[読書]短歌創作の授業づくりのためのブックリスト

風越で僕が受け持つ6・7年生の作家の時間(ライティング・ワークショップ)では、もうすぐ短歌と写真を組み合わせた創作の授業が終わるところ。授業の振り返りは終わってからにして、今回のエントリでは授業づくりの参考になった本をまとめてみる。

写真はエントリ内容とは関係がない11月上旬の軽井沢の雲場池。ここ長野県では、そろそろ晩秋から初冬へと季節が移ろうとしています。

目次

短歌創作の基礎知識

まずは、短歌創作の基礎知識を…ということで参考にしたのは次の本。どちらも、子供向けの入門書である。

どちらも短歌の技法がまとめられていたり、有名な和歌・短歌が紹介されていたりして、素人の僕にはたいへんありがたかった。『俳句・短歌をつくろう』が風越のライブラリーにあったので、基本的にはこちらを中心に見ていた。

ただ、短歌には口語と文語の短歌があるけれど、今回の授業では、口語短歌を中心にしようと決めていた。口語短歌→文語短歌→古典和歌と進むのが、古典の導入としてもいいかなと思っていたからだ。そこで、実際には、生徒にも共感しやすくてわかりやすい口語短歌をたくさん集めるのが授業準備のスタートだった。

やっぱり人気、学校を舞台にした短歌

生徒の創作の参考になるように、色々な歌集をライブラリーのすぐに手に取れるところに並べていたのだけど、人気が高いのは学校を舞台にしたものや、比較的若い世代が書いたもの、そして、意味がつかみやすく、共感できる短歌だった。

特に、写真+短歌というコンセプトが授業にもぴったり合い、しかももともと中学生向けの連載だった加藤千恵『写真短歌部 放課後』は一番人気だったのではないかと思う。加藤千恵の歌には、彼女が高校生の時に書いた歌を収めた『ハッピー・アイスクリーム』もあるけど、その歌よりも『放課後』の歌の方が人気だった感じ。

また、僕が短歌集めの際に千葉聡さんの本に頼っているから、という面はあるけれど、千葉聡さんの歌の人気も高い。短歌+エッセイ集の次の2冊も、学校を舞台にした歌が多いせいか、共感を持って読まれていたようだ。

学校を舞台にした歌って、学生向けの短歌コンクールの受賞作品を集めればきっとたくさんあるんだろうな。今回はそこまで手がまわらなかったけど、次はチェックしてみたい。

比較的若い世代の歌人たち

短歌の世界にはあまり詳しくないので、どのくらいの年齢から「比較的若い」と言っていいのか、僕にはよくわからない。ただ、間違いなく「若い」と言っていいだろう1994年生まれの平岡あみ『ともだちは実はひとりだけなんです』は、とてもよく読まれていた。序盤にやった人気投票でも、上位に2つの作品が入っていた。著者の10代の頃の歌が年齢を明示して収められている歌集で、やはり同世代の歌は共感を集めるのだろう。

木下龍也・岡野大嗣『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』も、決して「わかりやすい」「共感しやすい」歌ばかりとは思えないのに、図書館に置いておくといつも誰かに読まれて付箋が貼られていた歌集。

「かんたん短歌」系の歌人たち

他に人気があったのは天野慶枡野浩一。2000年代頃に僕が読んでいた歌人たちなので「若い」とは言えないかもしれないけど、生徒たちにはやはり人気。

枡野浩一の、散文のような読みやすさの中にユーモアや毒を込める作風は、一部の男子生徒にとても受けていた。これまで小学校で文語短歌や百人一首に触れていた子達にとっては、「こういうのでいいんだ」という新鮮な発見だったのだと思う。

『かんたん短歌の作り方』は創作入門としても優れていると思うけど、生徒は後半の「卒業生」のアンソロジー部分から思い思いにお気に入りの歌を探していたよう。脇川飛鳥や天野慶の歌が読まれていた。

その天野慶さんは若い頃の僕が好きだった歌人なので(もう20年くらい前に作られた、私家版の作品集『メルカトル』を持っている)、しばしば紹介したし、「この人の歌が好き」という女子も複数名いた。作者が10代の頃に作った歌は、今の10代にも共感を持って読まれることが多いのかな。

天野慶さん、最近は百人一首や枕草子など、古典の普及活動にも幅を広げているようだけど、短歌の入門書『ウタノタネ』も素敵。

授業ではミニレッスンとして有志参加の「穴埋め短歌」をやったのだけど、その参考になるのはこれらの本たち。この「穴埋め短歌」、僕は東京在住時代に歌人・エッセイストの堀静香さんから教わったのだけど、短歌の入門書などでもけっこう言及されているみたい。サンプル採集には以下の本が使えるのでどうぞ。

短歌のアンソロジー集

ここまでだとどうしても僕の知っている/好みの作品ばかりになってしまうので、アンソロジー集として、次の本は生徒が手に取れるように置いておいた。

それぞれの本の反応までは掴みきれていないけど、個人的には、短歌・和歌の入門書としては『短歌研究ジュニア はじめて出会う短歌100』が、文字も大きくて平易な解説もあって、一番良いと思う。

あとは、穂村弘編集のユニークな短歌絵本も手に取られていた印象。

なお、今回は比較的若い世代の口語短歌中心にすると決めていたので、『現代短歌の鑑賞101』みたいな本格派?シリーズは、そもそも紹介していない。

推敲やカンファランスの参考になる本

短歌は短いので推敲が気軽にできるのもいい。生徒が一度「できた」と思っても、もう一踏ん張りしていろいろな表現の可能性を追求してもらえる。もちろん推敲の十分な手伝いをするのは難しいのだけど、事前にざっと目を通したのは次の本だ。いずれも再読。

俵万智の2冊『考える短歌』『短歌の作り方、教えてください』は本当に勉強になる。『考える短歌』は、助詞一つ変えるだけで印象が変わる推敲の醍醐味がわかる本だし、『短歌の作り方、教えてください』では、一青窈の作品にコメントをつけていく俵万智の姿勢が、カンファランスのお手本のようである。後者の本については随分前にブログで書いたことがあり、今回再読して、「やっぱりすごいな」という思いを新たにした。

[読書]俵万智『短歌の作り方、教えてください』

2015.02.26

穂村弘『はじめての短歌』は「改悪例」を示すというユニークな構成の本。なぜ改悪かが自分ではよく分からないものも多いのだけど、解説を読むとよくわかる。短歌としての良さと説明文としての良さってこう違うのか、と納得する一冊だった。

こうした「推敲」本って、読んで「なるほどなあ、面白いなあ」とは思うのだけど、それをすぐに反映なんてできっこない。それができるには、自分の創作量が絶対的に不足しているのだと思う。今回の自分の授業では、表現に改善の余地があると思えたものについてはコメントを頑張ったけど、そのコメントが本当に妥当かは自信がないし、代案をすぐに提示して、生徒を誘導してしまって反省したこともあった。推敲をめぐるやりとりは本当に難しいのだ。

以上、短歌創作の授業づくりの参考にしたブックリストでした。「これ読んどけ」があったらぜひご連絡ください!

この記事のシェアはこちらからどうぞ!