なんて言うのがベストなの?「作文」という言葉にまつわる「あー、あれね…」問題

夏は研修と出会いの季節。教員であるとないとを問わず、校外の方と知り合うチャンスである。その時、特に国語教師でない人に「はじめまして、あすこまです。特に興味があるのは作文教育です」と言うと、「あー、あれね…」的な、ちょっと引き気味の若干困った笑顔に会うことがある。そこで、「あ、でも行事作文や読書感想文とかじゃないんですよ」とフォローを入れたりする。すると相手には安堵やさらなる戸惑いの表情…みたいなやりとりを経験するのは僕だけではあるまい。

かくまでに「作文教育」や「作文」という言葉は、「学校教育で書くある種の文章のジャンル」や「ある種の学校教育のスタイル」と結びついて、それにまつわる言外の意味を帯びてしまっている。しかも、現役の作家さんやライターさんとか、出版社の方とか、書くことに何らかの思い入れがある人であるほど、「作文」にはなんらかのマイナスな印象を抱いている人が多い気もするのだ(もちろん皆さん大人なので、そういう印象を露骨には出してこないのだけど)。そういえば、大人の世界でも「作文」というと、「予算を獲得するなどの目的のために、本心とは別になんやかんやと理屈をつける文章」というニュアンスで使う人がけっこういる。「申請書を通すための作文がちょっと苦手だ」みたいな。

「作文」という言葉に別のニュアンスが付加されている現象、とても面白いけど、ちょっと面倒くささもある。「作文」という言葉に代わる便利な表現はないだろうか。

実は、学習指導要領では「作文」という言葉は使われてない。全て「書くこと」と統一されている。 だから学習指導要領的には「書くことの教育に興味があります」が一番正しいのだけど、これってやっぱり国語教育関係者以外からは奇異な印象を与えるのではないかと思ってしまって、まだ使えない。

「文章教育」 はあまりにプロダクト重視な印象だし、「ライティング教育」だと「何気取って横文字使ってやがんだ」的反応を招いたり、大学での「アカデミック・ライティング教育」と同一視されそうだったりするので、これにも抵抗がある(中等教育の作文教育は、アカデミック・ライティングのみであって良いとは思っていないため)。

結局「文章を作ること」(プロセス)と「それによって作られた文章」(プロダクト)の両方を意味して、かつ一般的にも一番広まっている「作文」を使っているんだけど、これもまた最初に書いたような「あー、あれね…」問題がある。

ううむ、どうすればいいのだ。初対面の人の微妙な表情に遭遇するたびにちらっと考えるんだけど、まだ解決してない問題である。

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