[読書]俳句創作の授業づくりのためのブックリスト

ブログの更新が滞っております…。夏休み明けの3週間、風越学園では活動単位とエリアを区切って、コロナ感染対策。僕も5・6年生の登校から下校まで毎日ずっと一緒に過ごす日々を送っており、授業準備がほぼ全部帰宅後になってしまうため、けっこう体力的にいっぱいいっぱい。これを普通にやっている小学校の先生、すごいなー….。そんな中で、現在、国語では句会を柱にした俳句創作の授業を進行中。そのふりかえりは後日に書くことにして、ここでは俳句創作の授業づくりの参考にしたおすすめ本を紹介します。

例によってブログの内容とあまり関係のないトップ写真。今回は長野の国宝・松本城。7月に行ったときの写真です。思ったよりもこぢんまりしたお城だったのだけど、やはり美しい佇まいですねえ…

まずお世話になった俳句の入門書

実はあすこま、恥ずかしながらこの年齢になるまで俳句の授業をまともにやったことがほぼなく…というのも、前任校の同僚に俳諧の研究者がいて、その方に頼ってしまって勉強不足だったのだ。ということで、俳句創作の実践をされている国語の先生たちから本を教えてもらい、俳句のイロハから学ぶことに。

藤田湘子『新版 20週俳句入門』は定評のある一冊だけど、やはり、今回もっともお世話になった本。「十七音で自由に思いを表現しましょう♪」の対極にある硬派な本で、徹底的に定型を守るところから入るのが特徴。一週ずつ順を追って、俳句の基本的な型、切れ字の役割、季語の役割などを学べる仕組みになっている。律儀に毎週…というわけにはいかなかったけど、僕もしばらくこの本に従って『俳句てふてふ』(俳句の投稿アプリ)に俳句を投稿していた。本当に、とても良い本です。

公開句会「東京マッハ」の司会も務める筆者の俳句入門書。「俳句は自己表現ではない」「俳人は言葉のDJだ」という立場から書かれており、面白い本だった。ただ、僕自身が「俳句に必要なのは隠喩ではなく換喩的思考」という主張の眼目を、ちゃんと理解しきったとは言えない。というのも、この筆者の掲げる良い句とダメな句の違いも、ピンとこないものもあったのだ。この本が僕にとって一番参考になったのは、「作らない句会」を提唱していること。「俳句の意味を作り出すのは作者ではなく読者である」ことを経験するのに、これ以上良い方法はないだろう。僕もこれは授業で使わせてもらった。やや露悪的な語り口はあまり好みではないけれど、とてもお世話になった本だ。

水原秋桜子『近代の秀句』は、俳句の解釈をするのに、季語のイメージをここまで深く読み込むのかと驚かされた一冊だ。藤田湘子『新版 20週俳句入門』で紹介されていた秋桜子の鑑賞文が、ため息が出るほど素晴らしくて、それで図書館で探して読んでみた本。期待にたがわない素晴らしさだった。たった十七音の俳句の奥に、映画的なストーリーや映像的な色彩をふくんだこんな豊かな世界があるなんて。こういう鑑賞文をいつか書けるようになりたい。

実際の授業づくりの参考にした本

実際の授業づくりの参考にしたのは、結論から言うと「プレバト!」でご活躍中の夏井いつきさんの本だった。夏井いつきさんはYoutubeでも俳句の入門動画「夏井いつき俳句チャンネル」を公開され、子どもでも簡単に作れる「楽しいな俳句」の提唱者としても知られている。今回、夏井さんの本を何冊か読んで実感したけど、要するに夏井さんは「どうしたら一般人や子どもが「取り合わせ」の句を作れるようになるか」を徹底的に試行錯誤されているのである。そのハードルの低さが、藤田湘子『新版 20週俳句入門』と比べても格段に低い。徹底して低く、でも俳句の基本的技術を伝えようとしている姿勢が素晴らしい。俳句の作り方には「写生俳句」の道もあるだろうけど、それは玄人の技とわりきって、徹底的に「取り合わせ」を入り口にしようとする点にも信念を感じる。そんな夏井いつきさんの著作はたくさんあるが、学校教育関係者になら、ちょっと古いけど次の一冊をおすすめしたい。

これは、テレビ番組の芸能人、小学生、中学生、高校生たちへの夏井さんによる俳句の授業を再現した本だ。学校の授業をもとにしているだけに学校教育での展開が想像しやすいし、後年の俳句超入門書に書かれていることのエッセンスはこの本にもある。

もしもう少し一般向けの本なら、『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』や『超辛口先生の赤ペン俳句教室』が良かった。特に前者は、一物仕立ての句を「純粋な一物仕立て」と、比喩や見立て、擬人化などが入った一物仕立てに分けてとらえて、両者の違いをわかりやすく説明してくれて、一物仕立てに対する理解が深まった気がする。

同じくよく知られた俳人の坪内稔典さんも俳句の入門書を書かれている。『坪内稔典の俳句の授業』は、特に第一章が学校の先生向けだ。小学校での坪内さんの俳句の授業を再現したり、学校の先生向けの原稿や講演が収録されている。夏井いつき『子供たちはいかにして俳句と出会ったか』と並んで、授業前に実際に読ませてもらった本だった。

ただ、坪内さんはこの本では取り合わせの句を作ることを強調されているけど、実際に子供を読者に想定した『ねんてん先生の俳句の学校』シリーズでは、もっとハードル低く575の音や季節の言葉を楽しむことに主眼を置いていて、夏井さんほどには、取り合わせの句へのこだわりを見せていない気もする。それで、今回は夏井さんのほうを参考にさせてもらった。

比較的若い世代の俳句を集めるのに使った本

僕の授業相手は小学56年生。彼らに俳句のモデルとして示す俳句は、中高の教科書に乗るような有名な名作よりも、近い世代の俳句のほうがいい。それで、色々なコンクールや俳句甲子園の入選作品を集めることにした。ここでは、そこから書籍の形で入手できるものを紹介する。

高校生世代の俳句を集めるには…

高校生世代の俳句を集めるなら、神奈川大学全国高校生俳句大賞の受賞作品を集めた『17音の青春』シリーズがいい。僕は5年ぶんくらい読んだけど、素敵だな、好みだなと思える句がたくさん見つかった。また、俳句甲子園出身の俳人・神野紗希さんの俳句入門書『俳句部。はじめました』は岩波の期待の新シリーズ「ジュニスタ」のスタートラインアップの1冊。中高生向けだけあって、若い感覚の俳句がたくさん掲載されている。

同じく岩波からもう一冊。俳句甲子園の超強豪校・開成中高の俳句部顧問による、佐藤郁良『俳句を楽しむ』にも、多くの高校生の俳句が掲載されている。ちなみに同じ著者の『俳句のための文語文法入門』も、切れ字からはじまって俳句の文語文法について解説している本で、これも中高の国語科教員なら持って損はない。

小中学生世代の俳句を集めるには…

上記の本は、中高生が読んで「いいな」と思える俳句を集めるには申し分ないのだが、なにぶん今年の僕が関わっているのは小学生である。恋の句や青春の句は、まだちょっと感覚が年上なのだ。それに、子どもには取り合わせの句も理解しにくい。それで、小学生の俳句作品を集めるには次の本を使った。

まず長谷川櫂監修『大人も読みたいこども歳時記』は、写真がふんだんに使われたカラー版の子供向けの歳時記。これだけで学校図書館に入れる価値ありなのだが、例句に小中学生の俳句が取られているのが素晴らしい。この本にだいぶお世話になった。小中学校の先生は、ぜひ学校図書館に。

「こども俳句ネット」を主宰するあらきみほ氏が編著の『名句もかなわない子ども俳句170選』はとてもユニークな本だ。季語ごとに、有名な俳人の作品と小中学生の俳句が並んで扱われていて、それに短文が添えられている。名句と並んでいるだけあって、素敵な俳句揃いの作品集だった。

詳しい方、良い本を教えて下さい!

というわけで、今回の俳句の授業をつくるにあたって読んで良かった本をまとめてみた。以前に書いた「[読書]短歌創作の授業づくりのためのブックリスト」や「詩を書く授業の難しさと意義について。参考になるブックリストつき」とあわせて読んでもらえると、一応、詩、短歌、俳句の授業づくりのブックリストが揃ったのかな…でも、特に俳句創作の授業は今回はじめてだし、出会うべき本にまだまだ出会ってないと思う。良い本をご存知の方、ぜひ教えて下さい!

[読書]短歌創作の授業づくりのためのブックリスト

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詩を書く授業の難しさと意義について。参考になるブックリストつき。

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