立赤坂中学校の甲斐利恵子先生の授業を参観している。甲斐利恵子先生は、国語の単元学習で著名な先生で、以下の本を出されている方だ(第二章を執筆)。

ちなみに、「基礎・基本」とあるけれど、「易しい」「誰でもできる」という意味ではなく、「目指すべき授業の礎」としての「基礎・基本」である。

きっかけはこの夏の日本国語教育学会

甲斐先生の教室に行くきっかけは、夏の日本国語教育学会全国大会で参加した詩創作のワークショップ(詳しくは下記エントリ参照)。

日本国語教育学会の全国大会に参加してきました

2018.08.06
各自が書いた詩を匿名で交換しあって講評を書く場面で、僕のところに回ってきた作品がとても素敵だったのだ。その作品が投票一位に選ばれて、僕の批評も合わせて紹介され、その後に発表されたその詩の作者名が、甲斐利恵子先生。石川晋さんからも「あすこまさん、甲斐先生の授業は見たほうがいいよ」と言われていたので、これは願ってもない機会と、すぐに授業参観を申し込んだ次第。

似ている!甲斐先生とナンシー・アトウェル

約束した参観日は9月11日火曜日。その授業で、甲斐先生がナンシー・アトウェルにとても似ていることに驚いた。いつもニコニコしていること。静かに語りかけること。生徒と話す時に同じ目線になること。生徒の選択を重視していること。たくさん書かせること。先生自身も書く姿を生徒に見せていること。先生が一人一人の生徒の間を回ってカンファランスをすること。アトウェルが日本の教室環境で授業をしたらこうなるんじゃないか、と思うほどだった。

放課後にお食事させて頂いた時も、アトウェルとの類似に驚くことが多かった。「食卓で話をするような雰囲気で言葉を使う時に、生徒は最もよく学ぶ」という甲斐先生の言葉は、アトウェルがリーディング・ワークショップで目指す雰囲気を語る「ダイニング・テーブル」の比喩と重なる。一方でアトウェルは「書けないスランプを許さない」厳しい姿勢も見せるのだが、甲斐先生もその言葉に共感を示す。とにかく二人とも、生徒に選択の自由を与え、本気で楽しめる雰囲気を作った上で、生徒の言葉の力を伸ばすことにこだわっている。

甲斐先生は、大村はまの単元学習に影響を受けている先生だ。アメリカで始まったライティング・ワークショップとは直接関係がないのだけど、それでもアトウェルとの共通点が色々とあるのは面白い。「イン・ザ・ミドル」をお渡ししたところ、大変丁寧に読んでくださって(二周してくださったそう)、「あすこまさんはいい先生に出会いましたね」ともおっしゃっていたので、やはり二人には通じるところがあるのだろう。僕としては、アトウェルに出会った時の「アメリカにも大村はまみたいな人がいるんだな」という印象を、甲斐先生を通じて再確認したわけでもある。

今年度の残り期間、通う予定です

率直に言って、感銘を受けました。「僕はこの先生から学ぶことがたくさんあるはず」と思って、今年度一杯、毎週火曜日に通わせていただくことにした次第です。もう6回通ってメモもそれなりに蓄積してきたので、生徒さんの情報はぼかしつつ、考えたことをこのブログでも書いていけたらと思っています。甲斐先生の授業には、日本の一斉授業(スクール形式の授業)とライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップとの接続を考える上でのヒントがある…そんな気がしています。

でも、読者の皆さんが甲斐利恵子先生に興味を持たれたら、まずはこの本を読んだ方がいいです。甲斐先生の教室のエッセンスが、たくさん詰まってますから。

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