(写真は記事では取り上げなかった
Ørestad Bibliotek)わずか1回きりの、しかもデンマーク語(にスウェーデン語)がわからない状況での訪問なので、パッと目につくところしか見られないし、本当にただの無責任な「印象」になってしまう。でも、最後に自分なりの感想をまとめておきたい。(言語がわからないって本当に大きなハンデなんだなと痛感した…。質問には英語で対応してもらえたけど、館内表示のデンマーク語がわかれば、見え方も相当違ってくるはず)
吉田さんの本にあった通り、公共図書館が住民の生活のインフラになっていることは感じ取れた。本だけでなく音楽・DVD・ゲームが積極的に貸し出され、移民の多い地区では多言語資料が整えられている。様々なイベントが開催され、カフェが併設されているところでは、そこでにぎやかに会話が交わされている。訪問先の図書館に未就学児たちが先生に引率されて来ているシーンにも何度も出くわし、「日本だと(うるさいという苦情が他の来客から出て)これは無理だよなあ」と、こういう図書館のあり方を可能にする社会そのものへの憧れも感じた。
一方、吉田さんの本の刊行から5年、いくつかの図書館では状況が変わっていたのも印象的。移民向け資料が大幅に減ったり、統合されて大型化したり、児童図書館が一般向けに変わっていたり…。あの本の中でもコムーネ(自治体)の統合により図書館の数が減少する問題が指摘されていたが、問題の難しさは、5年経った今どんどん増しているのかもしれない。
こちらに住んでいる日本人司書の方のお話を踏まえると、グローバル化の影響もあるのだと思う。図書館(を含んだ人文社会科学系)への予算削減とリストラ。図書館の統合と複合施設化。右派政権の成立もあり、移民向けの支援も徐々に厳しくなっていくかもしれない。デンマークも世界の潮流から無縁ではない。当たり前だけど、ここは決して「夢の国」ではないのである。
こうした中で、図書館は難しい舵取りを迫られるようにも見える。文化センターとの複合施設化
と同時に、コペンハーゲン市では本の電子化と紙の本の廃棄も進み(年間3冊までの貸し出しの本は廃棄!)、あいた空間をイベントを行う交流スペースとして使うようになっているらしい。図書館が幅広い機能を持つようになっているのだが、言い換えれば、これは、紙の本を中心とした従来型の図書館機能だけでは成り立たなくなってきているのかもしれない。
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デンマーク(とスウェーデン)図書館訪問、とても興味深く楽しい旅行だった。決して「夢の国」ではないなという感想を持つ一方、今回訪ねた図書館は居心地が良い図書館が多かった。5年後には、どういう形になっているかな。10年後には…。きっと良い事ばかりではない予感もするけれど、いつか再訪したい。
(なんとか年内に旅行の感想をまとめられたので、今年度のまとめは年始に…良いお年を!)