[読書]今月のベストは意外な作品?2022年2月の読書日記

今日は2月の読書のふりかえりエントリ。すでにブログで書いた2冊、細恵子『児童の読書力を形成する読書日記』と田丸雅智『ショートショートでひらめく文章教室』をのぞいて、気に入った本を紹介します。

目次

再読した岩波ジュニア新書が良い!

今月は、過去の読書記録を手がかりに再読した岩波ジュニア新書が良かったな〜。

川上浩司『不便益のススメ』は、先月読んだ美馬のゆり『AIの時代を生きる』に紹介されていたので再読した本。やはりユニークで面白い本だった。「不便」「便利」「益」「害」を分けて考え、「不便」の「益」を考える不便益。なにごとも「断絶」し「分業」し「判断しなくて良い」方が便利だが、そうすると「多様な、全体的な関わり」を失い、理解もしなくなり、主体性も失う(車の工業は分業が効率的だが、一人で一台作る方が愛着やモチベーションがわく)という話は、あらためて「確かに!」と思わされる。三回同じ道を通ると真っ白になるカーナビアプリとか、商品としても面白い。

また、今月は必要があって詩人が書いた詩創作の本を色々と読んでいた。そんな中、和合亮一『詩の寺子屋』からは、色々と授業のヒントをもらった。詩の音楽性を楽しむ、7音のフレーズを集める、曲を聞いて思い浮かぶ言葉を集める、写真から思い浮かんだ言葉を書く、思い浮かんだ言葉に順番をつけて組み合わせる、かたまりを行分けする…など、想像力を刺激する様々なレッスンがいい。この人は子どもの詩の作り方を知ってる人だと思う。川口晴美+渡邊十絲子『ことばを深呼吸』と同じく、実際にためしてみたくなる詩のレッスンの数々だった。

物語では辻村深月を3冊

いま、風越学園の6年生では『かがみの孤城』や『ツナグ』が人気。僕も今月は辻村深月の小説を読む月と決めて、『凍りのくじら』『きのうの影踏み』『島はぼくらと』の3冊を読んだ。辻村深月『凍りのくじら』はミステリ仕立ての家族をめぐる再生の物語で、この3冊の中では一番好きだったな。モチーフとなるドラえもんの優しさが最後のほうにたくさん詰まってた。

『島はぼくらと』も味わい深い。青春小説の装いだけど、実際は村長やコミュニティ・デザイナーであるヨシノなど、島に暮らす大人たちの生活を子どもたちの目から描いた本。こういうの、好き。ホラー系短編小説集『きのうの影踏み』は作品ごとの好き嫌いがあったけど、オチが効いて展開も色々なパターンがあり、作家の時間の参考作品になりそう。

今月一番印象に残った詩集は…

ブッシュ孝子の名前を知ったのは、若松英輔『詩を書くってどんなこと?』だった。そこに引用されていた「折れたバラ」という詩が印象的で読んだのが、ブッシュ孝子『暗やみの中で一人枕をぬらす夜は』。28歳で乳がんでなくなった詩人が、迫りくる死を目前にした時に書いた詩は、一人でつぶやいているような、とても落ち着いたトーンの作品が多い。

今月のベストは、意外な作品?

今月のベストは、松本理恵『山小屋ごはん』。山小屋で出す名物料理をめぐるフォトエッセイ。山小屋のご主人たちの人柄も伝わるし、料理の写真も美味しそう。息抜きで手にとったのだけど、寝る前に少しずつ読むのが楽しみな一冊だった。僕も齢をとってきたのか、最近は、山小屋のご主人さんのように「歴史に残らずにずっと一つの仕事を淡々と続けている人」の凄さに思いを馳せる。たとえば、30年以上も歩荷(ぼっか)をして、山の麓から山頂の山小屋まで食材を運び続ける人。98歳までおにぎりとハヤシライスを作り続け、山小屋を一人で切り盛りする人。淡々と、いい仕事をする。山にはそういう人が多い。おいしくて、りきみがなくて、しみじみする、いいエッセイ集だ。高級レストランではなくてふだんづかいのカフェのような、いい文章。こんな文章書きたいな。

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