中学生の国語の授業では、10月から「新聞の読者投稿を書く」授業をはじめた。回数にして3〜4回予定の小さな単元だけど、僕自身初めての授業なのでどうなるか楽しみ。
他校図書館で教えていただいた取り組み
新聞の読者投稿を書くという授業自体は、きっとそう珍しいものではないのだと思う。僕は学芸大学附属国際中等教育学校の図書館見学に行った際に、壁に貼ってあった読者投稿欄を見て、授業で書いて投稿したのだと教えていただいた。もともと文章を学校の外に公開することはとても大事だと思っていたし、文字数が少なくて手軽にできそうだしで、一度やってみようと思ったわけ。
授業の進め方として参考にしたのは、アトウェルのIn the Middleに書かれているジャンル・スタディのやり方だ。
生徒はまず、ChromebookでそのPDFを見ながら、掲載される作品の特徴を分析する。それから、その分析を踏まえて自分でも書いて、お互いに読み合って推敲して…という流れ。基本的にはライティング・ワークショップと同じ(ちなみに、投稿時に本名や住所を書かないといけないので、最後に実際に投稿する作業は任意にしている)。
期待されている「10代らしさ」に向き合う
10代の書き手による投稿記事を一定数読むと、そこにある種の共通するテーマや、期待されている「10代らしさ」がくっきりと見えてくる。
取り上げられているテーマは社会問題や道徳的な、しかも身近なものが多い。そういったテーマの文章が選ばれることについて、「読者にとって共感できることが大事だから」「新聞を読むのは年配の読者が多く、彼らが読んで安心できる内容になっている」という生徒の分析もあった。一方で、「わざわざ書くということは何か他の人と違う伝えたいことがあるはずなのに、なぜこんなに当たり前の内容ばかりなのか、それが不思議だ」という素朴な疑問も。
公開を前提にした書く場は、決して中立ではない。そこには読者や編集者の期待や権力があって、それが採用作品の文体や内容を縛っていく。編集者の期待に沿った作品が選ばれ、投稿する側もその期待に自分をあわせていく。そういう「書く場をめぐる権力関係」に意識を向けることも今回の授業の狙いの一つ。もちろんふだんの学校での作文も教師という権力者がいるので事情は同じなのだけど、自分のことだと無意識にやってしまっている生徒でも、読むと気づいてくれるのではないかな。
もちろん、作文のテーマだけではなく、文章の構成についても、分析が集まってきている。書き出しは、論の展開のパターンは、終わり方は…。次回以降は、こういう特徴を集めて整理したあとで、自分の投稿作品を書き、お互いに読み合って、推敲していく予定だ。生徒には、分析に従って採用される確率の高い文章を狙って書いてもいいし、それには従わないで自分なりの道を見出してもいい、と伝えている。はじめての授業なので、僕もまだ先が読めない。でも、どんな文章を書いてくるのかな。楽しみ。