最近短歌に対する興味がちょっと上昇している。理由は単純で先日短歌の創作ワークショップに参加したから。
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講師役をして下さった先生が「かばん」同人ということもあって、「かばん」と言えば穂村弘さんと東直子さんしか知らないので、穂村さんの本を手にとってみた。穂村さんは僕にとって数少ない「名前を知ってる現役歌人」だけど、それでも歌集で持ってるのは『シンジケート』と『ラインマーカーズ』のみ。その後の作品はエッセイを読んだくらい。それで今回手にとってみたのがこの本。
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この『世界中が夕焼け』 は、穂村さんの短歌に同じ「かばん」同人の山田航さんが解説を書き、その山田さんの解説を受けて穂村さんが自注自解をしている。単純な自作解説と違って、山田さんの文章が入っているのが面白い。とにかく、山田さんの、作品の細部から抽象的な次元に話を持っていく手並みが鮮やかで、短歌ってこんな風に読めるのかと驚くと同時に、それが穂村さんの意識とは全く違っていたりするから良い。
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でも、今回穂村さんの短歌を読んで、やっぱり僕は『シンジケート』に載ってる歌がけっこう好きなんだなと思った。 叙情的で、慎重に距離を見計らっているようで、コーヒー牛乳みたいに甘ったるい感じ。『手紙魔まみ』は以前に読んだ時ついていけなかったんだけど、なぜか今回は「ハロー 夜。」の歌がとてもよかった。僕の中で何が変わったんだろう。好きな歌を並べてみる。
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終バスにふたりは眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて
校庭の地ならし用のローラーに座れば世界中が夕焼け
ウエディングドレス屋のショーウインドウにヘレン・ケラーの無数の指紋
ハロー 夜。ハロー 静かな霜柱。ハロー カップヌードルの海老たち。
冷蔵庫が息づく夜にお互いの本のページがめくられる音
呼吸する色の不思議を見ていたら「火よ」と貴方は教えてくれる
卵産む海亀の瀬に飛び乗って手榴弾のピン抜けば朝焼け
目薬をこわがる妹のためにプラネタリウムに放て鳥たち