アトウェルのライティング/リーディング・ワークショップの真髄は、カンファランスの凄み。

以前に下記エントリで、アトウェルがミニ・レッスンで教えている「一粒の小石の法則」を扱った。文章を書くときに、一般論で書かないで、具体的な特定のものについて書く、というやり方のことだ。

神は細部に宿る、「一粒の小石の法則」:アトウェルのミニレッスンから。

2017.06.11
昨日、またIn the Middleの第6章、ライティング・ワークショップのカンファランスの章を読んでいたら、この法則がカンファランスでも出てきたので、ちょっと紹介も兼ねて書きとめておこう。読んでみると、短時間で密度の濃いカンファランスをしていることに感心してしまう。

目次

問題点をズバッと指摘、アトウェルのカンファランス

アトウェルがp223で例示しているのは、アメリアという少女が、父親の誕生日に送るために、父との思い出について詩を書いていた時のカンファランス。アメリアの下書きを読んだあと、アトウェルは開口一番にこう言う。

アトウェル:リストですね。とても大切な思い出が書かれています。ただ、今のままだと何粒もの小石が並んでいますね。お父さんとの関係をもっともよく描く一粒の小石が見えません。思い切って、一つを選んでそれを他のと区別してごらん。一つを選び、それに肉付けして、考えたことや感じたことを加え、お父さんとアメリアがどんなふうかを示せないものかしら?
アメリア:でも、どの一つを選べばいいのか…あ、もしかすると、夜に二人で散歩したことかも、お父さんと二人だけで。
アトウェル:それでやってみましょう。

ここでのアトウェルは、ズバッと問題点に切り込んでいる。「リストですね」とは、お父さんとの思い出がリスト状になってしまっていて(思い出全般になっていて)、もっとも大切な思い出(一粒の小石)が選べていないということ。それを、ミニ・レッスンで教えた「一粒の小石の法則」の言葉を使って端的に示しているのだ。ミニ・レッスンとカンファランスが連動し、短時間で改善につなげている

カンファランスというと、「生徒の話をじっくり聞く、励ます」みたいなイメージを持っていた時期が僕にもあったのだけど、アトウェルのカンファランスはそうではない。短時間でポイントを絞ってしっかり教えるカンファランスだ。ある日のアトウェルのカンファランスは、30分の授業で12人ほど(p212)。短時間で全員に関わり、個々の文脈に応じて必要なことを教えていくのが、アトウェルのやり方というわけだ。

実際にやってみるとわかるのだけど、この時間でこの人数の相手をするのは、けっこう大変(僕のリーディング・ワークショップのカンファランスが12人〜15人くらいで、ライティングになるともっと少なくなる)。そのため、ポイントを絞っているという面もあるのだろう。

読み書きの知識をオーダーメイドで手渡す

短時間でこうしたカンファランスをするのは、とても大変。というのも、決して「パッとみてすぐに目についた欠点」を言えばいいというわけではないから。アトウェルは、その子の今学期の課題や、今の状態を見て、目を瞑るところをつぶるし、校正の指摘も一箇所までに留めている。カンファランスの際、彼女の頭の中ではこういうことが起きているのだと思う。

  1. 読み書きについての知識や、学ぶべきスキルの体系が頭の中に入っている
  2. 目の前の生徒についての知識がある。いま、読み手や書き手としてどんな状態か。
  3. 生徒の文章を読み、読み書きについての知識を使って、できていることとできていないことを見分ける
  4. それを、目の前の生徒の状態についての知識を照らし合わせて、「いまは何にポイントを絞って教えるべきか」を判断する
  5. ミニ・レッスンで教えたことを使って生徒に思い出させながら、ポイントを教える

いうなれば、自分の持っている知識の体系を、毎回その生徒向けにオーダーメイドして手渡しているわけ。これはちょっと凄いですよ。まず自分の中に読み書きのスキルが全て入っていて、しかもそれを、目の前の生徒の状態と照らし合わせて再構築して、最善のコメントをする。理想的にはそういうことを目指している。なかなか真似できる気がしない。「マンパワーで行うアダプティブ・ラーニング」っぽいところがある。

「マンパワーで行うアダプティブ・ラーニング」って書いて思ったけど、これはいずれICT化できるのかな…?

カンファランスが真髄、アトウェルのワークショップ

今回紹介したのはライティング・ワークショップのカンファランスの話だけど、リーディング・ワークショップの場合は、ブログ「WW/RW便り」の下記エントリで紹介されている。こちらでも、アトウェルが極めて短時間で、効果的にカンファランスを行なっていることがわかる。

WW/RW便り:読み手を教える個別カンファランスを、短時間で効果的に行うには?

http://wwletter.blogspot.jp/2017/11/blog-post.html

僕はもともと「生徒数の多い日本の教室で、カンファランスをやるのは無理」派なのだけど、アトウェルのカンファランスの事例を見ると、自分のそれとの大きな違いに驚くし、自分ももう少しなんとか工夫できるのではないか、と思えてくる。「カンファランス・アプローチ」と言われるくらい、カンファランスはライティング・ワークショップにとっては大事な要素なのだ。実際、カンファランスを通じてしっかり「教えている」ことこそ、アトウェルのライティング・ワークショップの真髄なのだろうなとも思う。

こういう点を見逃して、「教師の仕事はファシリテーター」とか、「生徒同士で協力し合うのが良い」という方向に、安易に流れたくはないな(もちろん、そっちでも読み書きの力を鍛えていればいいのだけど)。少なくとも自分のカンファランスには、まだまだ良くなる余地がありそう。

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