須賀しのぶ「また、桜の国で」を読んでいて、ずっと前に読んでいたこちらの本を思い出した。田村和子「ワルシャワの日本人形」。小説の「また、桜の国で」に対して、こちらは関係者の生涯をもとに、同時代のポーランドの戦争の記憶、それを伝えようとする営みをたどったノンフィクションだ。でも、この2冊はセットで読むことをおすすめしたい。
[amazonjs asin=”4005006361″ locale=”JP” tmpl=”Small” title=”ワルシャワの日本人形―戦争を記憶し,伝える (岩波ジュニア新書 636)”] [amazonjs asin=”B01MS6R7RM” locale=”JP” tmpl=”Small” title=”また、桜の国で”]ミステリーのようなポーランド史への誘い
この新書の物語は、ワルシャワのパヴィヤク監獄博物館からはじまる。もともとは、第二次世界大戦中に大勢の囚人が収監され、ここからアウシュヴィッツやヴィルケナウなどの強制収容所に送られ、殺された場所だ。博物館となった現在、その一角には、収容されていた人びとが作った刺繍や詩などが陳列されているのだが、そのん中に、一体の日本人形があるのだ。誰が、何の目的で作ったのか?
そんなミステリーのような書き出しで、著者は僕たちを悲惨なポーランドの歴史へいざなっていくのだ。まず、この書き出しがとても素敵だった。
第2次大戦の悲劇と、それを伝える試み
この本がフォーカスしているのは、第二次大戦期のポーランドの悲惨な体験と、それを伝えようとする営みである。ワルシャワのパヴィヤクの囚人たちの生活やコルベ神父の足跡をたどりつつ、現在のワルシャワで行われる「パヴィヤクを記憶する日」のイベントについて語る。ワルシャワ・ゲットーのコルチャック先生の気高さに触れつつ、それを記憶する「わたしたちの家」を紹介する。ワルシャワ蜂起の際に活躍した極東青年会会長のイエジと子どもたちの苦難を描きつつ、ワルシャワ蜂起博物館の展示施設について説明する、というふうに。過去と現在を行ったり来たりしながら、歴史が記憶として継承されていく様子を見せてくれる。
「また、桜の国で」とセットでどうぞ
とても読み応えのある一冊だ。戦争がどのように記憶されるのかということを知る上でも、あるいは単に第二次大戦期のポーランドについて知るという目的でもいい。もちろん、須賀しのぶ「また、桜の国で」の読者にはとてもおすすめだ。あの物語のキーパーソンの一人、イエジが、こちらでは実在の人物として描かれる。ワルシャワ・ゲットー蜂起やワルシャワ蜂起への理解も深まり、物語の世界の輪郭がいっそうくっきりと浮かび上がる。あの小説の中の出来事が、けっしてフィクションではなく、現実に起きたことなのだという手応えを増していく。この本を手に、いつかポーランドのワルシャワに言ってみたい。そう思わされる本である。
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