[読書]中学・高校で創作の授業に挑戦するヒントが満載。浜本純逸(監修)・武藤清吾(編)「中学校・高等学校 文学創作の学習指導」

風越ワークショップも前半戦を終えて、これから短い夏休みに入ります。色々と予定はあるのだけど、まずは「創作」についての本を読んだのでご紹介。創作という教師にとって二の足を踏む授業に接近するための、なかなか有用なハンドブックでした。

これから注目?「創作」の授業

個人的印象では、中高で「創作」の授業に取り組んでいる人はそう多くない。小学校では詩や短歌の創作も盛んに取り組まれているけど、中学、高校と上がるにつれて「尻すぼみ」の印象だ。特に高校では高大連携を視野に論理的文章を書くことがゴールになっていて、文学の創作は「役に立たない」ものとみられがち。実は、現行の学習指導要領でも高1国語総合で「情景や心情の描写を取り入れて,詩歌をつくったり随筆などを書いたりする」言語活動が例示されているのだけど、実際は低調なのではないかな。

しかし、少し風向きが変わる感じがないではない。新学習指導要領では高1必修の「言語文化」で、「特に我が国の言語文化の特質に関わりの深い題材」を選んで、「我が国の言語文化の特質に関わる文学的な文章」を書く活動が想定されているし(具体的には、短歌・俳句・随筆を書く活動)、「文学国語」では創作が真正面から取り上げられている。こういう変化をきっかけに創作の授業に取り組みたい国語科教員の方もいるかもしれない。

「創作」の豊富な実践事例!

そして、これから創作の授業に取り組みたい中高の教員にとって頼りになるのがこの本だ。まず良いのは、中高別に創作指導の事例が紹介されていること。小説・物語、詩、短歌・俳句、劇・脚本、連句、漢詩などいろいろな事例があるので、どこか興味が引っかかるはず。

個人的に一番興味深く読んだのは、中井悠加「イギリスの創作指導」。イギリスのライティング・ワークショップの詩の実践である。フリー・ライティングで書くことに慣れ、また「家具ゲーム」などのゲーム形式で子どもに刺激を与えるクリフ・イェイツの実践や、下書きノートに対して教師の評価や生徒同士の相互評価、最後の自己評価をすることを通じて「下書きを見る目」を育てるスー・ディモクの実践は、僕のライティング・ワークショップの参考になりそう。以下の中井さんの文章、だいじ。

たくさんの表現技法を試すことで、生徒が普段生活している現実世界をことばの中で変化させ、その中で新発見と再発見を繰り返すのがイギリスの創作指導なのだといえる。その表現方法や変化のさせ方を教師から提供し、それぞれが歩んできた試行錯誤の過程を教室で共有しながら、また次へのきっかけを共につかみ合うというサイクルを教室で生じさせることが大切にされている。そして、そこで様々な技法や形式の総合体として生み出される自分の創作物を、いかに客観的に振り返り、意識的な選択ができているかということを表明できるというメタ的な次元が評価の対象となっている。(p215)

また、実践実践報告ではないけれど、木本一成「文学創作の教科書教材」も良かった。教科書の中で実際にどのような創作活動が示されているのかが例示・整理されている。さほど本格的な活動例ではないが、教科書でどのように扱われているのか概観を掴むにはちょうど良い。

創作の授業に挑戦したい方へ

僕は創作の授業(授業形式としてはライティング・ワークショップ)は、表現や書くプロセスに意識的になれるという点で、書くことの学習の根幹になりうると思っている。そこまで本格的ではなくても、創作の授業に取り組んでみたいなという方には、まずはこの本で先行実践をさらってみることをお勧めしたい。そもそも創作の授業の目的は何?とか、評価はどうするの?という定番の話題もある。創作の授業づくりのヒントになるはずだ。

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