暑さで早く目覚めてしまったので、ゆっくり読書したい今朝。というわけで今日のブログは、昨日書いた「作家の時間」作品集の巻頭言をこちらにコピーしてお茶を濁すことにします。今年は去年から導入した電子書籍「ロマンサークラスルーム」とともに、紙での冊子作成にも回帰。朝8時から編集作業をはじめて、たっぷり夜の9時までかかった。最後の製本作業は保護者の皆さんと。月曜日にはファンレターを書き合う「出版を祝う会」を、少しのジュースやお菓子付きでやる予定。「祝う会」にもクラスの半数以上の保護者の方が足を運んでくださるようで、とても嬉しい。いい時間にしたいな。楽しみ。
目次
書き手のみなさんへ
5・6年生の作家の皆さん、みなさんの今年度最初の作品が、ここにひとつの作品集にまとまりました。刊行、おめでとうございます。ちからいっぱいに書いた作品、満足のいく作品、くやしさの残る作品、どうにも気持ちが乗らなかった作品、それぞれだと思います。そのどれもが、すべて正解です。
「作家の時間」の目的は、良い作品を書き残すことでも、ましてプロの作家をめざすことでもありません。書くことをつうじて、より自由で、よりすてきな自分をつくりだすこと。それが、「作家の時間」のほんとうの目的です。
ひとは、ふだんは自分のこと、自分のまわりの世界のことを気にしません。書くために立ち止まり、ゆっくりと考えることで、ひとははじめて、自分自身や、自分のまわりの世界を見つめなおします。つまり、ぼくたちは、すでに知っていることをただ文字にするためではなく、本当はよく知らない自分自身や世界を発見するために書いているのです。「自分はこんなことに興味があるんだ」「こんなふうに周囲のことを見ているんだ」「こんな世界を新しく創りだせるんだ」…書くことを通じて、どんどん新しい自分を見つけ、つくり、その良さを味わってほしい。そう願っています。
もちろん、たくさん書くことで、書く力もついていきます。ちょうど、自転車に乗れるようになるには、実際にたくさん乗ることが大事なのと同じで、書く力も、たくさん書くことでついてきます。そして、書く力がつけば、それだけあなたはまわりの世界を豊かに見て、それをあなただけの言葉で表現できるようになります。他の人の文章の良さも、書けば書くほど、わかるようになるのです。
この作品集をくばる今日は、「トレジャーハント」(宝探し)の日。どの作家のどの作品にも、たくさんの「宝」が埋もれています。どうぞ、あなた自身の言葉の力で、仲間の作品の「宝」を、たくさん見つけてください。そして、あなたの言葉で自分の良さも、仲間の良さも見つけられる書き手に。それをきれいにラッピングして、仲間に届けましょう。
自分の良さも、仲間の良さも見つけられる書き手に。
あなたの書き手としての物語は、はじまったばかりです。
2022年7月4日 あすこま
保護者の方へ
① 「作家の時間」の狙いについて
日頃より、風越学園の教育活動へのご理解・ご協力、ありがとうございます。風越学園の小学校の国語の時間は、作品づくりを通して書くことを学ぶ「作家の時間」と、読書を通じて読むことを学ぶ「読書家の時間」が柱になっています。この2つの時間は、どちらも学習指導要領の「読むこと」「書くこと」「話すこと・聞くこと」に対応し、読むことと書くことを関連づけて学びます。そして、「作家の時間」の重要な目的は、「良い作品を書くこと」以上に、「良い書き手としての自分をつくること」にあります。
「作家の時間」では、楽しく書くことを通じて、子どもが自分も「書き手」であるという意識を持つことを大事にしています。彼らはこの授業での作品づくりと、その後のふりかえりを通じて、書き手としての自分の好みや強みなどを自己認知し、書き手としての自分をつくります。それが、今後の人生を支える、豊かな土台をつくっていきます。
② 今回のテーマ「色が変わる」について
通常の作文指導では題材・文字数・ジャンルなどで制限を設けますが、2022年度の「作家の時間」ではそのような制限は設けません。ただ、「全て自由」だと、かえって不自由になったり、新しい世界に出会えなかったりすることもあります。そこで今年度は「テーマ」という制約をもうけました。今回のテーマは「色が変わる」です。子どもたちは、なんらかの意味で「色が変わる」要素を作品に入れなくてはなりません。このテーマに向き合うことを通じて、彼らは、たとえば情景描写(「季節や時間によって景色の色が変わる」など)について、たとえば人物の感情の描写について(「顔色が変わる」など)、たとえば物語の鍵となるアイテムの存在について(「色が変わる魔法の飴」など)学びます。この年齢の子たちはお話を書くのが好きなので、物語を書く子が圧倒的に多いのですが、色が変わる化学実験のレポートを書いてもOKでした。その子の興味に応じて学ぶことは違っても、誰にでも学ぶことがあるように、と考えながら、毎回のテーマ設定を試行錯誤しています。
③ ファンレターのお願い
小さい子どもは書くことを屈託なく楽しみますが、小学校高学年くらいから、苦手意識が強まる子が増えていきます。それは、彼らがちょうど周りの視線を強く意識できるようになり、同時に自分や自分の作品の質に「不安」を覚えるようになるからです。不安な書き手をはげまし、前に進める大きな力になるが、読み手からの好意的なファンレターです。どうぞ、ご自身のお子さんはもちろん、多くの作品にある「宝」を見つけて、書き手に届けてあげてください。それが、自分を発見する旅をはじめた作家さんたちの、何よりの力になります。
2022年7月4日 あすこま