「本日和(ほんびより)」プロジェクトの2年間を終えて。

12月に入ってから体調もいまいちで、特に先週はめまい気味で調子あがらず。アウトプットデイまではなんとか持ち堪えたけどその翌日に休んでしまうし、読書もまったくできない(する気力もない)、低空飛行な日々を過ごしている。そんな中で書き残しておきたいのは11月30日に実施して、先週のアウトプットデイでの報告会をもって活動を閉じたプロジェクト「本日和(ほんびより)」のことだ。[ad#ad_inside]

「本日和(ほんびより)」とは?

僕の意識があくまで国語科ベースということもあって、それ以外の風越の話題はそもそもここにそんなに書いてない。そんな中で、「本日和(ほんびより)」はここ2年間、僕の中でも大きな位置を占めたプロジェクトだった。本日和がどんなプロジェクトなのかは、昨年度の「本日和」開催直前の下記エントリを読んでもらえたら、わかってもらえると思う。簡単に言うと、軽井沢町内の他の学校の子にも呼びかけて実行委員会をつくり、「本を楽しむイベント」を一緒に作ろうという企画である。

[告知]12月3日(日)、軽井沢町中央公民館で子どもの本のイベント「本日和」が開催されます!風越の「マイプロ」発のイベントです、来てね。

2023.11.22

そして、ここで宣伝する余裕や気力もなかったのだけど、今年のイベントのウェブサイトはこちらにある。今年のテーマは「知ると楽しい本のみりょく」。あまり本が好きではない人にもきてもらいたいという希望から、去年もあったPOPづくりやしおりづくりなどのブースだけでなく、白雪姫の毒りんごをモチーフにした料理教室「毒りんごかもしれない」や、本をばらばらにしてその仕組みを知る「本の解剖ワークショップ」など、去年にはなかった企画も用意して開催した。今年も170名を超える方に来場していただき、ありがたかった。

他校の子たちとの交流の場に

この「本日和」プロジェクトの特徴は、風越の子だけでなく他校の子たちと一緒にイベントをつくるところにあった。去年はISAKをふくむ軽井沢7校の全て(これは僕の長女がISAKに在籍していたのが大きかった)、今年は軽井沢5校から参加者がいて、今年なんかは小学1年生から高校3年生まで幅のある実行委員メンバーだったのだ。こういう年齢の幅のあるメンバーで一つのイベントをつくっていくのは、風越のプロジェクトメンバーの子たちにとっても大きなチャレンジだったが、でも、とても良い経験だったと思う。オンラインミーティング中心でなかなか打ち解けるのに苦労した去年の反省を活かして、今年は対面ミーティング中心にして活動をしたのもよかった。参加した他校の子たちから「また来年もやりたい」と声があがっていたほどだ。

こんなふうに、軽井沢の町内の子が一つのイベントをつくることで関わりを深めていくことは、たぶんこれまではなかったこと。「本日和」プロジェクトがその先駆的な例を提供できたことは、僕としても素直にうれしい。

子どもたちの手にあまる現実も…

一方で、このイベントにたどりつくまでが、子どもたちだけでは難しかったのも事実だ。校長会で各校の協力を得てメンバーを募集し、小1から高3までのメンバーをまとめていくだけでなく、外部のスポンサーも探して資金提供を受けなければいけないし、一つ一つの企画の内容を打ち合わせるのと並行して、広報活動もしなければならない。子どもたちだけですべての企画を動かすのは難しいので、大人の方に打診して企画ブースを出していただく必要もあった。今年の企画でも、料理教室を開かれているFさん、『となりにすんでるクマのこと』の著者菊谷詩子さん、松本市の藤原印刷さん、大日本印刷さん、地元の小学校の読み聞かせボランティアの方など、多くの大人の方に世話になっている。こういう企画の打ち合わせも当然必要になる。

風越学園ではいちおう、毎週水曜日がマイプロジェクトの時間なのだけど、そこで割り当てられた2時間では到底仕事は終わらない。いきおい、一部の子は毎日が本日和の活動に追われるし、そういう「残業」抜きにしては成り立たないプロジェクトでもあった。仕事が多岐にわたるので、子どもだけでは仕事の把握が難しく、僕が仕事を整理して見せてあげる必要もあった。

要するに、子どもだけでやるには大規模すぎて、「大人がいないとできないプロジェクト」だったのだ。「本日和」プロジェクトの課題はここに尽きた。中心になって毎日を本日和に使ってくれた子たちが来年は受験生になるのを機会に、本日和メンバーはプロジェクトを閉じることを決めた。それは、少し残念だけれど、妥当な判断だったと思う。

大きな財産を得たプロジェクト

ということで、先週のアウトプットデイでの報告会を区切りに、「本日和」プロジェクトは活動を終了した。僕自身も、どこまで持続可能なのかわからないままでの仕事が続いていたので、ほっとした気持ちもある。一方で、伴走というよりも僕自身がプロジェクトを動かしていた形にはなるにせよ、このプロジェクトに関われたことは、僕の大きな財産だった。

第一に、軽井沢町内の学校の子たちを結べた経験は大きかった。その過程で各校の校長先生をはじめ、多くの先生とも繋がりをもてたが、このつながりは今後も生きてくるに違いない。また、このプロジェクトの企画を通じて、町内の書店さん、ゲストとして協力してくださった皆さん、出版や図書館関係者の方、保護者の協力者の方など、いろいろな方とつながりを持てた。大日本印刷さんの読書支援キットや藤原印刷さんの本の解剖ワークショップなど、「これは風越の読書家の時間でもやってみたいな」と思うアイディアに出会うこともできた。こういう経験は、授業にも持ち帰りたい。

また、現実的なことを言えば、プロジェクトに伴走するにあたって、どの程度の規模感であれば子どもたちが自分で管理できるのかという感覚も持つことができた。実際、本日和は「毎日を本日和に捧げる子どもがいて初めて成り立つプロジェクト」だったし、それでも子どもの手には余るプロジェクトだった。伴走どころか、大人も手を動かしてマネージメントしてようやくできる規模感だった。だからもし今後もこういうイベントをやりたいという子がいたら、その子には、少なくとも覚悟を求める必要がある。そうでないと、結局は僕がその子のお尻を叩くことになって、いったい誰のプロジェクトかわからなくなってしまうからだ。

軽井沢の読書文化に関わりたい

言うまでもないことだが、この「本日和」プロジェクトが僕にとって大きなものになったのは、これが「本」だからという理由が大きい。よく同僚にも言っていたのだが、もしこれが「スポーツ日和」だったら、こんなに時間を費やさなかったことは間違いないところだ。僕には国語や本という興味の対象が明確にあって、それに絡まない限り、僕自身が子どものプロジェクトに心から興味を持つことはない。あくまで国語科というコンテンツの枠を出られない(出たら退屈になる)のは、一教師として見た時の僕の明確な欠点でもあるのだが、逆に言えば、自分が風越でマイプロジェクトの担当を楽しむとしたら、自分の興味のある領域のプロジェクトに関わるしかないのだ、ということを実感できたプロジェクトでもあった。だから、本日和が終わった今後は、自分の興味のあることを積極的に仕掛けていこうと思う。

「本日和」というプロジェクトを通して、軽井沢の本や出版に関する関する人たちと接点を持ち、この町の読書文化に、貢献とは言わないまでも関われたことは、僕にとっても嬉しいことだった。「本日和」プロジェクトという形ではいったん閉じるけど、また今回の経験を活かして、軽井沢の読書文化に関われたらいいなと思う。というわけで、このプロジェクトでお世話になった皆さん、本当にありがとうございました。また、本や読書を通して、どこかで関われたら嬉しい限りです。

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