このエントリでICTが書くことに与える影響について書いてみたので、今日はその続きを。
とはいっても、ICTとライティングの関わりの歴史については Richard Andrews& Anna Smith Develping Writers:Teaching and Lerning in the Digital Age に触れられているので、その簡単なまとめをしてみたい。
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この本では、ICTとライティングの現代史を、大きく3つに区分している。
(1)PCが登場した1980年代
(2)インターネットが登場した1990年代
(3)Web2.0の2000年代以降
それぞれについて簡単に見てみよう。
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(1)PCが登場した1980年代
・この時代は、まだICT(Information and Communication Technology)ではなくIT(Information Technology)と呼ばれていた時代。つまり、デジタルがコミュニケーションを促進するツールとは見なされていなかった。
・PCはワープロからの自然な進歩として受容され、学校でも普及していく。特に、この時期にDonald Gravesらがプロセス・アプローチの作文指導を実践した時期で、PCを利用することで下書きを修正することが容易になり、両者がともに広まっていった。
・ PCを使うことで作文の質が高まるのかについては、諸説、異なる研究結果が報告されている。
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(2)インターネットが登場した1990年代
・ITからICTへ。デジタルがコミュニケーションにかかわるという認識が一般化した時代。インターネットを通じて様々な文字のコミュニケーションが行われるようになる。
・この時期に、検索スキル・論理・情報源の信頼性判定などがリテラシーの定義に入るようになる。文章の中の答えを探すのではなく、答えを自分で組み立てていく新しいリテラシーが提唱され、「読むこと」「書くこと」が再定義された時代だった。
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(3)Web2.0の2000年代以降
・ユーザー自身がウェブ上のコンテンツを組織化する中心になる(RSS)。読むことが編集することになる。
・オンラインでの読み書きが、より協働的で創発的なものになる(Blog, wiki, Tumblr…)。
・印刷されたメディアとデジタルメディアの境界がなくなり、いきなりPCで書くことも普通になる。
・モバイル機器の広まりにより、いつでもどこでも書けるようになる。
・様々なウェブサービスを通じてライティングのコミュニティが形成される。そこでは書かれたものがコメントされ、引用され、動画や音声データなどとくっつけられ、拡散していく。
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こうしてみると、この30年間で、書くという営みがICTの影響を強く受けてきたことがわかる。要点をかいつまんでまとめると、ICTが書くことに与えた影響は次のようなものだろう。
(1)推敲が容易になった。
(2)いつでも、どこでも、誰とでも書けるようになった。
(3)他のメディア(動画・画像・音声データ)と一緒に用いることが容易になった。
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別に僕は、こういう変化がすぐに学校現場に反映されるべきとは思わない。でも、「書くこと」が時代によってどう変化しているのか、その流れを知っておきたいかなと思う。その中で、自分がどんな作文教育をやりたいのかを、ゆっくり考えたい。