やっと落ち着いてきたのだけど、何の気なしにした投稿で、ここ最近のツイッターのリプ欄がえらいことになっていました(僕は通知も切るし、返信も基本的にしないんですけれど)。投稿して3日間くらいでRTは1万8千、favは2万2千を超えてしまった。
夕食中の「今日の学校どうだった?」からはじまった話題が、まさかこんな反響になるとは! そして、投稿後に教えていただいたのだけど、これはNHKのEテレ「ココロ部」という番組で取り扱われた教材なのだそうです。
目次
NHK「ココロ部」での番組「外国から来た転校生」
小学校五年生以上の道徳を対象にしたこの番組では、二項対立的なモラルジレンマの話題を多くとりあげていて、その一つにあったのが「第11回 外国から来た転校生」。NHK for Schoolで見られます。
ココロ部:第11回「外国から来た転校生」
http://www.nhk.or.jp/doutoku/kokorobu/?das_id=D0005130137_00000番組では、「外国からきた転校生のエレナが校則違反のピアスをしている」ということから問題がはじまる。「以前に、ピアスをして先生に注意されたミキが、そのエレナに(最初は親切心から、後半はやや反発して)ピアスをやめさせようとしている」「学級委員のコジマくんがエレナに注意したところ、『ブラジルでは、女の子が生まれた時、母親が感謝の気持ちでピアスをつける習慣がある』と反論し、コジマくんは迷ってしまう」…さあどうする?というあらすじ。
番組では、「校則違反だからとやめさせる」選択と「文化の違いを尊重して認める」選択のどちらをした場合にどうなるか、みたいな話も扱っていて、よくできてる番組だな、と思いました。
また、娘の課題は、学校でこの番組を見た後に、各自でワークシートに自分の考えを記入するというもの。提出後は、それをもとにみんなで話し合う…という展開だったそうです。後日聞いたところ、先生も、番組と同じく別に「どっちが正解」と決めつけるようなことはなかったとのこと。当初僕が感じ取った「ピアスをするのが問題」的なニュアンスは、ツイッターである方にご指摘いただいたとおり、どうも伝言ゲーム的な誤解だった模様。「どう言うか」と「どう思うか」ではずいぶんニュアンスが変わるし、ツイッターではこの書き方が大量の反応を生んでしまった気もするので、そこは反省。
そもそもこの校則はどうなのか…という思いも
ちなみにこの問題、色々とご意見のある方は多いようで、ツイッターの反応をざっと見ると、
- 郷にいれば郷に従え派(ルールはルールだ派)
- 文化を尊重せよ派(エレナだけ例外扱いを認めろ派)
- ピアス禁止の校則自体がどうなの派
の、おおよそ3グループに分かれていた。
僕の気持ちとしては最後の「校則自体どうなの派」。自分が「校則」的なしばりがほとんどない学校で育ち、今はその学校で勤務しているので、「そもそもピアス禁止という校則自体が不合理だし、人権侵害じゃないの?」と思う。もちろん学校は子どもの様々な人権を制限(侵害)することで成り立っているけど、だからこそ、その侵害は「望ましい社会のあり方」から見てできるだけ最小限度の侵害にとどまる、合理的なものでないといけない。僕はそう思っている。最初に娘と話した時に「子どもの権利条約」を持ち出したのも、そういう気持ちがあったから。
ユニセフ 子どもの権利条約
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig.html
まあただ、これについては、実際の社会や学校がそうなっていない現状を踏まえると、反論も多くあるだろうな。僕も新任時代の私立女子校ではスカート丈の検査があった。嫌で嫌でサボタージュしていたのだけど、「「この校則はおかしい」と明確に職員会議で運動をせずに、ただサボタージュする」って、今では一番良くないよなーとも思うわけで。仮にある校則が不当だとして、「校則自体の不当さ」と「すでに存在してしまっている校則に従うかどうか」はまた切り分けて考える必要もあるよね。
「ココロ部」、なかなか面白いです
「ココロ部」のもともとの課題では、校則自体の是非を問うところまでは直接の議論の対象にはしていないはず。でも、「文化」を理由にエレナだけを認める場合に「不公平だ」「なぜそもそもみんなピアスが禁じられているのか」「この校則を変えたい」「校則を改正する道が生徒側に正当に用意されているのか」という展開になる可能性をはらんでいるので、なかなかチャレンジングな面白い番組作りをするなあと思った。
我が家でも、子どもたちと一緒に何話か見て、どう思うか、自分ならどうするか、お互いに意見交換をしちゃった。どれもモラルジレンマ教材としてよくできてるし、必ずしも全て二項対立に落とし込んでなくて、折衷案を考える余地があるのも良いなと思った(第5回「こまったプレゼント」など)。小学生のお子さんがいらっしゃるご家庭では、親子いっしょに見てみるのも良いかもしれませんよ?
ココロ部
http://www.nhk.or.jp/doutoku/kokorobu/
ココロ部:第2回「海を渡るざるそば」
http://www.nhk.or.jp/doutoku/kokorobu/?das_id=D0005130128_00000