古田直之『教室の荒れ・問題行動対応ガイド』を読んだ。実はひそかに風越の同僚の間で話題になっている本で、風越ももちろんユートピアではなく、どう対応したらいいか迷う事例はたくさんあるのだ。僕もその参考に…と思って読み始めたのだが、とても良い本だった。
主導権を握ることの大切さ
あえて語弊を招くような言い方になるが、教室の荒れに対応するのに必要なのは、とことん話を聞くとか、本人の気持ちに寄り添うとかじゃないな、と本書を読んで感じた。というのも、寄り添うつもりで子どもの行動に振り回されたり後追いになったりして、最終的に子どもの思い通りになる(「子どもに負ける」)事例が、学校には本当に多いからだ。
本書で強調されているのは「きちんと線を引いて、教師が主導権を握ること」だ。まずは、教室の荒れのレベルがどの程度なのか、どの程度の行為が指導の対象になるのかをきっちりと線を引く。そして、生徒と教師のやりとりの中で、教師が主導権を握る。この「主導権を握る」という考え方が自分にはとてもしっくりときた。これは何も教師が子どもの意思を無視してやらせるということではない。子どもの意思を尊重しようとしすぎて、教師が子どもの言動にふりまわされないための基本方針である。
具体的な指導例がたくさん!
そして、本書ではこの「主導権を握る」ための目線・動作・言葉が、「静の指導」と「動の指導」の組み合わせという観点を交えながら、非常に具体的に書かれている。僕が出会った事例もあり、なるほど、教師もここまで意識的に自分の行動のレベルを調整するのか、と非常に勉強になる。例えば、複数の子がつるんで反抗的になっている時、まずはどんなタイプの生徒に声をかけるべき? とか、考えたくなる事例がたくさんある。ここは、ぜひ生徒指導が得意な先生にもみてもらって、ご自身の行動をチェックしてほしい。
そして、「へぇー」と驚いたのが、クールダウンルームの役割とその環境整備。確かに、別に「その子がリラックスする」がクールダウンルームの目的ではないのだな。本書ではその基本的なポイントから、そこでの教師の振る舞い方、どういう状態が退室のタイミングなのかまで、これも具体的に書いてあって、勉強になった。
というわけで、本書は生徒指導に悩んでいる先生はもちろん、それなりに自信のある方でも、自分なりの行動をチェックするという意味で、読む価値のある一冊だ、「主導権を握る」とか「クールダウンルームの役割」などという文言を見ると、強権的指導のように受け止める人もいるかもしれないが、決してそんなことはない。根底には児童・生徒の「より良くなろう」という意思を信じる気持ちがあるし、教師が主導権を握ることで児童・生徒の行動をエスカレートさせず、飛び出てしまう子も教室に戻れるようにするという配慮にもあふれている。ベテラン教師はこんなに丁寧に自分の言動を意識できるのかと、ちょっと驚くほどだ。僕も参考にさせてもらおう。