SNS経由でこんな記事が流れてきた。Google社の優秀なチームを分析したところ、そのチームが優秀である原因が見えてきたという記事だ。これ、学校でのグループワークとも無縁な話ではないので、心理学の研究成果などもおりまぜて紹介したい。
Googleの優秀なチームを分析して見えてきた「優れたチームを作っている要因」とは?
http://gigazine.net/news/20160908-what-makes-team-successful/
「グループの能力=個人の能力の集積」ではない
この記事の内容を簡単に要約すると、
- 個人の能力はグループの成功と必ずしも結びつかない
- 優れたチームには各メンバーが対等の立場で発言できる環境がある
- 優れたチームは高い社会的共感性を持っている
という点が強調されている。面白いのは、能力の高い個人を集めればそのまま能力の高いグループになるわけではない、というところだろう。どう測定したのかはよくわからないけど、「対等の立場で発言できる」「高い社会的共感性」を大事な要素にあげている。
この結論、実は心理学の分野でウレイらが行っている研究とほぼ同様の結論なのが面白い(Wooley, 2010)。ウレイらは600人以上の被験者を2人から5人の多様なグループにわけてMcGrath Task Circumplexという一連の課題を与えた。その成果とグループのどのような因子が関わっているのかを調べたところ、ここでも個々の構成員の能力は、グループワークの成果を予測するのには役立たなかったのだ。
グループワークに影響を与える要素
では、何がグループワークの成果に影響を与えたのだろう。統計的に有為とされた影響は次の通りである。
- メンバーに女性がいるかどうか
- 人間関係への感受性テスト(RMEテストreading the mind in the eye)のスコアが高いかどうか
- 発言機会が平等に分配されているかどうか
つまり、メンバーに女性がいて、人間関係に敏感で、発言機会が平等に確保されていると、そのグループの成果は有意に高いということ。
女性の存在がグループワークの成果に有利に働くことについて、ウレイたち女性のほうが人間関係に敏感だからと推測しているが、いずれにせよこの結果は、Google社の調査結果とおどろくほど似通っている。グループワークの成果は個人の能力よりも人間関係への配慮や平等な発言機会に左右されるという点が面白い。
もちろんこうした心理学の実験結果は、教育現場に直接結びつけられるわけではない。被験者の年齢や置かれた文脈があまりに異なるからだ。でも、頭の片隅に置く参考程度にならしてもいいかなと思う。僕の勤務校は男子校なので上の1の条件は満たせないし、2も経験上なんだか低そうな予感…。とすると、「発言機会が平等になるように工夫すること」が授業でできる一番の工夫かな? ちょっと意識してみよう。